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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百三十一話 村部美怜、海戦その六

来年も頑張って執筆していく所存です!

改めてア・ハッピー・ニューイヤー。

 俺は中甲板にある武器庫に寄り、クロスボウとボルトを受け取り敵の戦闘行動を予測する。

 狙うなら速攻で艦橋しかあるまい。何故か? 敵兵が少ないからだ。連中の頭にカビが生えているのでないなら、必ずそうする。

 しかし、現状はこちらが不利だ。巡洋艦は帝国海軍のドクトリンの中でも異質だ。汎用性に優れてはいるが駆逐艇と比べると無駄が多い。

 今もそうだ。余分な船員が少ないせいで(陸戦隊の乗艦は次回からの予定だった)いざ白兵戦となると心もとない。駆逐艇なら水夫を戦闘員に、また逆に海兵を臨時の水夫に出来る。


 何人応戦できる? 敵の総数は? 分からない事ばかりだが、ひとつ分かっているのは、俺が艦橋と上甲板を守らなくてはならないと言う事だ。誰かもうひとりでも居れば楽できるのにな。


 不意に目が艦舷に向いた。目の前に梯子が架かったからだ。

 素早くボルトを装着、頭をひょいと出して敵兵を確認。警告なしでトリガーを絞る。狐目の男の頭にヒット。男は落ちていった。

 正直、警告は出すべきだった。その程度には冷静だったのだ。コレが初めての殺人。やはり感情は湧かないでいる。まぁ守る対象が美少女(Or美人)ならモチベーションもさぞや上がった事だろうか。


 もう一度ボルトを装着して二撃目を撃つ。これもヒット。撃たれた男は波の揺れか海へ落ちていった。

 これ以上は付き合えない。梯子を掴みあげ、ほおり投げた。これで脅威のひとつは消えた。これで済んだら万々歳なんだがねぇ……。だが現実は無情なもので次々と梯子が架けられてきた。


 俺は半ば条件反射で梯子を外してまわる。運良く(悪く)艦舷に架かったモノにはボルトの洗礼を浴びせかける。二丁拳銃ならぬ二丁クロスボウにボルトが十数発。このままだと此方がジリ貧だな。まあ中甲板だし、武器庫を往復すれば良いか。


 おっと! 梯子を登りつめたヤツが居た。こーゆー時に限ってクロスボウにボルトが装着されていない。オゥシット。村部美怜最大の危機。

 ……別に達観していた訳ではない。援軍が現れただけだ。

 武器庫で受領したと思われる曲刀シミターを持った青年が敵兵を屠ったのだった。


「助かった、おかへ戻ったら一杯奢らせてくれ」


「やぁそいつは有り難いな。自分はアラン。一等海士だ」


「自分は村部……」


「知ってるよ。あの提督の副官だろ?」


「もう少しダベってたいがそうもいかん。此処は任せるが構わないか?」


「構わないさ」とアランは茶目っ気たっぷりの敬礼を見せた。


「恩にきる」とこちらも崩しがちな敬礼を交わす。こーいうのはノリだよノリ。


 俺は再び弾薬庫に戻りボルトの補充にかかった。


「おっちゃん、ボルトを五、六本くれ」


「そんな半端で良いのか?」


「持ちきれないから却下」


「なるほど道理だ。……ほらよ、無茶はするなよ」


「あいよ」


 簡単に礼をすまし、上甲板を目指す。

 ところでどうしてクロスボウを扱えるかと言うと、この地に現れた次の日に自衛隊の装備が剥奪された。

 正直、気の良い話ではないが国法とあれば仕方ない。ただし、ナイフか拳銃かは所持が(課金額は凄かったし実包は無しだったが)認められた。当然、俺は大枚をはたいて愛銃を買い戻したがね。

 閑話休題。

 つまりクロスボウは新しい銃の代わりだった。即応性や単発である点を除けば、取り回しの良さもあってみるみる習熟度が上がっていった。


 上甲板に上った。敵兵の姿はまだ無かった。いや煙突の脇から三人現れた。三人引く二丁。こちらが不利なのは明らかである。

 なにか手はないか?

 焦りが脳を痺れさす。


「村部大尉、コレを!」


 不意に第三者が声をかけてきた。三十絡みの士官が滑る様に割り込んで来たのだった。彼は手にシグ・ザウアーP220とマガジン四つを持っていた。


「?」


「提督からです『訳は後にする。これで存分にらちを開けろ』との事です」


 願ってもない。コイツはグットだね!


 P220は命中率は良いものの装弾数が少なく、かつ日本人の手には大きく、馴染めない隊員も多かった不遇の銃だった。だが俺にはしっくりくる名銃だ。

 マガジンに弾が入って入るのを確認し銃に差し込む。

 一発、敵兵の胸に命中。

 二発、やはり胸に命中。

 三発、やや外れて腹に命中。

 上甲板に上った敵兵はこれで排除した。


 後は銃とクロスボウを持って『敗残兵』を駆逐して回った。




「で、提督。この銃はどうやって手に入れられたんですか?」


「いやあ、偶々手に入れる機会があってね」


「ほう、偶々ですか……誤魔化しは無用ですよ?」


「分かった降参だ降参。ほら君等の装備を没収しただろ? 装備の大半が使用出来なくなるのは明白だった。だが銃は別だ。それに押収した弾はちょっとやそっとでは使えきれない。

 そこでだ、護身用の武器として拳銃一丁とマガジン数個を密かに発掘していた訳だ」


「工藤連隊長には?」


「言うはずないじゃないか、そんな怖ろしい事」


「という事は……」


「共有出来る仲間はいた方が良いよね」


「でも自分にメリットがありませんよ」


「君にもマガジン数個の所有する許可をだす」


「本当に?」


「辺境伯として本当に」


「なら取り引きは成立という事で」


 こうして俺は辺境伯と秘密を共有する事となったのである。

読者さまからの指摘、お待ちしています。

今回、無理をして目を酷使したためか目が痛いです。

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