第十三話 ロイド、継承の儀を受ける(超短編)
国務尚書の部屋にて俺は片膝をついていた。
「汝、ロイド・アレクシス・フォン・ファーレ。汝は帝国貴族家当主として責を果たすか?」
国務尚書次官の声が響く。
「はい」俺は短く答えた。
「汝は辺境伯として帝国の藩屏として責を果たすか?」
「果たします」
「よろしい。これで汝はファーレ辺境伯となる。続いて辺境伯には指揮杖と額帯を授ける」
次官はそう言って盆に載せられた指揮杖と辺境伯用の額帯を俺に着けさせた。
「これにて略式だが辺境伯への継承の儀を終える」
次官は一歩下がった。
続いてオイゲン国務尚書殿が前にでる。
「本当に略式で良かったのかな? 君なら堂々と陛下の御前に出て式典で授けられたのだよ」
オイゲン国務尚書殿は僅かに眉をひそめてそう口に出した。演技かどうかは判りかねるが心配しているようだ。
「国務尚書殿、おれ…私は堅苦しいのが苦手なんです。
見た目以上に小心者ですから、陛下の御前にて粗相をしかねません」
国務尚書殿は俺の台詞を冗談だと感じたようだ。
「中々に面白い発言だな。なおさら惜しい」
いや、冗談ではなく陛下御前に出るのは勘弁して欲しいし、何より面倒だ。
「これで貴君は辺境伯公子ロイドではなく、ファーレ辺境伯だ。責任ある立場に相応しい貴族として精勤してくれ給え」
「はい。誓って」
こうして俺は辺境伯へと正式に受爵した。
入れるかどうか迷いましたが、入れた方が良いと判断しました。




