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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百三十四話 村部美怜、陸戦そのニ

「やはり魔導具は便利だな」


「ですね大尉」


 俺は臨時の部下となった少尉(名はたしかロス・カギヤンと言っていた)に話しかけた。話題は新装備の魔石を燃料とする火炎放射器だ。拡声器メガホンのスピーカーに酷似したそれは不格好だが、まぁ仕方ない。


 今は原住民を焼却処分している最中だ。正直良い気はしない。汚物は焼却だヒャッハーとまでに開き直ったらどれだけ楽か。

 俺は軍人だから敵兵を殺す事には納得している。だが目の前の焼かれた遺骸は只の村人だ。こんなものは軍人の仕事ではない。しかしその反面、戦略的にはあながち間違えてはいないのも事実だった。

 敵勢力の根本的解決。分かっている。分かっているが納得しきれていない。どうにもならない矛盾が渦まいていた。

 『ィヤー、ィヤー』と懇願する老人や子供に向かいボウガンや火炎放射器で殺戮する。元自衛官としては耐え難い苦行であった。


 今いるこの村落の住民は全滅させたらしい。ならば次は村全体を焼く手はずだ。この島は小さく緑地帯も少ない、退路ルートを確保して奥から焼いていく。


「延焼に注意してくれよ」


「了解であります!」


 火炎放射器は魔石を使っているが、別段呪文を唱える必要はない。トリガーを絞れば絞った分の炎が出る仕組みだ。…原理? 原理など知らない。


 俺の分隊は予定通りに村を焼き払い、周囲の緑地帯すべてを焼いた。しかし、まだ最初の一手だ。次の島に移ろう。




 次に移った島では手厚い歓迎を受ける事となった。

 武装した村民達が、ある者は弓矢で、ある者はナイフで襲って来たのだった。

 正直、予測外。いや慢心からの油断であった。

 相手の初撃は弓矢による負傷者がニ名。斬りかかれた軽傷者が一名出た。

 脅威度は高くないが、十一名で構成されている分隊の内、負傷者が三名。手当てに三名。残るは五名である。撤退…の選択が頭を横切るが相手の戦闘員もしれている、ここは反撃だ。


「軍曹! 弓矢には火炎放射器で対応しろ!」俺はコンバットナイフを取り出し構えた。


「了解! 大尉は?」


「自分はナイフ使いを殺る!」


「危険であります!」


 軍曹の声を無視し俺はナイフ使いと正対する。

 相手は舌なめずり訳でも無く、油断なくナイフを構えていた。

 それを見て、俺も気を引き締め直す。


 先手必勝! 俺は飛び出した。横一文字にナイフを振るう。しかし奴はサッと身を引いた。追撃。今度は突きを連発する。

 刺すことに成功したが、浅かった。


「グルッグ」獣の様な唸り声を上げると奴もまた直突きを仕掛ける。


 俺は奴の跳躍に合わせ身を引いた。ついでに挑発を行なうことにした。ナイフをくるりくるりと回したり(スティーブン・セ○ールがコック役出てた映画のアレだ)してせせら笑ってみせた。

 馬鹿にされているのには気づいたらしく、歯をむき出し怒りをあらわにしていた。


「ガアアア!」奴はナイフを腰だめにして吶喊してきた。


 ちょっとマズい、この攻撃にはボディアーマーが耐えきれない。

 刹那の思考かどうか知らんが、身体は奴に対し右側に回り込みコンバットナイフを打ち落としていた。ᕼIT! 俺の攻撃は奴の右腕を深く切り裂いたのだった。返す形で奴の首、頸動脈を切る。俺の勝ちだ。

 血風を避け、俺はようやくひと息をついた。ふい〜危なかった。


「大丈夫でありますか?」軍曹が声をかけてきた。


「なんとかな」


「しかし、危なかっしい真似は止して下さい」


「しかしも何も誰かが相手をしなくちゃならない。たまたま自分が近くに居ただけだ」


「それでも! 上官殿を傷づけさせる真似は毛頭ありません」


 どうやら彼は彼なりに俺を心配してるらしかった。


「ま、まあ、軽率な事はしないよう心がけよう」


「……本当にお願いしますよ……」


「しっかし、心配症だなぁ」


「むざむざと上官殿を怪我させるのは下士官の名折れですから」


 なるほど下士官には下士官なりの矜持があるって事か。


「……さて、敵兵も倒した事だし、次は村の中だな」


「ハッ!」


 一応、用心して村へと入る。村と言っても文化水準は石器時代から縄文時代あたりの辺鄙なトコだ。

 粗末な竪穴式住居から、薄汚い格好の村民達が逃げるように出ていった。

 先ずは率先垂範、俺は火炎放射器を放った。続けて部下達も火を放つ。(これも仕事だ仕事)……やはり忌避感を拭えないでいる。チラと軍曹を見れば、彼もまた浮かない顔をしていた。共感相手がいて多少は落ち着いた。


 集落を焼くのには十分程度で済んだ。さて、今度はマンハンティングだ。正直、手を抜きたい。しかし軍務である。抗命は許されない。

 そこへ先程負傷者を連れて行った者達がやって来た。


「ご苦労さん、少尉の傷はどうだった?」


「ハ、肩をえぐった矢ですが、幸い毒の類は無く回復に多少時間が掛かるそうです」


「そうか。まぁ毒矢でなかったのは幸いだったな」


「ハイ」


「さてでは紳士諸君、狩りと浄化に参ろうか」


「「「「「ハッ!」」」」」


「軍曹、先頭を任せたぞ」


「ハッ!」


 軍曹を先頭に俺達は裏山に足を踏み入れた。根絶させる為に……。

村部美怜……みれい……合わない。美青年の類じゃ無いです。固太りした厳ついあんちゃんです。


なんかメール下さい(*゜▽゜)ノ✞

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― 新着の感想 ―
[一言] ナイフ使い相手にセガールもいいですけどレイダースのインディージョーンズみたいにいきなり腰の拳銃打ち込むのもありかとw まあ銃弾が貴重なので難しいでしょうけど いきなり火炎放射はあり?
2021/03/21 20:11 レモン男爵
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