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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
序章 ロイド辺境伯、第一歩をふみだす
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第三話 ロイド、レティカと良い仲になる

 分からん。謎だ。全く謎だ。いつフラグを立てたよ? 彼女と知り合って4年程度だが、好意を受けるような事はなかったんだが?


 ……うん覚えがないわ。だいたいぶっ細工なオーク面の俺に魅力なんてないしな。

 は? よもや人知れず俺の魅力フェロモンが大発生? いやいやナイナイ。ただでさえも不人気で定評のある俺だよ。間違っても一級フラグ建築士のようなラノベの主人公じゃあないんだしなぁ。

 レティカのドッキリ? いや、それも変だ。今、ここで仕掛けるメリットなんてない。


 しかし、レティカの切れ長の瞳は爛々と輝いている。肉食系のそれだ。

 こういう際の女性の経験はある。だよね? ユージーン。……しかしな、しかし、ここ図書館だぞ? そりゃ従者は余分な見聞きした事は話さない。それが常識だ。


 俺かい? 俺もちゃんと経験はあるよ? 乳母のユージーン(この時は子守り女中だが、俺にとってはいつまでも乳母だ)が相手をしてくれたんだわ。初体験は13歳の時でした。

 このヒト、俺にとっては乳母であり、姉であり、愛人であり師匠な女性なのだわ。

 いやほんと、色々教えてくれましたよ! おかげで軽い女性不審になったわ! そりゃ、俺は不細工ですよ? モテませんよ? けどさぁ、人並みに幻想持っても良いでしょうに。ねぇ?


 ユージーンは俺に過剰なくらいの現実を仕込んでくれましたよ。そりゃあ女性不審にもなるくらいに。しかもオプションとして、もれなく年上属性までセットされました。

 それでいて、女中や一般市民とかにハマらないよう親切丁寧にご指導いただきました。教えてくれたエピソードがあまりに生々しくて、現実つーもんを教えてくれたから、迂闊に女中さんのような使用人の方々にも手を出せなくなったし。


 あ、ユージーンは別ね。彼女は若い頃に出産したけど、その際の病気で、子供を産めなくなった経験がある。いわゆる石女だ。あ、ちと違うか。

 そんな彼女だから、俺を相手にしてくれる女性になったのだ。いやぁ有難いことやで。……まぁ、それはいい。問題はここからだ。 



 そう、レティカだ。どーしよう?

 そりゃ年頃の俺だもの、彼女の誘いなら受けてみたいさね。けど、罠かもしんないしなぁ。こーゆー時、侍女が居てくれて助かる。さて、侍女さんは何処かいな? 

 って、おい、俺の従者連れて出ていくなよ! ショーン、カムバーック!

 え? これ詰んでるの? いやしかし! おおお、落ち着け俺。


 俺は脂汗をダラダラと流しながら、退路を探った。しかし! しかし俺の手はレティカの手を無意識に握っていたでござる。


「レティカ……こんな俺でも?」


「うん、僕は君が好き」


 さーせん、スイッチ入りましたーっ

 しかし緊張し過ぎて逆に萎縮してしまった。


「…………」


「ちょっと! ちょっと待って、ええと、ええと、あ、こすれば!」


「……ごめん、ムリ」


「イヤだよロイド! ほら、元気出して! こうすれば、こうすれば良いって! あぁ、あぁぁ、あぁぁぁ…ちょいとーっ!?」



 そこから先は、まぁあれだ、なんとか元気出したよ。頑張ったよ、俺。偉いよ、褒めてやって欲しい。

 詳しく描写すれば削除されるから割愛する。


 レティカを見やると、実に良い笑顔で机に突っ伏していた。よかったよかった。しかし、乱れた衣装は、なんと言うか、見事にいやらしいなぁ。エロエロですよ皆さん。危うくノク○ーンに行くとこだったがね!


 


「レティカ。その、勢いで行ってしまって……」


 俺はとりあえず謝罪に踏み切った。こーゆー場合、男の方が立場が悪いからな。言い訳はすまいよ。

 しかし、レティカは首をふった。俺の謝罪に被せるように口を開いた。高揚した頬が色っぽい。レティカは中央の民族アドーラの血を引いている。アドーラ民は象牙色の肌に淡い金髪、やはり淡い緑の瞳を持つ古い民族だ。

 彼らアドーラの民は深い思考、哲学を至上とする民で、数多くの思想家や哲学者を輩出している。レティカもまたそんな人物で、おおよそ突発的な衝動とは無縁の人物だと思っていた。いやはや、彼女の意外な一面を見られてビックリだわ。




「僕が誘ったんだよ? アイリスに言い含めて出ていってもらったのも、僕の責任……だから、気にしないで」


「いやいやいやいや、こうした場合は男の責任だよ。すまない」


「謝らないで! そんな関係じゃないか。僕の、僕のわがままなんだから、さ」


 レティカはいやいやする様に首を降った。


「ね、ロイド。……僕、どうだった?」


「ん~、その、なんだ。か感度良かったよ」と無難に答えた。


 レティカのその限りなく『大平原な』胸の大きさ以外で感想となるとなぁ。あ、この世界では誰かがブラジリアン・ワックスを伝えていて、無駄毛の処理してます。ツルツルのすべすべでした。

 ユージーンに不満はないけれど、やっぱ田舎の女性だよな。もっさもさでしたわ。まぁ良いけどさ。



 そんなピロートークモドキを少しして、俺達は佇まいを正した。


「すっかり忘れていたけど、ロイド、キミはどうして内府に呼ばれたのさ?」


 あ~説明しなきゃな。まぁ、ちゃんと説明しなくちゃいけないよな。


「うん。まあ、その、親父たちが死んだんだ」


「えっ? たいへんじゃないか! その、ゴメン。そんな時に」


 レティカは随分とかしこまった。まぁ、そうだよな。


「いや、良いんだ。好きな両親じゃなかったから。で、国務尚書と今後の事、色々と話してきた。 

 俺は来月に爵位を継承する。あぁうん。すぐには継承出来ないってさ、資格審査があるから」


 そう、継承には審査が必要だったのだ。形式といっても、形式は大事だ。何より、能力のないぼんくらには爵位を継承なんて出来ないからね。

 帝国は別に長子継承制度がない。能力重視主義だ。武でも、文でも能力がある者が優先される。俺は辺境伯家長男だが、一人っ子なんで優先権はある。が、あるだけだ。無能と判断されれば断絶させられる。

 なお、女性には爵位を継承出来ないシステムだ。

 爵位は第一子のみで、女子の場合は婿を取らせるか、断絶させられる制度なのである。それが良いのか悪いのかは判断出来ない。だが、帝国が存続していて、それなりに保っているから、それは有効なんだろうが。


 余談だが、爵位は皇帝以下、帝室、帝家、大公、公爵の皇帝に連なる位階。

 侯爵、辺境伯、伯爵、子爵の相続権を持つ位階。

 男爵、准男爵、帝国騎士の一代貴族の三階に分けられる。

 また、高級官僚は准男爵から始まる法服貴族に、職業軍人は帝国騎士に叙任される。一般官僚や下級軍人、名士は上級市民扱いだ。

 その下に、帝都に住む臣民、市民権を持つ公民が一般市民。市民権を持たない自由市民。奴隷市民と連なる。地球のそれとは随分違うが、これがティガ・ムゥ大陸の帝国なのだよ。


 婚姻にも触れておく。基本的に下級貴族から嫁ぐ事はない。先に記した三階の間で行われる。まぁ例外は幾らでもあるがね。レティカがそうだ。彼女は大公家に嫁ぐ。これは血脈が濃くならない様に行われる儀式でもある。

 レティカは北部を治める大公家へと行くのだ。俺の領地になる辺境は同じく北部だから、もしかしたら往来はあるかもしれない。

 もっとも、帝都から領地までは汽車と馬車で一ヶ月半はかかる。そして大公領からも一月以上は離れている僻地にある。再び会えるのは何時になるやら。……未練か? ああ未練さ。


 さて、そろそろ夜もふけた。退散しなくてはな。俺はレティカに最後のキスを、口づけをかわした。

 さよならマヴァルーン。今夜の一幕は俺の大事な記念だよ。忘れたくないな。

 俺は、俺達は思いの丈を込めて、もう一度と口づけで締めくくった。

おまけ、その3

帝国には蒸気機関があります。もっとも、鉱山が東部に大小8ヶ所。西部にやはり7ヶ所。南部は5ヶ所で北部は小さな鉱山が4ヶ所のみである。

鉄道がそれぞれに敷設されていますが、石炭の生産量に比例しており、東部、西部、南部は端まで汽車が走っていますが、北部は途中までしか走っていません。

また、蒸気船も補給の関係から、南洋区域に限り航路が設定されています。

帝国海軍には2隻就航のみです。海軍の主力はいわゆるガレー船であり、帆装船は海域の事情(海流の遅さ、風のない凪ぎの海域の多さから)により、事実上就航していません。

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