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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百ニ十ニ話 ロイド、新たな事実に直面する

お待たせしました!

 短い休暇を終え、泊地であるカッパの港へ戻った。

 そのまま司令部へと顔を出す。


 だが何か様子が変だった。精勤は精勤なのだが、どこか心ここに非ずといった感じだ。


「おい君、何かあったのか?」


「は、いえ…あ、いやそれが大変なんです。その何処から話したものか……」


「時系列で表わせ」


「……ハッ、では提督閣下は敵の死体をどれほどご存知ですか?」


「ん、いや見た事無いな」


「その死体の数が合わないのです」


「続けたまえ」


「は、当初は海に落ちたからだと判断していたのですが、それにしては数が合わないと。実際、救助した者はおりません。

 そして、本題に入りますが、残された遺骸から想像だにしていなかった事実に直面しました」


「…………」


「……連中、半魚人でした」


「半魚人だと?」


「はい、腋から肺にかけてエラがあったのです」


「それが事実だとすれば、連中、歩が悪くなれば容易く逃げれる訳だな」


「はい」


 連中、ヒラメ顔だったが、本当に海生生物だったんだな。なんか感慨深いモノがある。いや無いか。


「実物が見たいのだが」


「ハ、案内します」


 俺は隣の副官を見やった。


「君も来るかね? 遺体見学はおすすめしない」


「ハ、ご厚情ありがとう御座います。ですが付いて行くのも職掌であります」  


「そうか、ま、好きにするがいいさ」


 戦務科の科員の案内により、遺体置き場(モルグ)へ向かった。

 遺体置き場は司令部のすぐ裏手にあり、歩いて五分もかからない。

 

「検体番号一ノ十二です」


 そう言って冷棺を引き出す。そこには壮年の男性の遺体が載っていた。その姿は青白く、微かに死臭がした。見た目、死因となった傷は無かった。おおかた背中側にあるんだろ。

 まぁそんな事はどうでも良い。


「エラは何処にある?」ぶっちゃけ死体に触りたいと思わない。課員に顎で示した。


 その課員…少尉はイヤな顔をせず遺体の腕を持ち上げた。


「コレです。ココがそうです」


 そこには確かにエラがあった。


「確認した。確かにエラだ。これは全部の遺体に付いているのかね?」


「ハ、いいえ、八割がそうですが、二割は普通の人間でした」


「それはあれか、連中の元に行ったこちらからの逃亡者だと考えていいのか?」


「はい」


「ん、分かった。少尉、苦労であった」




 司令部に戻った俺は皆を見渡した。


「さて諸君、これをどう見る、どう解釈する?」


「それについてはまだ懸案事項があります。先に伝えた時系列の続きですか」


「何かね?」


「連中、以前から強姦、殺人、窃盗…まぁ、あらいづも沿海州一帯で行なわれている犯罪なんですが、夜間での活動が目立ってまいりました」


「聞き捨てならないな。すると何か、連中は海生生物なだけでなく、夜間の活動も出来ると言う訳か?」


「はい、信じられないかもしれませんが、その可能性が高いと言えます」


「この事は陸軍でも承知しているのか?」


「……いえ、管轄が違いますので」


「情報の共有は密にしろ」


「ハツ、合同の連絡委員会を設けます」


「よろしい、差し当たっては夜間の警備だな。それと駆逐挺に弩弓いしゆみを増設して海中に逃げ込んだ連中対策にする」


「それは良い案ですが、弩弓の数が足りません」


「それは俺が用立てする」


「有り難くあります」


「俺は自分で言うのもなんだが軍政畑の人間なんだ。用立てくらいなんでもないさ」


 さて言ったは良いが訪ねる順番…根回しが難しい。ま、いざとなれば強引にでも用立てするさ。


「それよりも、今、俺が知っておくべき懸案はあるかね?」


「……はい、今の所はありません!」


「よろしい。諸君、たとえ蛮族が半魚人だとしても殲滅する事は同じだ。ただし油断は禁物だ」


「「「ハッ!」」」全員が起立し、敬礼をとる。俺は答礼を返した。


「では俺は執務室にいる」 

   

「ハ、了解しました」


「あ! ひとつよろしいですか?」参謀のひとりが手を上げた。


「何かね?」


「新型の平射砲、あれの弾薬を焼夷榴弾に代えたいのですが」


「理由は?」分かっているんだが、ひとまず聞いてみる。


「物理的に破壊するよりも、焼夷榴弾で焼いた方が撃ちもらしが少ないからです」 

 

 だろーな。


「許可する。派手に焼いてやれ」


「ハッ!」




 そして俺は執務室に入った。さて……。まずは陳情書から書くか。これは兵站部へのやつだ。

 陳情書の次は意見書。これは軍務尚書宛だ。内容が内容だけに脅威を強調しておく。

 流石に『オ・ネ・ガ・イ♡』とは書かない。それ位の分別はあるさ。


「閣下、お茶をお持ちしようと思うのですが、豆茶と甘茶、どちらを用意しましょうか?」ツキハ君がそう口に出した。


 豆茶とはコーヒーの様な味で、確か東部ではポピュラーなやつだ。


「甘茶も良いがたまには豆茶も良いな」


「かしこまりました」



 さて、兵力の増強とかの書類も一段落したし、やっとく事はあったかいな?

 書いた書類を眺めつつ、豆茶を飲む。


 ……違いの分かる男になりたい。

 ダバダーダバダーダーダダバ、脳裏にあの音楽が流れる。


「あ、ツキハ君、明日の予定を大都の館に変更してくるかね? ドラクルを呼んできてほしい。あの半魚人共の生態を調べねばならない」


「ハ、了解しました」


 ドラクルを使い潰したくは無いが、まぁ対象が対象だけに悪い気はしないだろうよ。研究者冥利に尽けるんだからな。

 

ネタ切れではありませんが、書く事にプレッシャーとかあって絶賛スランプ中です。

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