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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第3章 ロイド辺境伯、領主として大将として
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第八十二話 ロイド、イェラと夜中の会話をする

 ふぅ、対スパイ工作は上手く行かなかったな。


 しゃーない、頭を切り替えよう。

 明日には北都に戻ろう。とりあえずはする事がないな。

…工藤のとこでも見に行くか。




 工藤涼子率いる自衛官らは、本館の横の別棟にて帝国公用語の習得の最中だった。隊員のひとりが講師と対話形式で会話していた。

 何人かが俺に気づくが俺は手で制する。

 会話している隊員はずいぶん上手く話している。一時はどうなるか怪しいモノだったが、この分では猶予期間内でうまく行きそうだ。

 今彼らは三つの班に別れて講習を受けている。本当ならもっと講師がきてくれるはずだったのだが、初等学校の方に大量に講師が必要なのでそちらへ回ってもらっている。


 ままならんものだ。教師が欲しい時に教師が足りない。

 てかさ、ここまで手厚い保護しているのは大陸探しても俺だけだろうよ。

 もう少ししたら彼らの内から市井の者になる連中の為の就職斡旋先を探せなきゃならん。まあ今のご時世は労働万歳ってなくらい引く手あまただからな、わがままを言わない限り就職は楽だろう。

 むしろ軍に入りたいという者で女性隊員が居る場合だ。その筆頭が工藤涼子だ。彼女は必ず軍に志願する。だろう、とは思わない。もし逆に工藤が『私、花屋さんになります』なんか言ったら…俺爆笑する自信があるわ。


 まぁ最悪、俺の私兵扱いで構わんだろう。軍一般なら女性は軍人になれないのだが、将官クラスなら私兵は有しても構わないからな。

 でもまあ、極力女性隊員の軍人志願は却下させて行こう。


 




 その夜、俺は夢を見た。

 群衆に囲まれ(中世いや近世だ)いま正に火刑に処されようとするひとりの少女。

 少女は呟きにしては大きい声で何かを訴えかけていた。


「Oh Diew Oh mon Diew,pourquoi?」


 何語だ? いや聞いた覚えがある……。……そうだフランス語だ。え〜と『神よ、神よ、何故?』であってるよな?


「Selon les diroctives de votre……」


え〜と『貴方の導きに従って……』何だ魔女裁判かコレ?

 

 フランス語なんて大学の時に少しかじっただけだが、なんとかこの程度は理解できた。しかしなんで火刑のシーンの夢を見るのかね? しかも木の焼ける匂いに木がぜる音、群衆の嘲る声、笑い声付きと来た。いわゆる明晰夢なのか?

 夢って理不尽だが、いまの夢も理不尽極まりない。

 


 目が覚めた。

 身じろぎするとイライジャも目を覚した。


「起こしちゃったな、済まない」


「いいよ。でも兄さんが夜中に目を覚すのなんて珍しいね」


「…そうだな」


「お水飲む?」


「いや、要らないよ」


「ねぇ兄さん」上目遣いでイライジャが口を開く。


「なんだい?」


「もっとそっち、寄っていい?」


 俺はしばし熟考して頷いた。たまには甘やかせても良いか……。


「良いよ、おいで」


 破顔一笑。イライジャは喜びを満面に浮かべた。

 俺は当惑と共に彼を受け入れた。甘い甘いが大概大甘だわ。

 拒否するのが怖いのか? かもしれん。

 かのじょからの好意を無下にするのが怖いのだ。ああクソ、いやになる。


 イライジャが俺にピッタリと寄り添う。腕まくらこそしないが、俺の左手はイライジャを囲う。


「お休み、イライジャ」


「お休み、兄さん……それと私はイェラです」


「………………」


 俺が幼稚なわがままでイライジャと呼び続けている。本当に幼稚なわがままだ。


「イライジャ、俺は君を女性扱いはするが女性だと認めていない。これは俺のわがままだ」


「兄さん……」


「すまんとは思っている」


「どうしてそこまで意固地になってるの?」


「君が生物学的には男性だ。しかし君の心は女性だと思っている。

 だから俺は君を妹扱いはする。だが『する』だけだ。済まないが俺が譲歩するのはそこまでだ」

 

「…兄さん、ちょっと難しいよ」


「そうだな。まあ簡単に言うと君は俺の妹で構わないという事だ。ただし、君には部分的には俺と同じモノがついてるから男の名で呼ぶという事さ」


「妹で良いの?」


「そうだ」


「良かった……。……話は変わるけど、兄さん、最近余裕ないでしょ?」


「……よく見てるな」


「帝都から帰った時には、兄さん余裕があったのに、今はそれがない。

 わかるよ、それぐらい」


 俺は嘆息した。


「君の言うとおりだ。最近忙し過ぎて余裕がない」


「兄さんはお笑い芸人でも道化師でもないけど、いつも笑いを持っていた。兄さん、辛い?」


 義弟ぎまいの観察眼に驚きを隠せなかった。


「辛いか辛くないかと言えば辛いかな?

 だがね、例えそうだとしても俺は歩みを止めない。少なくとも辛かろうが決して歩みを止める事はできない」


「兄さん……」


「そりゃあさ、余裕が欲しいよ。だが現実はそうは行かなかった。それだけだ」


「私に何かできる事ある?」


「……きちんと学び、きちんと遊んでくれ」


「? それで良いの?」


「そうだよ。そう言えばレオノーラ嬢とは遊んでいるのかね?」


「うん、明日だって一緒にお芝居見に行くの」


「ほう。ならもう寝なさい。芝居を見ている時に寝ては駄目だからな」


「うん。お休み兄さん」


「お休み、イライジャ」


 俺はすぐには寝付けなかったのだが、イライジャはすぐに寝入った。

 かのじょの体温を感じながら、いつの間にか俺も寝入った……。



二千文字くらいなら一週間で投稿できますが、文字数が少ないですね。

以前のように七千文字くらいの方が良いのでしょうか?


実はとある方のブログにて本作が紹介されてましたが『面白そうだけど、読みづらい』との感想をもらいまして試行錯誤している次第です。

皆さんから見て何文字くらいがちょうど良いのですか?

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