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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第七章 ロイド辺境伯、忙しい日々
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第百三十九話 ロイド、ギリギリを攻める(外角低め。野球関係ない)

遅くなって申し訳ありません。

 さて、今週は自領での執務タイムだ。叔父から仕事を引き継ぐ。


「引き継ぎは以上ですな」


「有能でなくて申し訳ない」ゲートルード叔父は申し訳ありませんとしたしょげた顔で詫てきた。


「そう卑下するまでもありませんな」事実、叔父は上手くやっていると思う。


「叔父上はもう少し自己評価を高く見積っていても構いませんよ」


「ハハハ、ご冗談を」と小さく笑った。


「それよりもタンクレートを呼んで欲しいのですが」


「タンクレートをですか? なら私は引っ込みましょう」


「いや、叔父上も居て下さい」


「? ハイ」不思議そうな表情で彼は退出していった。




「従兄上! いえ辺境伯閣下、お久しゅう御座います」今日も従弟は元気そうだ。


「やあタンクレート執事補佐官、元気そうだね。今は従兄で良いよ」


「あ、ありがとう御座います従兄上」


「さて、二人が揃った所で話のさわりを話そう。

 タンクレートに仕事をひとつ任せたい」


「仕事! 任せてください。で、どの様な仕事なんですか?」


「うむ、インサイダー取引を行って欲しい。無論、一切の責任は俺がとる」 


「「!!」」驚いたふたりは目と目で会話した後、叔父上が発言する事になったようだ。


「ロイド様、言うまでもなくそれは犯罪行為ですが」


「まあそう言うな。理由もある。間もなくイー・ファーレ銀行の者が来る、話はそれからだ」


「「……」」


 しばらくの間、雑談をして時間を潰した。


「旦那様、お客様がお見えになりました」執事補佐のひとりが来客を告げた。


「此処へ通せ」


「はい」




「初めましてイー・ファーレ銀行のアモン・ヨツヤと申します」


「急に呼び出してすまんな」


「いえいえ」


「そう言えば、前任者の彼はどうした?」


「ドン・モジュラス支店の支店長に抜擢されました」


「ほほう、それは目出度い」本店勤務と地方の支店長職、どちらがマシなのかは良く分からないのだが、とりあえずは祝っておくべきと判断した。


「それはそうと、本日は?」


「インサイダー取引についてだ。…待った待った、話を聴いてから席を立ってくれ」


 席を立とうした彼をどうにか引き止める。


「……伺いましょう」彼の表情には『冗談なんぞ言ったらケツを蹴っ飛ばすぞ』といった真剣さが張り付いていた。


「さて、何処から話したものか。

 ……事の発端は北都の金利政策だ。より正確には金相場の低さにある。現状のまま推移していくと五年経っても低いままである。

 そこで、此処からかねを持ち出し、北都の金相場を支える。このインサイダー取引はこちら側の安全性を高める為だ。誓って私利私欲からではない」


「……なるほど」


「どうかな? 一考してみて欲しい」


「申し訳ありませんが私いち個人では判断出来ません。会議にかけてからではないと」やはり即答は無理だったか。


「向こうの銀行名はなんですか?」


「帝国中央銀行だ。流石は大店、こっちの手の内に何の動揺も見せなかったよ。だからこっちの方が上手く行かなくても中央銀行の方で話を進める予定だ」


「左様でしたか。では私も頑張って会議の方、良い結果を出してみせます」


「いいかね、事は刑法に引っ掛かる案件だ。注意を密にし、話を拡散させない事」


「はい」


「はい従兄上」


「ん、よろしい。叔父上はタンクレートの代わりに執事室へ。タンクレートは此処で俺の補佐を頼む」こうして新しい編成と重要な案件がスタートしたのだった。


「旦那様、夕餉のお時間ですが」


「悪いが先に食べさておいてくれ」食事の時間を報せにきた執事に応える。


「もう少し、もう少しなんだ」書類が上手く纏まらないのだ。


「……分かりました……」




「よっし、完成だ」最後の一枚はとある書状の裏書きであったのだが、これが中々に難しく苦戦していた訳だったのだ。


 ……夕餉は料理長の計らいで温めなおされたモノがでた。ありがとうありがとう。なんせシチューだったから冷めてると不味いからな。

 調理場にて感謝の意を伝え、自室へと足を向けた。


 と、何者かがぽつねんと立っていた。

 誰だ? ……ザビーネだった。おチビさん四人集の筆頭だ。ちなみにイライジャを入れる場合は筆頭はイライジャとなる。


「……ザビーネ?」


「あ、はい。今晩はロイド様」


「何か問題でも有るのかね?」


「私、去年十五になったんですよ!?」


「ああ、そうか」


「そうかって、分かってないでしょ!」


「すまん、何の話か分からない」


「はぁ……。成人したら『抱く』約束ですよ」


 はぁ、あの話か。

 何処かに逃げ道でもないかとザビーネをあやしながら周りを見ても、何も何処にもなかった。

 しゃーない、腹をくくるか。

 自室はなんとなく地雷臭がするので、今回はザビーネの部屋を使おう。


「ザビーネ、約束を違えるつもりは無いよ?」


「じゃあ!」


「あぁ。その代わり使うのは君の部屋でだ、構わないかね?」


「はい!」


 俺は彼女を抱き上げた。軽い。まだコレット嬢の方が重量がある。ああいや、程度の問題だ。

 視線を感じた。


「なんだいザビーネ?」


「嬉しいんです」


「初めは痛いだけだぞ」


「それを含めて、嬉しいんです」


「そうか」


「そうですよ」どちらともなく笑いが咲いた。まぁ、こんな夜もあるのだろう。

 脳裏にイライジャの顔が浮かんだのだが、無理矢理消した。次の新年ではまだ十三才だ。うん、まだ余裕があるな。些か現実逃避だが、そうでもないとやってられないのは事実であった。

とあるサイトにてボロカスに言われて凹む凹む。フォローがあればまだ跳ね返す事が出来るのですが……。

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― 新着の感想 ―
[一言] とてもとても素晴らしい小説なので、心ない声は気にしないでほしい。取り急ぎ一言。また改めて感想なりお便りでリアクションします。
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