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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第4章 ロイド辺境伯、異界戦役2nd Season
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第九十七話 ロイド、決戦の地に立つⅡ

 決戦の地にはダーサの死骸でいっぱいになった。

 その為定期的にその死骸を除去せねばならない羽目になった。巣穴の中までは無理だが地上の分はこちら持ちとなる。これが意外に手間だった。なにせダーサとはなんら協定なんぞ結んでいないのだ。いや結べれないが正解か。

 とにかく戦場清浄は手間がかかる。こちらに対しダーサらは忖度しないから余計にだ。

 今も砲撃を中止し、死骸ダーサ共を片付けている最中なのだ。一応銃兵達が監視をしていて不意を打たれない様に警戒している。


 しかし扱いに困る死骸である。食べる所は無いし、革が貴重な訳がない。このテラテラしている肌色はキモいだけなのだから。


 ところでダーサの生態はどうなっているのだろうか? こうして地上でワイワイやっているのになんらアクションを示さない。そうでいて凶暴だから始末に負えない。ドラクルも懸命に調査しているが明確明瞭な行動パターンを見い出せてはいなかった。


 戦場清浄は午後の一刻に終わった。さあ攻撃再開だ。

 ポンポンと臼砲群から弾を撃ち出し、仰角を最大にした曲射砲も弾を撃ちだす。

 弾が勿体無いが仕方ない。攻撃のイニシアチブはこちらが握っている。この優位は崩せないのだ。


 ダーサ側に動きがあったのはそれから半刻後であった。突然噴き出す様に現れた。

 銃兵型ダーサが盾になり通常のダーサがワサワサと湧いてきた。目測で百匹居た。それが次々に現れる。だがその程度なら臼砲と曲射砲で対処できる。俺が指示しなくても現場を監督する大尉が指示していた。名はたしかゲオディム大尉だったか。

 大尉の内心は伺い知れないが、冷静に対処している様に見える。


 しかし多勢に無勢である。戦力の投入が必要だった。

 俺はつい、暇そうな工藤を見た。


「工藤、暇なら行ってくるか?」


 工藤かのじょはニヤリと笑う。


「ハ、工藤特務連隊出ます」


「よろしい、では行け」


 工藤は敬礼をすると本部陣地を出ていった。村部が近づき二言三言やり取りをする。

 村部は部下を集める声を出す。直ぐに特務連隊員が集まった。隊伍をくみ彼らは出撃していった。なお特務連隊はその性質上銃に重きを置かない。


 本部陣地から戦場までは七百メートルも離れていない。連隊は直ぐに戦場に駆けつけた。

 工藤が僅かに腰を落とし、腕を振るう。次の瞬間、不可視の刃がダーサを斬り落とすのが分かった。それを皮切りに隊員達も魔法をふるう。


 たちまちに数十のダーサが燃え上がったり、凍りついたりした。これが純粋な攻撃魔法だった。こちらの世界での魔法は生活に密着したやつばかりだから新鮮だ。

 銃兵ダーサから反撃を食らっても隊員の誰かが魔法で障壁を張ったらしく被害は出ていない。


「……なんか凄いですね」と遠眼鏡で戦場を見ていたツキハが言った。


「同感だ。我々にも魔法があるが、彼らの魔法の方が魔法らしいな」


「私達の場合は戦闘に向いてませんから」


「まあそう言うが、ツキハ君、俺は君の魔法にも期待しているからな」


「あ、ありがとう御座います」彼女は微かに頬を染めた。


 彼女はあまり褒められないのか、俺の何気ない一言にでもこうした反応をする。うぶいのは可愛いが初すぎるのは好きではない。俺はよいしょは嫌いだが、褒めて伸ばすのが好きだからはやく慣れてほしい。


「そう言えば体調はどうかね?」


「え、あ、はい。問題ありません」


「君には戦略物資を運ぶ役もある。くれぐれも無理はするな。良いね?」


「ハ、有り難くあります」


「戦略物資の備蓄はどうなっている?」


 戦略物資とはゴムの代替え素材の事だ。ゴムほどの品質は無いが絶縁体として有用だから使っている。いくらあっても困ることは無い。軽工業と重工業の肝だからな。


「今の所問題になる事はありません。まあ集めてもすぐに消費してしまいますが」


「……そうか」


 それからしばらくその話題で時間をつぶした。どのみち俺には見ているだけしか無いのだから。


 戦況はこちらが有利だ。工藤率いる特務連隊(二百人も居ないのに連隊とは笑わせる)の魔法攻撃でダーサ共を巣穴に押し込んだ所だ。

 理想なのはダーサが十数匹づつ現れてくれる事だ。それならば銃兵も楽に狙えるからな。これが普通の戦争ならルールもあるし敵の予測もし安いのに……。


 しばらくしてから工藤らが帰ってきた。

 鬱憤でも溜まっていたのか頬がぷりぷりしていた。


「報告します。当連隊は敵を追い返すことに成功しました。負傷者らはおりません」


「そうか、苦労であった」


「ハ」


「ところでダーサ戦の感想を聴きたい。連中は強いのかね?」


「強い弱いを言うなら…、弱いですね」


「そうか? 連中にだって銃兵は居るではないか」


「確かに銃兵ダーサは厄介ですが、こちらには魔法障壁が展開できますから。それに先の規模なら私の戦略級魔法を使わずに済みました」


「戦略級か」


「私の属性は風です。下はかまいたちから上は嵐…稲妻と竜巻、暴風雨が私の使える魔法なのです」


 暴風雨ねぇ。


「その最大範囲は?」


「ざっと四百町(四百メートル)」


「そいつは傍迷惑な。実戦での使用略歴は?」


「残念ながらこの秘奥義は実戦では使ったことは無いのです」


「……そうなのか?」


「はい。ですが訓練では何度かありますから。それと本作戦の最終段階の突入では使用します」


「おい、危なくないか?」


「はい、この秘奥義は内向きですからね。外部にはほとんど干渉しないのですよ」


「分かった、だがくれぐれも注意しろよ」


「ハ」


「よろしい、では下がって休め」


「了解しました」工藤は敬礼をし、俺から離れていった。


 しかし秘奥義か、間近で見られないのは残念だな。

 何はともあれ、これで手持ちのカードが増えたのは確かだった。……そう思えるだけでもラッキーだな。

急に寒くなりましたね。皆さん健康には留意してください。

ちなみに自分は寒いのは慣れており、暖房器具は一切つけません。

 

すみません、十二月後半の投稿遅れています!

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