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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第4章 ロイド辺境伯、異界戦役2nd Season
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第八十六話 ロイド、北都開放作戦を命じる

 新型の魔導平射砲の増産を量産させる為に軍務尚書に親書を書いた。工廠の准将にも要望書と推薦書を書いてツキハ大尉に託した。

 やはりね戦争は数なんですよ。

 量産化すれば調達単価も安くなるし、長い目で見るとお得なんだよね。


 翌日にツキハを帝都へ跳ばす事にした。連続で跳ぶのは良くないからな。かつかつのスケジュールを組みたくない。


 とりあえず午後までする事がなくなったのでコレットに言葉を教えに医務室へ向かった。




「Condition est bonne pour moi・?(調子は良いかね?)」


 コレットは身体を起こした。


「beaucoup mieux maintenant(だいぶ良くなりました)」


「C' ѐtait trѐs bon(それは良かった)」


 それから俺は彼女にこっちの言葉を覚えてもらう事を話した。

 教科書を渡す。


「Tout d' abord.il est『Aアー』(まずは『Aアー』だ)。

 次に『Bベー』『Cツェー』だ」


 先ずは基本からだ。アーからツェットまでのアルファベットから始める。


 すじは良い方だ。初日の今日はアルファベットと簡単な挨拶を覚えさせた。ドラクルに任せても良かったのだが、彼女はダーサの腑分けで忙しい。何か弱点でも判明すればよいのだかね。


 さて、午後からは作戦立案も出来た頃合いだし会議だな。





「え〜、北都開放作戦について案がまとまったのでご報告いたします。

 第一次防壁、つまりはここを拠点に押し出して行きます。二町度に防壁を構築し、基本、防御を重要視して前進させます。

 北都の地形上、湖畔に出張った領主館を優先的に奪取し、その後上部区域を掌握。返す形で北都下部区域を奪還する事で北都開放となします」


 作戦課の少佐が話す。


「苦労。それで何時開始するのだ?」


「現在の資材の在庫量は三次防壁までしかありませんので手当てのつき次第です」


「資材の手当てはどうなっている?」


「ハ、汽車の往還を全力で回し順次資材を搬入いたします。計算ではひと月で北都全土分の防壁用資材が搬入される予定です」


 兵站を担当する少佐が言った。


「なお本作戦の実行から完結までは約三ヶ月を見込みます」再び作戦課の少佐が言った。


「よろしい。では何か思い当たる点はないか? なければ現時点で北都開放作戦を始めたいと思う」


「よろしいでしょうか?」


 スミカワ准将の部下…戦務課の少佐が挙手した。


「何かね?」


「ハ、その今次作戦の兵力の大半は我々帝都からの人員であります。ファーレ大将閣下の元の兵力は我々の半数以下、実情を鑑みて指揮権をスミカワ准将に移譲していただきたいのですが」


「マレット少佐!」スミカワ准将が声を荒らげた。


「マレット少佐と言ったな。確かに兵力の半数以上がスミカワ准将の掌握する兵たちだ。だから貴官の言う台詞は正しい。

 だが本作戦…ダーサ討伐の任をまかされたのは自分である。これは皇帝陛下からの勅任なのだ。したがって残念ながら貴官の意見は却下である。

 また、北都開放は大公妃殿下のお産みになる和子様を奉じて行われる事案であり、その後見人もまた自分であるのだ。つまり本作戦は純軍事的な面でなく、政治的な側面を持っている事になる。それが大前提だ」


「閣下、大変失礼しました」


「准将、貴官の部下は正論を言っただけだ。謝罪は必要ない」


「ありがとう御座います」だがどこか居心地が悪そうだった。まあ分からんでもない、頑張れ中間管理職。


「さて、他には?」


 その後、何ヶ所か修正すべき小さな変更があった。


「では本時刻をもって北都開放作戦を発令する!」


 『ハッ!』と全員が唱和した。さてどうなる事やら。





 会議を終えてドラクルの居る天幕に向かう。


「よお、何かつかめたかい?」


 白衣を様々な体液で汚したステやんは振り返った。


「ああ。私の出した仮定の裏付けはとれそうだ」


「ほう、と言う事は感覚器でも見つかったのか?」


「まだ絶対ではないがな。ほら、この脚の裏に神経みたいなモノが出てるだろ? この様な神経線維が脚の裏にたくさんある。で、脚の付け根にある小脳らしき部位に繋がっているのが分かった」


「で、大脳は?」


「この小脳…と言うか、その器官の上位に勾玉みたいな器官があるだろ。私はこれが大脳だと判断した」


「なるほど」


「ちなみに小脳らしき部位は上肢の付け根に二ヶ所、下肢に四つある。つまり四肢の…いや六ヶ所それぞれに付随している」


「ずいぶんと豪勢な仕様だな」


「そうだ」


「で、やはり眼は無いのか?」


「無いな。上肢に仕様のわからない感覚器がある。脚の裏の事を鑑みて、耳かもしれない。いや耳と決めつけるのは良くないな」


「……地面の振動を感知するように空間の振動を感知してるんじゃないか?」


「……おそらくな。だが決めつけるのは駄目だ」


「こいつの弱点はなんだろう?」


「剣の類いは体表のぬめりで有効ではない。銃なら正中面に当たれば有効だ。

 さて、ではその他の部位ではどうだろうか? 答えは関節だ。先に小脳の話はしたな? 四肢の付け根がそこだ、そこが目安だ。まぁ当てるのは難しいがね」


「鉄砲上手にやらせてみるか。うん、ありがとうドラクル参考になった」


「だがあくまで仮説の域から出ていないぞ?」


「何もわからないよりかはマシだ」そう、マシだ。


 もう一度礼を言って彼女の元から離れた。

 全小隊長と中隊長、それと曹長を集め今の話を語った。

 残念ながら半信半疑だったが、やはり何も知らないよりかはマシだと捉えた。


 さぁて、これで準備は出来た。作戦も発動したしあとは結果を出すだけだ。そう、なんであれやらねばならないのだ。

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