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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第3章 ロイド辺境伯、領主として大将として
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第八十一話 ロイド、考えすぎて滑る

「第一として存在機関とは帝国を運営する機関そのものです。第二に…帝国は女性が密かに運営に携わる機関を表します」


「第一はともかく、第二の内情は?」


「申し訳ありません、私の位階では知らされていないのです。ただ、かなり高貴な方が差配しているとか」


「…高貴、ねぇ。

 今回君が来たのはどちらの方だ?」


「第二の方からです」


「どう違う?」


「表向きは変わりません。ですが命令系統がまったく違いまして…、すみません、上手く言えません」


「何故だ?」


「感覚的なのですが、『ああ、今のは第二なのだな』と思えるからです」


「今回のもそうだったのか?」


「はい」


「わかった、とりあえずは保留にしておく。

 ではすまないが第一の方の情報局を教えてくれ」


「はい、情報局は帯剣、法服とわず、御当主様と御長男様の思想や行動規範を記録します」


「思想や行動規範ねぇ。で、君が選ばれた訳だ」


「はい、私の場合は家女中に採用される前から裏の仕事を請け負っておりました」


「なるほど。

 帝都屋敷以外に、この館にもそうした輩が入りこんで居るのとみて良いのか?」


「まず間違いないでしょう」


「先日も聞いたが、あぶり出すにはどうすべきだ?」


「……難しいですね。これ、と見込んだ方に『お前が間諜か?』と聞くのが最も手早いです」


「う〜ん、難しいなぁ。カマをかけて疑心暗鬼になったら本末転倒だ」


 俺は眉間に皺を寄せて考えこむ。だめだ、現行犯だと確信が持てるまで却下だ。


「…今はまだ確信が持てない。裏がとれたら詰問するよ」


「御意のままに」と彼女は一礼した。


 どうにも上手くいかない。苛々する。情報局はよほど上手く侵入しているのにな。

 試しに婦長のフレイにカマをかけてみるか? しかし、どうカマをかけてみるのか頭がまとまらない。


 よし、いきあたりばったりでやってみるか。


 呼び鈴を鳴らす。控えの間の女中が入ってきた。


「婦長を呼んで来てくれ。大至急ではない。用があればそれを優先してからで構わない」


「はい、承知しました」






 しばらくして女中が戻ってきた。


「婦長様はただ今、銀食器の整頓をなされております」


「そうか、では甘茶を用意してくれ。のどが渇いた」


「はい」





 甘茶を飲み終わる頃、婦長がやってきた。


「何か御用でしょうか?」


「ああ、ちょっと聞きたい事があってね」


「伺いましょう」


「君は帝国の情報局というモノを知っているかい?」


 フレイは目をパチクリした。


「申し訳ありません、存じません」


「女中らの長の君なら何か知っているかと思ったんだ」


「帝国の情報局ですか、物騒な話ですね」


「そう物騒だ。さて君ならどうする?」


「……申し訳ありません、先日もそうでしたが、私には想像もつきません」


「そうか、いやこちらこそ申し訳ない。それとなんだが、先日、君たちに頼んだ噂話の感染経路についてなんだがね、どうなっている?」


「はい、旦那様の読み通り幾人かの経路がわかりました。ですが帝国の情報局絡みの噂話には直結しませんでした」


「そうか……」


「旦那様、私に出来ることがあればなんでも仰言ってください」


「ああ、ありがとう」


「では下がらせてもらいます。何か御用命があれば」


「いや、特にないな」


「それでは失礼いたします」


 フレイはさっと一礼したらすぐに出ていった。あの様子じゃあ本当に何も知らないのかも知れない。


 さて困った。どこから手を付けるべきかわからない。


 あーでもないこーでもないとうんうん唸っていたら、ひとつ頭に過ぎった事がでた。


 帝都でアーリスと会話していた時だ。彼女はレティカの元に入れるかを聞いてきた。

 アーデルハイドではなくレティカだ。

 確かに大公婦人の方が格は上だ。それは分かる。しかし帝都屋敷にアーリスがウチの動向を探っていたのだから、それはココ、ウチの館だって例外ではない。

 となればアーデルハイド付きの侍女も疑惑の対象となる。だが果たしてそれは現実的だろうか? …『有り』だろう。だが彼女の侍女達は厳密的には俺の使用人ではない。給金も俺が立て替えて渡しているのだ。彼女らの本来の給金はユシュミ子爵から出されて帝都屋敷の方でプールされている。

 だから侍女らに詰め寄るのは無理だ。


 それとなく館内に噂を流すのはどうだろうか? それか情報提供者には金一封を出すとか?


 いや、この案も却下だ。現実的にどんな噂話を広めるか見当がつかない。この間も成果を上げてはないではないか。金一封もそうだ。こうまで巧みに忍んでいる連中だ、尻尾すら出すまい。

 各部署のファースト達限定に不審人物が出たら報告する様に、位だな。後はユージーンに聞いてみるか…。彼女まで疑うのはどうかと思うが、情報局の活動内容を聞いたらユージーンすら危うい。


 再び呼び鈴を鳴らし、ユージーンを呼ぶように指示する。今頃はフレイの元で作業している筈だ。


 約五分後、ユージーンが現れた。


「坊っちゃま、どうかなさいましたか?」


「…ああうん、ま座りたまえ」


「はい」


「先日の話の続きだが、この館に帝国の間諜が忍びこんできているのが確定しているのだがな」


「で、その悪漢は坊っちゃまに何か害をおかすのですか?」


「いや、そやつらは俺の内偵をしているのだ。取り立てて害はない」


「しかし間諜ですよ? 害をおかすやも知れません」


「その可能性はある。だから注意はする」


「注意だけですか?」


「他に案がないからね」


「私をお呼びになられたのは?」


「この事を知っておいてもらいたいだけだ。他に婦長とアーリスが知っている」


「そうでしたか。ならば坊っちゃまに何かあれば私が身を挺してお守りします!」


 ……言うと思ったよ。


「ありがとうユージーン」


 うーむ、何かが違う。そうじゃ無いんだよなぁ……。

 

 この間に続き、今回もしくじった事を痛感させられただけだった。

情報局のエージェントは婦長です。あとアーデルハイドの侍女AさんとBさんもそうです。

ロイド君は考えすぎて頭が滑っております。成果は出ません。なお婦長さんはロイドに隔意がある訳ではありませんので。


今回の話、出来が悪くてすみません。

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