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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第七章 ロイド辺境伯、忙しい日々
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第百四十話 ロイド、念願のハンバーガーを食す

今回はネタの回収話です。

 大都の周囲の再開発も順調に進み、俺は非常に上機嫌であった。ただ、開発の音頭をとるハゲの会頭がザビーネの回収に来た事は腹がたった。

 無論、そんな事を許す俺じゃない。せめてデビュッタントを終えるまでは俺の庇護下に在るべきだった。

 デビュッタントとはいわゆる社交界へでる儀式の様なもので、社交ダンスの場である。本来、ザビーネの様な立場の少女には関係ないのだが、まぁ、俺からの押し出しみたいなもんさ。良縁がありますように。

 そんな中、執務は北都へと移る。


 (今年は新年会を楽しめなさそうだな)北都での俺の立場は良くもなく悪くもない。スケジュールの都合上、レティカを置いてまで自領に戻ってまで新年会を楽しめる道理は無かった。


「まあ是非も無し、か」ペンを置いて肩の筋をほぐす。やる事は山積みであるが、あまり根を詰めても効率は良くならない。

 気晴らしに煙草でも吸おうかね。


 葉巻きの吸い口をシガーカッターで落とし、燐寸マッチを擦る(俺は断然マッチ派なのだ。しかも杉の木製である。マッチとライターとでは味に差がでる。またマッチも木によって薫りが違ってくるのだよ、豆な)

 マッチと言えば原材料に硫黄が必要だが、この大地には天然の硫黄は存在しない。だが硫黄モドキと言う代替え材料があってひと安心だ。

 

 マッチを擦り火を着けた。健康には悪いが悪癖に優るものは無い。俺は紫煙をくゆらせながら書類の決裁を済ませていった。


「ロイド様、よろしいですか?」声の主はツキハ君だった。


「良いよ」追加の書類だろうか?


「失礼します」するりと入室してきたのはコックスーツを纏ったツキハ君だった。手には銀の盆に丸い蓋が掛かっている。何だコレ?


「昨日、館の方でとある料理の作り方学んできたんですよ」


「料理?」


「ジャジャーン、ハンバーガー」


「なに?!」


 見ると確かにハンバーガーが鎮座していた。しかしトマトソースが無いので中途半端だ。……まさか代用品が見つかったのか。


「そのハンバーガーとやらの再現率はどれほどだ?」ああかぶり付きたい。


「ダイマユリネと言う花の球根が元になって、栄養成分はともかく味はほぼ同じだそうです」


 ダイマユリネとは北部ある多年草だ。まさかそれがトマトの様だとは。


「どこに置きましょうか?」


「俺の目の前の書類の上で構わない」


「良いのですか?」


「構わん構わん。ハンバーガーってのはこういう食べ方なんだ」


 いざ食べようとした瞬間、横やりが入った。


「坊っちゃま、その様な下品な食事作法はいけせん。食事は食堂だと決められております」  

 

「ユージーン、何も杓子定規に規定ばかりではいけないよ? たしかに通常の食事は食堂で取るべきだ。しかし、このハンバーガーやサンドイッチは例外に属する軽食なんだ」


「しかしも案山子もありません。その様な鼎の軽重を問われるような振る舞いが問題なんです」


「ユージーンの言は良しとするが、俺にも譲れんものがある。まぁ随分とみみっちいものだがね」


 彼女ユージーンは押し黙った。沈黙は是だと捉えるぜ。


 蓋を取り上げ脇に寄せる。……おお、これは燃すバーガータイプのハンバーガーじゃないか!

 ただトマトの赤じゃない半透明なのがちょっと引く。


 精霊や農夫、コックらへの感謝もそこそこに早速かぶり付いた。…美味い、美味いぞーっ!! コレだよコレ。ナニこの再現率? うん百点満点だ。ワクドナルトも大好きだが燃すのヘビーな味わいも良い。実に良い。帰ったら報償金を与えよう。……あれ? なんか忘れてない?


 そうだった、軍人を辞する連中の再斡旋を決めるのを忘れてた。優先順位が低かったから忘れてたよ、テヘ。


 しかし、この燃すバーガーの欠点はソースが駄々余りする事だな。おかげで口のまわりがべたべただ。ま、こればっかりは仕方ない。

 ちなみに盆にはあと二つ乗っかってて、ダブるチーズバーガーとフィレオフィッシュだった。無論、二つとも余裕で食べたよ。


 ユージーンはいつの間にか姿を消していた。彼女には彼女の仕事があるからどうこう言わんが、たまには一緒に食卓を囲みたい。つーか、物心ついた時には彼女と食事を共にした事がない。

 いつか一緒に食卓を囲みたいものだ……。

マクド(自分、大阪在中)よりもモス派なんです。皆さんは何派ですか?

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