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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第七章 ロイド辺境伯、忙しい日々
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第百三十八話 ロイド、産業を画策す、その他コレットと

「ねぇ、そう言えば東夷ってどんな連中だったんだい?」


レティカはカーシャをかき回す手を止め、いきなりそんな事を聞いてきた。


「……唐突だな。……残忍で悪辣、見栄っ張りで小心者、事大主義」


「なにそれ……人格障害?」


「まぁ要約するとそうなる。また数字を盛るのが好きで、軍人が十九万人いると豪語していたのだが、実際には最大で三万人といった所や軍船がニ千隻が九百隻程度だったりで、かなり肩すかしをくらったな」


 連中が水棲民族でピット器官を有するミュータントである事は話さなくてもいいだろう。


「まあ討伐自体はあまり苦労しなかったな」


「へぇ、でもお疲れ様」


「ああ、ありがとう」


 何気ない会話を続けながら朝食を終える。さぁて仕事の時間だ。

 夜はコレット嬢とのほにゃららタイムだ。頑張ろう!


  


「さて、北都の現状は最低だ。なんせ人口の九割を喪った。で、それからの推移はどうなっている?」


「は、宰相殿の宣伝の効果で前年比の五割までは回復しました。これには駐屯している軍人は含まれておりません」執事のひとりが応える。


「それは現在進行形なのか頭打ちの数字なのか?」


「ほぼ頭打ちです」


「(そうか、ならばどうするか?)わかった、次、食料自給率は?」


「六割程度です」


「なら、移民は農家中心だな。その線で公文書を書いてくれ」


「かしこまりました」


「さて、産業だが、どうなっている?」


「一次産業八割、二次産業一割。その他一割です」


「ふうむ……、何か基幹産業が必要だな。異界戦役の前の基幹産業は何だったんだ?」確か革製品だったような……。


「北都の基幹産業は製皮業が盛んでした」


「ああ、そういや革製品が盛んだったな。よし、製皮業者の応募をかけよう。ああいや応募はかけていたんだった。よし、北部だけでなく全領から応募にしよう」


「はい、ですが工房を立ち上げるのが精一杯でして、あと税収は如何しましょう?」


「三年は無税とする」


「……三年、ですか?」


「一年や二年では収益が見込めないからな。三年にしたのは、そのくらい無税だと発奮するものだと考えた。まぁ産業として成り立つのは十年は先だろう」


「分かりました」不承不承がありありの顔付きだったがとりあえずは納得したようだ。まあわからんでもない。


「ああそうだ、中央銀行のモーガン氏と面談したい。誰か彼を呼んできてくれ」


「はい」一番若手の執事がきびすを返して出て行った。パシられてんなぁ……。




「お久しぶりです辺境伯閣下」とモーガン氏は恭しく一礼した。


「ああ久しいな、息災かね?」 


「ええ」 


「さてさっそくだが、金利はどうなっている?」 


「四割五分二厘まで上昇しました」 


「四割を越えたか」


「はい、軍がこの都市を半ば要塞化したお陰で市場が安定してきた結果です」


 異界戦役の戦訓と敵個体の存在は異界戦役そのものがまだ終わった訳ではない事を意味していた。その為北都は要塞化するに至ったのだった。

 

「金利は今後、どの様な推移を予定している?」


「はい、一年をかけて一分五厘ずつ上げていく予定です」


 なるほど、インフレ率を微小に抑えて上げる方策か。ふむふむ。どのみち金利を上げるには信用が足りないのだ。小さなトコからコツコツとだな。


「試みに尋ねるのだが、一分五厘ではなく五分くらいまで上げてみるのはどうだろう?」


「論外です」その即答に思わず吹き出してしまった。


「ぷふ……いや失礼」


「あまり関心しませんよ閣下」


「許せ」


 インフレ率が2%程度上がるのならあまり市場には関係ない。妥当な額だ。5%なんかにすればハイパーインフレ間違い無しだからな。


「金利については以上だ。何か不測の事態は無いかね?」


「一件あります。土地の価値が上昇しません、閣下」


「……ふうむ、いや現状では軍が押さえているから無理だ。……そうだな、不動産価格を上げるのは臣民らが戻ってからにする」


「分かりました。今のところ他に問題はありません」


「よろしい。あ、ところで株については四年から十年介入するからな」


「それはどういう意味でしょうか?」


「株価を操作しないと金利が上がらん」


「違法ですよ?」


「それ位は知ってるさ。なに君の所には迷惑をかけんよ」


「……そうですか。それでは失礼します」


「苦労をかける。だが現状では君が頼りだ」


「これも仕事ですから」そう言って席を立ち、一礼して若き銀行家は退出した。


 ……金か、今の北都に金は集まらない。どうにか信用されるに至る策を練らねばな。

 自領に戻ったら北都の株を買い占めよう。マッチポンプも甚だしいがそれが一番の早道だ。それで行こう。もうひと押し欲しいが何かないかな? リズ姉さんにも声をかけるのは……いや駄目だ。あそこはまだ財政難から立ち直っていない。

 とりあえず一旦棚上げして他の公文書に目を通すか。

 しかし、流石は大公領だ。並みの領地より税収の桁が違う。とある領地では一エーラの価値が十eだとすると、ここ大公領では十四eを超える。まぁ今の所、そこまでの価値は無いのだが。



 公文書に目を通し、サインをしたりしていたら執事のひとりから声をかけられた。


「宰相様、夕餉のお時間です」おお、もうそんな時間か……。


「わかった、この書類を処理するまで待て」


 ササッと終わらせ、大食堂に向かった。

 

「遅いよロイド」


「済まない愛しい人マヴァルーン」するとレティカは頬を真っ赤に染めた。

 

「恥ずかしいじゃないか」


「先にこの言葉を使ったのは君じゃないか?」


「…うぅ、そうだけど……」俺の反論に還す言葉もないレティカにちょっと萌えた。


 席に座り、食物を与えてくれた精霊と農家の人々、調理をしてくれたコック達に感謝する。



 食事を終えた俺は石風呂ハンマームに入り汗を流した。身だしなみを終え、コレット嬢の部屋に向かう。


「コレット嬢、居るかい?」


「は、はい。どうぞ」


「約束を果たしに来た。こころの準備は良いかね?」


「……はい」一拍置いて彼女は真っ直ぐに俺を見た。


「あの、私…初めてなので……」やはりか、面倒な。


「心配ないよ。俺に任せてほしい」


 それからはスローペースで事を始めた。俺みたいな巨体がコレットのしなやかな身体を抱くには、俺の重さを感じさせないよう慎重に事を運べなければいけない。

 そこら辺を注意しながら彼女の身体をむさぼったのだった。

誤字脱字等のご報告、ご感想待ってまーす。

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