半分こアイス
「暑い」
気怠そうに吐き出した言葉に、私は彼女の方を振り向いた。
生まれつきの天然パーマは切れば収集が付かないと言うことで、殆ど一定の長さで切り揃えられている。
そんな髪を一つに結い上げて揺らしながら、口元を扇子で覆う彼女は顔を歪めていた。
暑い、と言う割にはその白い肌に汗は浮かんでいない。
僅かに着崩された制服から覗く白い肌は、焼ける事なんて知らないように太陽の光を反射していた。
うーん、と唸った彼女は思い立ったように「アイス」と呟く。
彼女の顔を見れば猫と毬と花が描かれた扇子を閉じて、にっこりと私に笑みを向けた。
「アイス食べたい」
***
彼女はいつも唐突で思い立ったら直ぐに行動する。
自分の欲求を満たすために生きている、と本人が豪語するだけはあると思う。
だからこそ、今私は彼女の「アイス食べたい」発言を受けて冷房の効いたコンビニにいる。
鼻歌を歌いながらご機嫌な彼女は、ほぼ即決でアイスを選ぶ。
こういうところは潔くアッサリしている。
と言うか迷ったらま大人買いなどをし始める、ある種の馬鹿だから即決なのかもしれない。
付き添いだったはずだが、彼女のご機嫌な様子に当てられたか、暑さからか、私もアイスの袋に手を伸ばす。
彼女は会計を終えてとっとと外に出ている。
人に付き合わせておいて彼女はどこまで自由なのか。
普通なら呆れるところだが、付き合いが長いせいもあってそれが当たり前に感じると、どうでも良くなってくることもある。
それが当たり前だから不思議に思わないのだ。
だから呆れるなんてこともしない。
コンビニから出ると、彼女がその細く白い指先に力を入れてアイスの袋を、バリバリと音を立てて開けていた。
丁寧に糊付けされてくっ付いているところから、真っ直ぐに開けるところは几帳面。
買ったアイスはラクトアイス。
大した表情を浮かべずに「ラクトアイスは神だよね」なんて言う彼女。
この前は「ハーゲンダッツ神」と言っていたのは、私の気のせいじゃないはずだ。
そんな彼女を尻目に私もアイスの袋を開ける。
そこから取り出したのは氷菓。
二本の棒がついた薄い水色とも緑とも言えるそれ。
それを真っ二つに割ってから彼女に片方差し出せば、彼女の方もラクトアイスを片方差し出している。
「葡萄とかミックスジュース味とかも出てるけど、やっぱりベターにチョココーヒーがいいよね」
アイスの開け口である取っ手の部分に指を絡めて、軽く力を入れた彼女。
開いた際の反動で彼女の結い上げた髪が揺れる。
アイスを二人で買う時のお約束となったこれ。
と言うか、二人じゃなくてもアイスを買う時に自然と伸びる手。
いつだって二人で分けられるアイスを買って来た。
半分こにして食べる。
他の子達と来た時には、何も言わずにそれをやってのけた私達を、他の子達は目を丸くして見ていた。
今でもそれは変わらなくって自然と、別々の半分こ出来るアイスを買っては半分こにする。
「うん、美味しい」
満足そうに半分こされたアイスを両手に持った彼女は笑う。
この笑顔を見るためにアイスを食べているような気がしなくもない。