第百四十五話 ロイド、機龍騎士団出撃セヨ、前編
お久しぶりです。目の手術も無事に終わったら不整脈で入退院、しんどかったです。
百四十五話はストーリーの展開に無理があった為、全面変更となります。ご了承下さいませ。
「……であるからしてインフレとは必ずしも悪性のある経済効果とはならないのだ」俺は黒板に大書した。
「でもロイド様」と、ここでクライブが手を上げた。
「それはあくまでも金本位性に基づくeであって、通常僕らが使用しているgは関係ないのでは?」
クライブの返答に俺は満足していた。正解不正解ではない。何故なら人間は思考する動物の筆頭だ。人類はその柔軟な思考力、発想力、演繹力を駆使して始めて人類たり得るのだ。その点、彼は優秀であった。
ちなみに補足しておくと帝国の基本通過はeだが、実は変動金利性だったりする。一昨年辺りの北部大火のせいで金利が0.5%も下がってしまい、大損こいたのは記憶に新しい。ま、それが元で輸出拡大が発生したから結果オーライなんだがね。
「クライブ君、君の回答は半分正解で半分不正解だ。確かにgとeは存在価値が違う。しかし、基本的には両者は」とここで終業の鐘が鳴った。
「諸君、終業の時間だ。来週は移りゆく情勢の変化とその忠誠について取り上げたい。
クライブ君のは宿題とする、以上」
「「「「はい! ありがとう御座いました」」」」
俺の講義は数学のみならず、様々な角度から多様な時評(単に節操が無いとも言う)をテーマに講義していく方針だ。
エリーが遅れがちだが、それでも彼女は頑張っているのも嬉しい点だ。イライジャが居ないのは流石に教育レベルが足りないにすぎない。
夕餉の後は恒例となったダンスの時間だ。今夜の一番手はクライブ君。男同士だが相手はお稚児さんだ、まぁこういう事もある。
で、なにやら視線を感じた。いや視線自体は良くある。…良くあるのは慣れている。ここで言う視線というのは憎々しい熱視線の事だ。
年長組でもイライジャでもなかった。では誰かというとツキハ君だった。
彼女はスプーンをガジガジと噛んで憎悪混じりの熱視線を俺に向けていた。……俺、何かやらかしたか? しかし行儀が悪いな。
俺は疑問符を頭に貼り付けながら周りを見渡した。……その回答はクライブ君にあった。
「……あの」
「なんだね?」
「副官殿の視線が痛いです」あぁ合点がいった。なるほどそうか、ツキハ君はクライブ君が好みなのか。
「ポンコツニ号君」役者交代と行こうとするか。
「は、はい!?」
「俺と交代しよう。嫌かね?」
「は、いいえ、是非とも! でも良いのですか?」
「君の熱視線で俺が焼き豚にならないうちに退避した方が吉だと思ったからだ。さ、踊りたまえ」
「はい、ありがとう御座いました。あと、すみませんでした」
「なに、気にするな。……さて俺は仕事が残っているので後は自由時間だ。ではな」
仕事とは通常の仕事の事では無くて、半分趣味みたいなモノである。それは異界戦役で使う事を前提にした兵器……戦車だ。
前提条件、蒸気機関。歩兵直協型の為、中型砲弾。リベット打ちで無くアーク溶接。そして車体はT-七四G型の様な現代的なやつでは無く、古式ゆかしいマークⅣ(履帯回りは装甲化)が諸元だ。
マークⅣ伝統の大型尾輪は廃止、此処には石炭と水を積んだ二両目がある。つまりは機関車と同様と見ても良い。因みに原型機はスリムだが、この戦車は横にも広い。機関車の貨車の制限幅いっぱいだ。
肝心の武装は砲郭にニ十四口径ニドール砲をニ門。あと同軸に機銃座。それと車体上部に火炎放射器を装備している。
何故戦車の知識があるのかと言えば、単純に戦車の本があるからである。
この世界には稀人も居るが、同じ様に本や実機なども多い。俺は豊富な財産をもって、これらの収集を法の許す限り取り行っているのだ。
俺はの単なるペーパープランでは無い。基本設計は既に帝都の工廠に送り出していた。反応は悪くない。あとは最終プランの本作を提出するだけだ。
『機龍騎士団』正式な名称である。乗員は操舵手、両舷のブレーキ手が一名づつ、両舷の砲手が一名づつ、同軸の銃手が一名づつ、車長、炭水夫が一名づつの計九名で構成される新兵器。
反対意見はなかった。これを先ず四両制作する事は確定だ。制作期間は一ヶ月。俺の描いた設計図(昨夜の仕事とは設計図の最終見直しの事だ)によほどのヘマが無い限り、事は無事に成るであると見て良い。
因みに一号車の車長は俺である。たまには見栄を晴らせてくれるよね?
誤字脱字なんでも言ってください
『甲賀忍法帖』工藤涼子のイメージソング
稀人のルビに『ロゴ・ダウ』と入れたのはジョークです。本来の意味は名作『伝説巨神イデオン』で敵側バックフランから地球人の事をロゴ・ダウの異星人と呼ばれた故事が元ネタなんです。
この一件とマークⅣ戦車についてはウィキペディアを参照にしています。