番外 帝国に関するあれこれ(増強改訂2型)
《地方の特徴》
帝国は帝都を中心に4つの大公管区に分かれており北部と東部に2つの辺境区が存在している。
帝都
帝都の説明はすでに済ませてあるので割愛する。
なお周囲を取り囲む皇帝や帝族の直轄する荘園や衛星都市、軍事地区、緩衝区域を含むエリアを帝都圏と称する。
帝都の規模は東京都の3分の2程になるが帝都圏ともなれば更に広がり、関東平野が収まる範囲が帝都圏となる。
東部
大まかなサイズはユーラシア大陸と等しい面積がある。東部の中心都市は東都であるパクス・アレキサンドリア。
住まう人種は様々で文化・気候・植生も多様のモザイクな土地柄である。それ故に東部はコレだ、という固定されたイメージは難しい。転移者は基本的には帝都にて保護されるのだが、有為な技能を持たない転移者は保護の対象ではない。帝都を出る転移者は相当数ある。
このため様々な人々が集まりやすい土地柄を持つ東部へ移住するケースが多い。転移者やその子孫の地方自治体(町や村レベル)が幅をきかせている土地が目立つ。あらいずも領はその筆頭でこの地のみ完全自治の土地である(帝国のとある重大な秘密を有しており、その機密保持を武器に交渉し自治権を得た。またあらいずも辺境伯はあらいずもを統治する巫女一族から疎まれた氏族の者が臣民代表として擁されている。この氏族はあらいずもから追い出され帝都に住む事を余儀なくされている。2代目以降は帝都の人に交わり配偶者を得ており、現在では純粋なあらいずも人とは呼べない)
もっとも広大でそれに見合う人口を有する。
南部
規模は北米大陸を少々上回る規模。中心都市はカランコッタ。
来る者問わず、みな友達がモットーとし、享楽的な明るい人々が多い。反面異文化の介入を嫌う傾向が強く、気質が合わなければ非常に居辛い。
人種的にはアジア系に近い人々が8割方を占める。ラテンな気質の東南アジアをイメージすると良い。誰が治めても構わないが自分達は何もしたくないので放っておいて欲しいと言う政治的スタンスを取っている。自由人を好み武人や役人、政治家は忌避される傾向が強い。
犯罪者が流れやすいと思えるが、実際には二つの大型組織が傘下に入るよう強要しており、それを拒否すれば容易く排除される。また水面下では帝国法務省や警察機関と裏取引がなされており、帝国に反旗を翻す危険思想の者や帝族の生命を狙った者などは匿う事はなく、彼らを引き渡す密約が締結されている。
帝都の貧民街が犯罪者や恭順しない者を押し込める監視区域であるように南部のこの密約は帝国の犯罪者を監理し、コントロールするシステムでもあるのだ。このシステムはそれなりに成果を上げており、他の地域にて同様の運用が施行されだしている(予算などの都合上でそれ程広まってはいない)
西部
規模はアフリカ大陸から中近東ほどの大きさである。中心都市はケチャ・ティカ(ケチャ・チカの場合もある)
広さに比べればその人口はかなり少ない。この為、領地のサイズは他領に比べ広大である。黄色い肌と黄土色の髪の人々が特長。非常に排他的で頑迷な性格が持ち味。帝国軍人は全ての公民からの志願制を取っているのだが(徴兵制で軍人を送る土地もある)南部と西部からはその性格故に多くないのが現状である。例外的に北方平定戦役では、当時西方貴族に不信感を持っていた皇帝の怒りから目をそらす目的で出兵を強く押し出し、北部を荒しまわったのだった。これが元で北部の貴族は西方諸貴族を良く思っていない(ロイドの様に3代目ともなれば気にしない人間も居る)
比較的、当地域の貴族は皇帝に対し反発する気質がある。帝国創立前後は戦国時代であった為、侵略や併呑は世の常であるので帝国が大きくなるのは取り立てて非難には当たらない風潮であったが、中央地域の派遣確立以降の東征や西征は過剰に見られていた(南部は彼らから進んで国を明け渡している)
比較的、東征は穏やかに進んだのだったが、西への侵攻は当地域は反発に反発を重ね抵抗が激しく、平定後もなにかと騒動を起こしていた。それが故に皇帝も西方貴族を信用せず両者の緊張は高まった。
上記された経緯もあり現在では西方貴族は表立っては反発する事はないが、依然と緊張状態は維持している。帝室より派遣された西方大公は常にこの問題に頭を悩ませている。
緊張が解かれ西方の市場が完全に開放されるのはロイドの生きた時代より後の物語である。
北部
規模は東欧から中央アジア、シベリアほどの面積にあたる。中心都市はセト・グリアバートル。
セト・グリアバートルの北方にバッティス連層大山脈(標高24キロメートルを誇るセト・グランデ・バッティ山が有名)が往来を困難にしている。
北部地方の地名で度々出ている『セト』は北部地域を調査した探険家の名前『瀬戸勇之助』にちなむ。瀬戸氏は帝国全土の4つの未踏峰を制覇し、北部一帯を巡る探検などを主催や北部と東部とを繋ぐ街道を構築するなどの偉大な功績を残した。ロイドの生まれる前年に東夷の支配する領域を調査する際に行方不明となる。ロイドの参加する東夷鎮定時に彼の配下が瀬戸氏の遺骸を発見する。死因は東夷の何者かによる殺害と見られる。
北部は平野の多いグリアバートル地方と山脈より上の辺境地方の二重構成で辺境地方より外側が帝国領域外になっている。元来グリアバートル地方は帝国中央の区分にあったのだが、北方平定戦役後に北部に改められた。現帝国第三王朝はこの平定後に制定される。
開発の終わった他の地方と違い未知の鉱床が有ると言われているが新発見される鉱床は存在しない。しかし…………。
《蛮族》
東夷
東部あらいずも領の沖にある多島海地方に住む民族の呼称である。
多島海で居住可能な島は二千を越す。居住不可能な島を入れると一万を越えるのだが、有人無人拘らずその殆どは峻厳な荒れた小さな島ばかりである。一番大きい島は小豆島ほどのサイズの本島でしかない。
耕地面積は全島合わせても関東平野の5割にも満たない。植林などの自然保護は皆無で荒廃甚だしい。この為、歴代皇帝は多島海の平定は旨味がないので放置していた。
東夷は固有の人種が八割、本土より流れた犯罪者などの移民が二割の構成となる。彼らは強欲で享楽的、自己中心的な性質を持っており常に反抗していた。
彼らの正体はイクサリア全土に寄生する人類に仇なす『未分類異種生命体』である。人類の技術や文明文化をコピーし(厳密には劣化コピーしか出来ない)人類に取って代わる事を至上の命題としている。多次元積層宇宙にある数千万の人類文明が滅ぼされた経緯がある為、全てを照覧する超越者達はイクサリアを創造したのだが、それも虚しく彼らの侵入を許してしまった。原因は不明である。彼らは人類種かと思われがちだが、人類の遺伝子に酷似した有機配列を持っている他の種である。
オーク
北部辺境の蛮族。粗野で攻撃的だが同族愛、家族愛は強い。鉄器や合金の製造技術が高く彼らの肉体能力の補正もあり非常に優れた戦闘民族である。王制を敷いており、王以下武人階級、工技階級、労働階級の階級制を採用している。また奴隷制度はない。
かなり融通の効く性格をしておりアーベル・ルージュとは仲が悪いが共闘もする事も出来る。人間やエルフの雌には興味を示す事はない。
アーベル・ルージュ
いわゆるエルフ。オークにて比べ技術レベルは低いのだが、それは別段文明レベルが低いのではなく単に技術を必要だとは思っていない為である。
女系民族で男性エルフは女性エルフの共有物扱いである。男性エルフは人権はあるものの発言権や参政権は存在しない(男性の平均寿命は極めて短く、その為に男女比が極端であり番による結婚体制は取られない)
オークもそうであるがエルフも人間種に興味はなく、性行為を行なっても受精はしない。逆に人間はエルフを性行為の対象と見ており、妊娠しない事を利用してエルフを奴隷として捕獲、販売する事に余念がない。
《爵位の定義づけ》
伯爵と子爵
帝国が平定した国家に国家代表が恭順の意を示し皇帝から認められた場合が伯爵位を与えたのが伯爵。
代表が許されない、または代表が居ない場合は当地の人民が代表を立てる場合が子爵。
ロイドがユシュミ子爵を『田舎代議士〜』と言ったのはこの為である。
子爵は伯爵と違い領地に対する影響力も小さい。領内議会に多大な権利(発言力)を有するのが伯爵で、子爵は一議員並の影響力しか出せない。また保有できる資産も伯爵に比べると非常に少ないのも特徴である。
公爵
子爵領に対して帝室から帝族を送り代表とする場合が公爵である。発言力や資産も伯爵らに比べると高い。
侯爵
複数の国(帝国や連合国家)を有している代表に対する場合が侯爵である。
大公爵
公爵領に対し、複数の領地を任せる場合を大公領と呼ぶ。侯爵領の代表が公爵であるともいえる。
男爵と代官
皇帝から三つ以上の荘園を与えられた者を男爵と呼ぶ。
代官にはふた通りの意味がある。ひとつ目は爵位を有する貴族が代理人に領地を任せる場合。もうひとつは二つ以下の荘園の代表者を指す。言葉は同じ代官であるが意味は全く異なる。
男爵と代官は一代貴族で爵位の継承は許されていない。
補足だが、子爵も基本的に一代貴族である。子爵の場合、嫡子(権利保有者)に厳格な審査や基準をクリアした場合なら爵位の継承を許される。子爵の継承者だけでなく全ての爵位継承者には継承出来るかを審査されるが、子爵位を受け継ぐ基準に比べれば難易度ははるかに軽い。
准男爵、帝国騎士
貴族籍の末端だが厳密には貴族ではない。准男爵は帝都の役所の課長以上の役人に与えられる名誉称号で帝国騎士は軍部の小隊長以上に与えられる名誉称号だ。その為一代限りの准貴族となる。また貴族年金や土地は与えられ無い。
爵位の継承は単に代が変わるというモノではない。本人の資質が問われる重大な問題である。
学力や知性、品位が一定以上高くなければならない。学力のない者や素行の悪い者は継承審査にすら届かず刎ねられるのだ。
学力は日本で例えるなら国立大学入試に百位以内に入れる程度には必要である。学力以外の一般的常識や心理テスト、普段の素行、性的な問題行動、持病の有無など常に監視されており、問題有りと見なされば継承審査で失格の判定を下される。
ロイドが帝都にて他家の夫人と不倫行為に及んだ件は当然問題となった。この件を審議会にて質された時にロイドは平然と論陣をはり、審議を乗り切ったのだった。