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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第6章 ロイド辺境伯、東夷討伐
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第百十九話 ロイド、海戦その二

「……そうか、あの大提督(笑)は逃げたか」


「ハ、こちらが一艇食われたので、二艇で接舷しようとした所、上手く風を掴んで逃げられました」


「ま、今日の所は仕方ない。明日も頼むぞ」


「ハッ!」


「しかし、それよりも敵の総数が分からないのが痛いな」


「今日だけで六十(パイ)喰いましたが、全滅だなんてあり得ません」戦務参謀はため息と共に告げた。


「今日は今日、明日は明日だ気持ちを替えていこう」


「ハ、では帰港します」


「任せる。…あ、そーだちょっと聞きたいんだが」


「はい、何でしょう?」


「爆砕と轟沈の違いが分からなかった」


「ああ、それはですね爆砕は帆柱や船体を破損した場合で、轟沈は言葉通り敵船を沈めた場合に使います」


「ほうほう、だからか。なるほど合点がいった」


「砲の威力は悪くないのですが、流石に一撃で轟沈は厳しいです。まずは帆柱を狙い行き足を殺してから轟沈を狙うか、駆逐艇に任せるかを選択します」


「なるほどね、いやありがとう。

 本日の勝利はぶっつけ本番だったが上手くいって良かったな」


「そうですな。それもこれも巡洋艦の火力あっての事ですから」


「明日明後日は換装の為、総火力は落ちるがな」


「まあ、それはそれで、撃破も可能です」


「うん。よ〜し、明日も頑張るぞぅ」


 俺と戦務参謀はニッコリと笑いあった。

 海軍士官は古来スマートで洒落家な者も多いが、戦務参謀の様な愛嬌たっぷりな者も多い。俺としては気が楽だから有り難い。




 翌朝、朝メシのカーシャをかき込み、カルパス(カルパーサ)に噛りついていたら、ふと気になって隣の村部を見た。食欲が無いのか粥を掻き混ぜては落胆するかの様にため息をついていた。


「村部、食欲が無いのか?」


 村部はハッとしたかの様に俺を見た。


「……ええ、まぁ」


「やはり米か?」


「はい、日本人ですから……」と苦い表情を浮かべた。


 これはチト問題だな。士気モラルが低下するばかりだ。

 ……そうだ、東部には日本人のコミュニティがあったんだ。確か米の少量生産していたハズだ。ここは一丁俺が働いてやるか。


「村部、ここ東部には日本人の集落がある。俺の伝手で白米をプレゼントしてやる」


「本当にですか!?」


「おう、嘘は言わない。ただし、売ってくれるかは別だぞ?」


「希望が……希望の光が……」彼の目に光が宿った。ちょっと変な具合だが……。

 

 俺は気を取り直して隣に座るツキハ君へ向いた。


「ツキハ君、臨時の仕事だ。日本人の集落ヘ行って未精米の米という物を可能な分購入してきて欲しい。未精米がなければ精米済でも可だ」


 彼女のスケジュールは今日明日は空いている。まぁ二日もあれば何とかなるだろうよ。フネに乗れないのを逆手にとった形だが、福利厚生という仕事だ。公私混同からではない。


「ハ、日本人の集落を探し出し、米なる品種の未精米、あるいは精米した物品を購入して参ります」


「頼んだ。これは日本人軍人に欠かせない戦略的物品である」


 米かぁ……俺は別に欲しいとは思っていないし。盲点だったな。


 さてと、残りをかき込んで乗艦した。

 今日は一番艦であるランプーアダムスは出撃しない。砲の換装の為だ。降ろした砲は一門づつ駆逐艇に配備する予定である。

 最終的には駆逐艇全艇に魔導式装填砲を装備する予定だ。


 朝靄の晴れぬうちに艦隊は出撃する。

 航海科の参謀と艦長が敵伏在海域の想定し、艦首を北へ向けた。


 艦隊は一刻半の航海の後に多島海ヘ入った。禿げた島ばかりが目につく。蛮族の連中は植林の概念が無く、こうして禿げた島ばかりとなった。木々の茂る島は二割を切っている。連中、わかつてるのか? 自分達の生息域が消えかかっているのに。まあ全滅戦なんだ気にしては駄目だ。

 

 この全滅戦は2ステージで構成している。先ずは海上戦力の殲滅。次に陸戦隊による蛮族の根切りだ。

 多島海の島々は約二千。そのうち、どれほどの人口があるのか誰も知らない。だが殲滅戦なのだ、情け容赦なく全滅させてもらう。……確かに女子供を殺めるのは気が重い。しかしこれ以上価値観を有せない人種とは共存出来るとは思えないのだ。だから殺る。野蛮人はどちらか、ではあるが……。


「艦長、敵影は?」


「現在の所不明です」


「罠かなにかの可能性は?」


「……いや、無いでしょう」


「そうか……」


「朝靄も間もなく晴れます。仕掛けてくるなら頃合いかと」


 とそこで伝信が鳴った。


「あ戦区の一番艇より入電『我、敵集団を発見せり。数は最低でも五十』!」


「来たか」


「来ましたね、陣形は昨日と同じでよろしいですか?」


「ああ、それで構わない、射撃開始」


『全艦に告ぐ、陣形は鶴翼の陣陣形。移行した者から戦闘開始』


 命令が復唱され艦隊は戦闘準備を終えた。俺もCICに入る。


 ᏟIᏟに昨日までのぎこちなさは無かった。滑らかに指示が飛んでいた。


「E群第一砲塔、発射開始……敵船に命中、爆砕。

 第二射…命中、轟沈」


「E群第二砲塔、射撃開始。敵船に命中、爆砕」


「C群第一砲塔、射撃開始。敵船に命中。やりました轟沈です」


 良し良し幸先は良いぞ。だがオペレーター達は冷静に指示と状況把握に努めている。


敵船、当駆逐艇一号挺に逆撃。死傷者多数」


敵船、当駆逐艇二十号挺と交戦。火災発生。なお敵船にも火災が発生」


 駆逐艇はやや苦戦しているようだ。

 その後も一進一退の攻防を繰り返し、敵船四十八隻撃破、当方の被害十二隻で二日目を終えた。

 こちらが優勢なのは巡洋艦の火力に依る所が大きい。地球の巡洋艦よりも貧弱な艦だが、この世界では最強の艦だ。

 まあ何はともあれ今日も勝った。

 明日は一番艦ランプーアダムスと二番艦ミームアリフヌーンが入れ替わり、駆逐艇八艇も装備換装で戦線を離脱する予定だ。だが敵はどれほどの戦力を保有しているか全くの不明である。いっそ捕虜でも取ってみるか……。


 俺は夕食後のミーティングで問題を提起した。反応はまちまちで喧々諤々の様相を呈していた。ちなみに俺は反対派。理由は至極簡単、捕虜を得ても受ける恩恵が無さ過ぎるからだ。あと、処刑しなきゃならないから二度手間。

 だが結局は反対派に歩があがった。賛成派も納得してくれた。

 今後の予定を記しておく、あと七日間今の体制で敵の残減を行う。敵海上戦力をすり潰したら陸戦隊による各島々での焼き討ちと並行しての敵氏族の殲滅。


 ……短絡的なのだろうか? うん、短絡的だ。しかしこれ以上蛮族の生存を許して置くわけにもいかない。どの道、将来的には俺はエルフを滅ぼすのだ。悪評にも慣れておいて良いのさ……。

イヤッホー!30万PV(この時点では299753PV)

これもひとえに皆様のおかげです。ありがとう御座います!

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