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辺境伯ロイド奇譚 〜誰が彼を英雄と名付けたのか〜  作者: 塚本十蔵
第4章 ロイド辺境伯、異界戦役2nd Season
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第九十六話 ロイド、決戦の地に立つ

 ダーサ殲滅作戦の骨子が決まった。コレットが指し示した場所へ陣をひき、ありとあらゆる火力を投射。巣穴から出てきた連中を叩いて潰す。

 コレットの見立てで千を切っていたら工藤特務連隊を投入。一気呵成に殲滅するのだ。

 上手く行くかは未知数だが火力の集中は基本だし、他にしようがない。あとは工藤らがどれだけ奮戦出来るかだ。我々帝国人と違い、彼女らは隊員の多くが攻撃魔法の使い手だ、この差は大きい。我々にとって魔法は生活に密着した技術なので(時折攻撃魔法を覚える変わり者がいる)隔絶たる差があるのだ。

 まあ彼女らの戦歴は“魔法それ”が有効だと証明しているがね。


 さて作戦は最終段階へと進み始めている。覚悟はすませた。後は実行だ。


「これで終いにしたいですな」スミカワ准将が寄ってきてそう告げた。


「同感だ」


 最後の演説のため壇上に登った。


「諸君。勇士の諸君。今時こんじの戦役は悪戦苦闘の戦役であった。

 だがそれも此度こたびの戦闘を優位に進める事で終わりをむかえる。なに作戦は単純だ。ありとあらゆる火力を持って敵の巣穴に放り込む。出てきた敵も同様にだ。

 その後、有志諸君が内部に進行し敵を壊滅させる。

 自分はこの作戦の成功を疑わない。全ては予定通りに進むだろう」


 五分ばかり演説をして壇上を降りた。さあ作戦開始だ。


 銃兵隊を先頭に兵団が連隊単位で移動を開始する。各種火砲は正・副・予備の三倍を持たせている。一日中撃ちまくるのでそれだけ必要なのだ。

 俺も自分の兵団と共に出撃した。反対はあったが総責任者としてこの戦を見届ける事を主張し、反対意見を封じた。

 目指すは北都より一日行軍したスペロー平野。陣を敷いて攻撃をするのは二日後となる。




 途中、小さな遭遇戦があったが特に問題なくスペロー平野に着いた。

 観測班がコレットの指し示した場所にて巣穴を発見した。その距離を元に全ての火力を指向する。時間をかけるつもりは無い。先制攻撃あるのみだ。


「攻撃を開始します。よろしいですか?」うちの主席幕僚が尋ねてきた。


「よろしい。直ぐにでも始めたまえ」俺はゴーサインを出した。


「攻撃開始! 攻撃開始!」


 臼砲が火を吹く。

 巣穴の周りが炎で耕せる。

 

 だがまだ何も変化が無い。

 次に曲射砲が前に出る。ややあって曲射砲群は配置についた。


 巣穴があった場所が盛り上がりダーサ共が姿を現した。いよいよ本番である。

 臼砲群や曲射砲群、付随する銃兵達がさらなる火力を叩きこむ。バタバタとダーサ共は倒れる。

 しかしダーサ共も勝手は許しはしなかった。味方の死骸の合間から新型種が現れた。両手が筒のような形をしている。


(ここで新型か!)

 新型種はこちらで言う銃兵だった。炸薬式は知れないが弾をはき出す。こちらの銃兵達に被害が出た。


 拙い。銃兵に対抗する手段がない。

 火力で押し切るか……。


「火力で押しつぶせ」遠眼鏡から目を話さないまま命令を下す。どの道ほかに下せる命令なんぞないのだ。


 幸いにも火力は総数でこちらが上なのだ。なら火力で押し切るまで。


 だが敵もさる事ながら、銃兵型ダーサの間から通常のダーサが飛び出して前進して来る。

 一匹二匹なら脅威ではないが百匹単位で押し出してくる。こうなれば混戦か火力で封じ込めるかのどちらかだ。だが混戦は被害が出る、ここは封じ込める方が上策だ。


「重砲を持ってくるべきだったか?」


「いえ、重砲を持ち出せば行軍速度が遅くなるだけです」


「そうだったな」


 道理だった。重砲は火力で圧倒出来るが、いかんせん重く遅い。北都奪回戦でも結局出番が無かった。当たり前である北都を穴だらけにする訳にはいかなかったからだ。まぁあってもダーサ戦は短距離戦闘がメインだから邪魔でしかないのだが……。


 しかしながら一部では混戦状態となってしまった。銃兵と共に平射砲も奮戦するが中々混戦状態は解消されないでいた。


「コレット君、敵の総数はどれくらいか分かるかね?」


「……はい、……六万を数えるそうです」コレットは半眼で俺からの質問に答えた。どうやら降霊中のようだ。そんな事よりも総数の方だ。


 六万か。まだ千も退治していない。これは長丁場になるな。


「戦務参謀、臼砲群はその位置で構わないが、他の部隊は正面を縮小させて混戦状態から回復を経ってくれ」


「了解しました」


「ドラクル、怪我人の治療を。ダーサの放った弾を調べてくれ」


「わかった」


「頼む」


 あの球は生体砲弾なのかもな……。炸薬は空気圧か? しかしアレが進化ならダーサは進化し続ける怪物だという事になるな。厄介な事だ。


 一刻(二時間)ほど経ってドラクルが戻ってきた。


「これを」と僅かにひしゃげた弾を手渡してくる。そうか、これが連中の球か、


 見た目はただの球体だ。硬さは金属に劣るがそれなりに硬い。


「私の見立てではこれは生体弾だと思う」


「たしかに金属の類ではないようだからな」


「銃兵型ダーサを観察しての事だが、連中体内で弾を生産して圧搾空気で発射しているのだと感じた」


「弾に煤が付いていないから?」


「そうだ。後、発射速度も遅い。火薬式ならもっと速い」


「揚げ足をとる訳ではないが火縄銃なら発射速度も遅いが」


「連中の腕を見たか? 火縄銃の類では無いのは確かだ」


 なるほど火縄銃アルケビュッシュの類では無いか。俺は科学には疎いから空気圧で発射する弾の威力がよくわからん。

 しかし砲身長の短さから射程範囲は短いのは分かった。今回たまたまダーサの射程範囲に入っただけだ。距離をおけば脅威度は下がるだろう。


 俺はこの戦場いくさばにて銃を手に取る立場に無いが戦場にていかに勝利させるかを決めねばならない。だが戦いの決着がどうなるか答えは見い出せなかった……。

いつも読んでいただき有難うございます。

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