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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第5章 ロイド辺境伯、今日から明日へ、明日から未来へ
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第百十三話 ロイド、公聴会にて激怒する

 公聴会はあらいづも領の首邑イスラで行われる。その為、汽車に乗りイスラへ向かった……のだが、あの連中が駄々をこねて、あらいづも第二の都市スーサでと相なった。

 大方、旅賃が足りないか、その辺りだろう。

 予定変更の為、汽車を乗り継ぎ、予定日を一日ずらす事となった。


 で翌日、スーサの大議事堂にて公聴会が開かれた。

 と言っても、俺、アレックス、あらいづもの役人、新聞記者で十数名。あとヒマなのか関係者なのかわからん市民がやはり十数名。対して蛮族が十名という布陣であった。

 

 開始は午後いちからだ。

 アレックスが議長となり会が始まった。公聴会の目的は蛮族の起こした事件をあげとり、刑事責任の有無を調べる事。まぁ蛮族は滅ぼすんだけどね。

 昨日アレックスに聞いたのだが、蛮族の連中を国家として扱うのか? と尋ねたら、当面は国家として扱ってもよい。ただしこちら側が提示する各種条約を批准できれば、との事。批准ねぇ……。


 しかし連中、なんか不気味なんだよね。顔がね、のっぺりと平たく、一重まぶたと相まって…ヒラメ? なんかそんなのを連想する。一見人間なんだが…同じ人類とは思えない。


 公聴会は不調だ。というのも連中、人権ガー、差別ガーと煩い。事件の経緯を尋ねているのにいつの間にか自分達が被害者かのように話をそらせる。誰もそんな事聞いてないっつーに。

 そんな訳で話が全然進まない。

 仕方ない、一旦休憩を取るか。


「議長、よろしいか?」


「なにかな?」


「一旦休憩を挟んではいかがかな?」


「……よろしい、半刻の休憩をとる」


 議長席を立ったアレックスは幾分疲れた様子を見せていた。


「疲れた様だな」


 親友は乾いた笑いをだす。


「あんな連中始めてだよ」


「とりあえず控室に戻ろう」


「ああ」




「しかし何だあの連中!」控室にて俺は憤慨した。


「確かに非難したくなるな」


「こっちの証拠はいちゃもん付けて、自分達の証拠は印象でゴネる。挙句、話をそらせて賠償を言い出す始末だ」


「連中、被害者意識がつよい。それと、あの根拠のない自信は何処から来るのやら」


「認めない、謝らない、どの口でほざくや!」


 俺達はしばらくの間、愚痴を吐いた。


「ま、言っても仕方ない。建設的な論議をしよう」


「そうだな。ロイド、君ならどう持っていく?」


「どうもこうも証拠を突き付け、話を逸らすようなら恫喝してでもこっちに合わさせるさ」


「恫喝外交か……」


「そうだよ。なんせ俺達は『帝国』なんだからな。格下の連中なんぞ恫喝外交で十分だ」


「とにかく、揚げ足をとられない様にして決して譲歩しない様にする事か」


「まあそれが無難だな」


「しかし、戦争するには準備が必要だ。動員にはどれ程かかる?」


「陸戦ならあらいづも領に駐屯している軍集団があるがね。海戦となれば…う〜ん、半年くらいかな? ああそう新型の艦が艤装中だ。半年もあれば戦力化できるな」


「大いによろしい」俺は両手を打ち気勢を上げる。




「……不利益をこうむったのは我々で、賠償を要求する」


 はぁ? なに言ってんの? ギョなにがしが奇妙な発言をする。


「技術を剽窃したと言うが、我々には半万年の歴史があり、当該の技術は我々が先んじている」


 なにコイツ……。まともな文化を有していない番族のくせになめてんのか?


「君たちは現実が見えないのか? これらの証拠の品は君らが犯人である事を示している」


「それらは証拠の根拠のない品ばかりだ」


「あくまでもしらを切るつもりな訳だ」


「そうでは無い、そもそも我らは被害者である。帝国に対しては賠償金を要求する。これは正当な判断だ」


 いかん、怒りゲージが満タンだ。我ながら短気だがこの連中の煽りスキルはホンモノだ。


 立ち上がり、議長席に向かう。アレックスを押しのける様に前に出た。


「痴れ者がぁッ! もういい、こんな公聴会なんぞ茶番だ。決めた、我、ロイド・アレクシス・フォン・ファーレ辺境伯は貴様ら蛮族に対し懲罰行動を宣言する!」

 

 短慮だったが言わずにはいられ無かった。


「我々の水軍は二千隻を超えている。帝国にいかほどあろうとも、これを打ち砕く事は出来まい」


「お前ら未開の原住民如きが増上慢も甚だしいわ。二千? おおかた帆を張るのが関の山の小船であろ?」


 これは正確ではない。帝国も似たようなものだがらだ。ただし、帝国には蒸気機関の艦を所有している。これは海戦において大きなアドバンテージだ。


「我ファーレ辺境伯は宣言する! 本日この場よりお前ら漁村の蛮族を殲滅させる!」


「な? この場は公聴会で先の事件の賠償を求め……」


「急に日和るな! 愚か者!

 お前ら緒王家の合議による…何だたっけ、ああそうそう海洋帝国か、に我ファーレ辺境伯は正式に宣戦布告をする!」


 ひらめ顔のギョ某は口をパクパクさせていた。俺は顔をアレックスに向けた。


「アレックス、これは俺の戦争だ、良いな?」


「ロイド、熱くなりすぎるな」


「確かにカッとなったが、至って冷静だよ。それにこれで良いんだろ?」


「…まあ、な」


「アレックス、君は俺を利用しろ。俺も君を利用する」


「分かった」


 こうして、なし崩しに宣戦布告をする羽目になった。まあ、仕方ないよな。

なんか今回、自分の仕事が出来ていないです。すみません。

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