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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百ニ十九話 ロイド、海戦その四

久々に一ヶ月切りましたね!

ああ内政が書きたい。

 ニ十五番艇は海兵や水夫らの奮戦により窮地を脱したが、敵わず沈む艇もあった。その数三艇。乗員の大半が戦死したのだった。

 逆に敵船の沈没またはその放棄三十八隻。大勝と呼んでいい。投降してきた者も少なく無かったが、全員死刑に処した。


 さて、本日のノルマはまだ残っている。が大規模戦闘も終えた後だ、砲弾も少ない。ここは引くべきか? 僚艦のランプーアダムスとミームアリフヌーンとに連絡した。

 ……結果、今日は退却する事となった。弾は少々こころとも無いのが原因である。確かに一会戦はこなせるが、そこまでだ。まだまだ攻略せねばならない島々もあるし補給する必要があった。

 まぁ俺としてはさっさと終わらせて、日々増えていく決裁すべき書類を片付けたいのだが……。


「村部君、敵の戦力……総兵力はどの位だろう?」今は戦時だ、書類の決裁は後回しの話題だ。


「ハ、第一波と第二波がほぼ同数だったので、これ以上の戦力は乏しいものだと思われます。その理由として敵戦力に余剰があれば第二波で増強しているはずです」


「解説ありがとう。しかし『思われる』はともかく、分析に『はず』は使っては駄目だぞ」


 当たり前だ、分析に『はず』なんて希望観測は入れるもんじゃ無い。


「申し訳ありません」彼は素直に謝罪してきた。


「いや構わない。それよりも敵戦力を過小に見繕ってはいないか?」


「正直、それは否定しません」


「では何故?」


「最大を見積もっても此方の方が優勢であります」


「船舶の事もあるか」


「はい。戦闘艦を建造するのに一日二日では用意できません。また材料である木材の件もあります。これから目減りしていく資材をどう割り振るかの問題がでますから」


「煮炊きする分を確保するか、船舶の建造に使うか、連中にとっては悩ましい問題だな」


「そうです。最悪釣り船さえも戦闘に持ち込む事も考えられますが、まぁ流石にそれは無いかと」


「いやいや分からんぞ?」


「何かご懸念でも?」


「連中、ありゃ半民兵だろ。ならば既存の戦術には囚われないからな」


 そこまで言って煙草はまきを取り出した。うち一本を村部に勧める。

 そうしておいてシガーカッターで吸い口を切り落とす。


「有難うございます」


「いや、それよりも連中はんぎょじんが何をしでかすが不安だ」そう言いながらマッチを擦り煙草に火を点ける。村部も自分で火を点けていた。ちなみに葉巻きに火を点けるのにはちょっとコツがあって、普通の煙草なら吹きながら火を点けるが葉巻きは吸い込みながら火を点けるのだ。まぁどうでも良い話だな。


「連中、何時、どんな反撃をするのだろうか?」


「まともな反撃は今回で終わりでしょう。後は嫌がらせの様な擾乱攻撃が精一杯でしょうから」


「ならばこちらは駆逐艇を増やして対抗すべきだな」


「はい」


「ならば造船所を最大限に活用してだな」


「そうですね」


「これで特需が生まれればめでたいな」


「……そうですね」


「なんだ今の間は?」


「いえ、別に何でもないです」


「いや違うね……俺が特需からの裏金でも貰うのだろう、違うか?」

 

 村部の方頬が僅かに引き攣るのが見えた。


「確かに幾分かは贈られてくるさ。だが税法上は問題ないんだ」


「なんだか、その……」彼は納得し難い表情をつくった。


「まあ、望めばそれ以上の裏金が入るよ……違法だがね」


 村部は煙草を揉み消した。あまり合わないのだろう。


「ところで話は変わりますが、いくら帝国が強大でも海軍力が巡洋艦三隻と駆逐艇五十六艇しかないのは流石に貧弱では?」


「……それはな、海軍が金食いだからだよ。統一が成った今、海軍力を持つ敵性国家はない。せいぜいが小規模な海賊くらいだ。

 それに対しまず戦艦なんて論外だ。費用対効果が悪すぎる。巡洋艦不要論も出てくる始末だ。巡洋艦四隻目もおそらく造りはしないさ。

 ただ、駆逐艇の増強は有りだ。ここの連中程ではないが、時折海賊が出てくるのでな」


「なるほど、有難う御座いました」


「なに、講釈たれるのも棒給のうちだ。

 あ、そうだ忘れてた。海図どうなってる?」


 コレット嬢が予見した海図と現状の乖離はあるのだろうか?


「見てきます」


「いや待て、俺も行く」


「ハ!」


 艦橋後部にある海図室へと俺達は向かった。

 海図室には専門の士官と何故か艦長が居た。


「その海図は使えるかね?」


「いくつか岩礁が省かれておりますが、今のところ問題はありません提督」


 ペンを置き、顔を上げた士官は精気を漲らせ、そう報告した。


「それは重畳。で現在迄の進捗状況はどうなっている?」


「ハ! 進捗状況に関してでありますが、当艦の担当区域の一割五分が埋まりました。他艦との合接にもよりますが、全体の三割が埋まる予定です」


「そうか。では艦長、この海図を綺麗に埋めるのにどれほどの時間が掛りそうなんだ?」


「そうですな……最短でも三週間は必要かと」艦長はヒゲをしごきつつ返答してきた。


 三週間か……もう少し何とかならないかな?


「艦長、専門の人間に聞くのはどうかと思うが三週はかかり過ぎだ。何か短縮できる方策は無いかね?」


「本作戦は第一に民族浄化とあります。何処まで駆逐するかは未定ですが最低でも九割は削る必要があります。その点を加味すれば三週間は妥当かと」


 ふーむ、崩せんか。ならば是非もなし、腹を括るか。


「艦長の言や良し。その方針で行こう。だが余裕は無いぞ」


「承りました」ピっと敬礼してくる。なので俺もピピっと答礼したのだった。

次回は年末…だといいなぁ

努力はします。しますが確約は致しかねます。

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