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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第5章 ロイド辺境伯、今日から明日へ、明日から未来へ
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第百十二話 ロイド、親友からの頼みは断れない

きゃーっ時系列間違えたーっ!

次話更新したら、こっそり編集し直します。

 告時機とけいの針を二ヶ月戻す。

 我が親友アレックスの要請により彼の領地へとツキハの跳躍で移動した。

 本来、跳躍は知っている場所へしか跳べないが、幸いにして彼女は東部を代表する都市、東都パクス・アレキサンドリアに来た事があると言う。まぁ来たのは軍の施設までなので、中央駅の近辺に跳躍する事にした。

 

 跳躍したそこは袋小路の路地で人の目から隔絶していてナイスな場所だった。

 路地から出ると靴磨きの少年が居て、不思議そうに俺達を見ていた。


「ツキハ君、大公家まで辻馬車を使うぞ」


「はい」


 中央駅は広く、タクシー乗り場のように辻馬車が何台も駐機していた。客も何名もおり、順列に俺達も並んだ。

 そう待たず、俺達の順番がきた。ツキハ君がドアを開けようとするが、俺の方が近い。彼女を制してドアを開けた。

 しかし辻馬車タクシーは自動で開くもんだと日本人の部分がボヤく。




「どこまで?」ぶっきらぼうな御者の声がした。


「大公閣下の屋敷まで行ってくれ」


「承知しやした」俺達を乗せた辻馬車が走り出す。


「何寸で着く?」


「あい、十数寸でさぁ。お急ぎで?」


「いや、急いでいない」


「あい」


 馬車からの眺めを見るとはなしに見る。観光で来たのではないので興味が無かったからだ。それよりも尻が痛い。簡易生産型なのか板バネしきなのに振動が酷い。

 少なくとも御者は自分の馬車に重きを置いていないのは確実だった。まぁどうでも良い話だが……。


 十寸後、小高い丘の上にある豪奢な屋敷についた。

 御者に賃金を払い(払ったのはツキハ君だが)俺は玄関のドアノッカーを叩く。


 中から出てきたのは目にも鮮やかなイタリアンィエローの制服ユニフォームを着た従士だった。いやはや従士とはな。今日び従士なんて雇っているのは伯爵位以下の警備隊を持たない家だもんな。

 大公家で雇っている理由はなんだろうか? 警備隊を雇える金を持っているのに……。


「お客様、今日はどの用なので?」従士は今日の訪問カードを把握している。だから今の俺達みたいに飛び込みでくる訪問者を警戒していた。


「ロイド・アレクシス・フォン・ファーレ辺境伯だ。アレックス君の招きより参上した次第である」


「え!? は、はい失礼しました。若様より覗っております」黄色い従士はしゃちほこばって敬礼した。


「こちらへどうぞ!」


 彼の後に付いていけば応接間へ通された。


「少しお待ちください。いま茶を用意させます」


「ああ」


 急に下手にでた従士に俺は曖昧に頷いた。


 待つ事おおよそ五寸でこの屋敷の次期惣領であるアレックスが現れた。


「よお、親友」


「やあ親友」俺はソファから立ち上がり、ガシっと握手した。


「遠くまで済まないな」


「俺ひとりなら無理さ。彼女…ツキハ少佐相当官が居ればこそだ」


「ありがとうツキハ少佐相当…昇格したのかい、それはおめでとう」


「ありがとうございます閣下」


「アレックスで構わないさ」


「はい、ありがとうございますアレックス様」


「それで今日の呼び出した内容は?」


「う〜ん、どこから話たものか……」


 何時もは歯切れの良いアレックスなのだが、今日に限ってはどこか歯切れが悪い。


「明後日、公聴会があるんだ。で、その相手がね」


「…………」俺は黙って先を促す。


「東方の蛮族が国家を表明した。名を『緒王家の合議による海洋帝国』という名だ」


「蛮族風情が」


「そう、蛮族風情が、だ。だが表立って表明したからにはこちらも相手しなきゃならない」 


「その公聴会に俺を?」


「そうだ。辺境伯たる君には参加する資格があるし、何より東夷征伐にも参加するじゃないか」


「アレックス、君には悪いが東夷征伐は無理だよ」


「何故だい?」


「時間が無い。自領と大公家の面倒でいっぱいいっぱいなんだよ」


「その為に代官がいるんじゃないか」


「それはそうなんだが……」


「なにを弱気になっているんだい。君はいつも豪放闊達じゃないか」


「…………」


「君は自身の弱さを知っている。だからその分、強気に出れる。君が言った言葉だ」


 それから五寸ほどアレックスの説得は続いた。


「分かったよ親友、公聴会にも出るし東夷征伐にも征くよ。ホントに根負けだ。

 で蛮族共の資料は?」


「良かった。これで勝てる要素が増えた。

 資料は用意してある。直ぐに持ってこさせるよ」


 アレックスは背後に控えていた客間女中に振り向いた。


「オルドーにいって『資料』を届けさせてくれ」


「はい、畏まりました」一礼して彼女は部屋をでていった。




 分厚い書類が届けられた。ひと束がジャ○プ一冊分、それが五冊ある。


「…なにこれ?」


「連中に関する報告書」


「中身はどれ……人口八百万。軍属不明、最大でも十九万人。国民総生産不明。主な産業は漁業……」


「むしろ連中の主な犯罪歴を見るべきだな」


「犯罪歴?」


「あらいづも領で起こった連中が関与した事件のあれこれだ」


「?」


「下世話な話だが、連中の動向をみるには打って付けだ」


「なるほど」


「第三部の二章から読んでくれ」


 第三部と書かれたファイルを引き出す。なになに……。


「『ダイア商会事件。あらいづも領において初の事件……』なるほど寸借詐欺からの窃盗、ならびに拉致事件か」


 読み始めて分かったのは、連中は最初は腰が低く出て商会のふところに入る。で技術を学んで(盗んで)ある日重要な機材を盗んで逃げる。その際に工員を拉致か。

 そんな事件が何件もあった。あらいづもの連中は馬鹿か? よくよくのお人好しだ。しかも拉致被害者の返還もろくにやっていない。

 読み進めていくと連中の素性が分かってきた。連中は強欲でずる賢く、嘘つきで被害者ぶるのが得意という最低の人種だった。ひとの善意に入り込み、暴虐非道に振る舞い、挙句逆上して謝らないというたちの悪さだ。

 そんな連中が徒党を組んで国家を僭称する。これは笑えない。少なくとも国家を運営する能力はないだろう。他の情報を踏まえればこの答えに行き着く。


 ひと通り読み終えた俺は嘆息した。この公聴会は荒れるなと。


「アレックス、この連中は本当に国家を運営してるのか? いや運営出来るのか? いくら自称しようが構わないが、本気で帝国と張り合う事は出来はしない」


「うん、僕も同意見だ。連中は強盗と変わりない」


「なら、どうせ荒れるなら、俺の流儀でやらせてくれないか?」


「いや、ちょっと待って欲しい」


「?」


「拉致被害者の返還は通したい」


 ああ、それがあったな。


「分かった。後は?」 


「彼らから被害を受けた方々への謝罪。弁償」


「分かった。だが連中の性癖からすると単純に謝らないかもな。ま、言うだけは言うが」


「頼むよ、ロイド」


「君みたいな正統派の人間より、悪役顔の俺の方が適任さ。だが締めは君がやれよ」


「うん、分かった」


「さて、では予習復習の為に資料を預かっても構わないかね?」


「構わないさ。夕餉の後に部屋へ持って行かせるよ」


 こうしてなし崩しに公聴会へ出席する事となった。はてさて如何なる事になるのだろうか……。

相変わらず目が痛いです。医者から処方された目薬使ってますが焼け石に水です。

評価ポイントとブクマ、いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 完全に朝鮮人じゃん・・・
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