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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百三十ニ話 ロイド、海戦その七

 ダーン、ダーンと拳銃からの発砲音が聞こえてきた。村部大尉はきっと楽しそうに職務に励んでいるのだろう。


「正直、連中をナメてました」と副長がポツリと言った。


「そりゃあそうだろうに、よもや連中が未完成の舟はおろか、釣り船まで出して来るなんて想像の埒外だ」 

 

「ところで、あのダーンだかバーンの音、あれは何ですか?」


「あれは異世界の武器で拳銃と言うモノだ」


「ははぁ、あれが異界の武器でしたか」


「威力は抜群。しかし補給のアテが無いのが欠点だ」


「なるほど」


「さて、状況を整理しよう。当艦にまとわり付いているのが未建造の舟と釣り船が合わせて七隻。おい、人数はどれほどだ?」


「ハ、前者は漕ぎ手が約六十人、戦闘員はおよそ四十人。後者は漕ぎ手が八人。これらには帆の操作員も含まれています。で、こちらの戦闘員は最大限見積っても十人。

 ですので漕ぎ手を除く戦闘員の数は百六十人前後となります」


「こちらの戦闘用員は?」


「非番の者を動員してでも五十名と少々」


「ならば三対一だな。悪くない」


「それは机上の空論というやつです」副長が困ったような表情を見せた。


「それはそうなんだが、こちらには戦力倍増要因がある」


「当艦には火矢が効きません。あと敵兵は梯子の為、全力出撃ができませんから、ですね」


「そういう事だ。ところでこっちの砲の俯角は取れんのか?」


「はい。近すぎて俯角より下にきていますので」


「強引に引き剥がして砲戦に持ちこんだ方が良いんじゃないのか?」 


「ハ! その様に計らいます」副長は素人の俺の指摘に内心快く思ってはないだろうが、少なくとも嫌な顔をしなかった。


「CICより艦橋へ、意見具申、増速して敵船団からの離脱をはかるべきです」


「……よろしい。機関強速。敵船団から離れたら機関元速、取り舵いっぱい反航戦に移るぞ」


 村部の銃声は変わらず続いている。しかし弾の総数は三十六発しかない。もっと用意しておけば良かった。だがこれで多少は楽に戦えるだろう。


「各砲座、射撃開始」俺は指騎杖を手に立ち上がった。「蹂躙せよ!」


「了解、各砲座射撃開始」


「了解、射撃開始。砲指向」


 CICはにわかに騒がしくなった。壁一枚隔てた外では生身の人間達が己の戦闘目標を達成すべく争っている。この奇妙な感覚は何だ? 恐怖心と高揚感が俺の内側を競い合っていた。




 艦長の巧みな指揮の下、当面の危機は脱した。今回の戦闘で多少の怪我人が出たが、ほぼ完勝と言って良い。連中の援軍は旗色が悪くなった途端、戦線を離脱したからだ。


「ふぅ、どうにかなったな」


「想定ではあったんですよ、接舷戦闘。しかしながら訓練は訓練でして、今回の戦闘は今後に反映します」


「そうしてくれ」


 こういった場合に備えて陸戦隊や海兵隊などがいるのだが、主に予算不足から充足不足や訓練不足が続いている。予算不足予算不足、弾薬(魔石)だけは安価で手に入れる事が出来るから良いが、陸軍…海軍の人員不足はその人気の無さもあって常に定数を割っている状態だ。


「攻撃目標変更、海賊団を狙う」


「了解しました!」


 艦長が新たな指示をだした。戦闘も終盤の様だ。


 しかし現場には僅か二隻の海賊船がいるだけであった。これでは経験値稼ぎにもならない。


「艦橋よりCICへ、敵はもはや脅威ではない。迅速に処理せよ」


「了解」


 艦長も副長もどこか投げやりだった。そうこうしていると村部が降りてきた。


「提督、艦内部の敵兵はすべて排除しました」


「苦労」


「で、提督、この銃をどこで手に入れられたんですか?」怖い怖い、目が笑ってねーぞ。


「いやぁ、偶々手に入れる機会があってね」


 とにかく、硬弱まぜた話でなんとかやり過ごそう。


 で、紳士協定で話は纏まった。不本意ではあるが是非もなし。



 さて、本日の戦果はほぼ完勝と言って良い。敵船団は全て沈没。乗り込んできた連中は全員死亡。こちらの被害は重傷者一名、軽傷者三名。うん、見事だ。

 流石に連中も打つ手がないだろう(俺は本来、『だろう』なんて言葉は使いたくない。経験と実績があって結論が生じる。なれば『だろう』だなんて不透明な言葉はでないのだ。

 だが、まあ連中の総兵力は把握仕切れていないのだから『だろう』も使っても吝かではない)後は島々の緑を焼いてまわる、それだけだ。

 その過程で生じる島民の虐殺は……許容するしかない。


 しかしナパーム弾があれば楽できるのだがな。あいにくと原料が無い。

 そこで考案したのがスピーカーメガフォンの様な形をした火炎放射器だ。燃料は炎属性の魔石である。密かに開発を命じて、先日届いたはかりだ。

 陸戦隊用に装備してあるので今は手元に無い。まぁ明日には戦力として働いてもらうので、後の楽しみにしておこう。


 ああそうだ、コレット嬢に頼んでおいた連中の人口分布はどうなっているのかな? 地図作成もひと息ついたし追加で任務を与えたが酷使しないように気をつけないとな。

海戦は今回で終いです。二話か三話かけて陸戦の話がでます。

早く日常パートに移りたい(๑•́ ₃ •̀๑)

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