終わりの始まり。
『緊急速報です。先程各国の全ての駅にて、爆発事件が起こりました。この爆弾には高濃度の有毒ガスが――』
朝、俺が楽しみにしていたアニメを見るべくテレビを付けたが、アニメはなく、代わりに流れているニュース。チャンネルを回しても、どこも同じ。そして全て同じ内容だった。
――爆弾が、有毒ガスが。
現地にいる救急団員や警察はいつもと違い、誰もがガスマスクをしていた。有毒ガスの影響を受けない為だろう。
でも、そんな、まさか。
昨日まで普通に生活してたし、いつもと変わらず平和だったし。
数ヶ月前まで騒がれてた゛地球が滅びる゛なんてイカれた予言も外れたし。
なにより今日は、そう、エイプリルフールだ。
たとえ時間が午後でも、今日はエイプリルフール。
全部、全部ウソになる日だ。
だからさ、ねぇ
゛嘘でした゛って言ってくれよ
だって、そう言ってくれなきゃ信じるしかないじゃないか。
こんなの信じたく、ないのに
まだ幼い俺の脳には、その内容は突飛すぎて。
何が何だか、よく分からなかった。
ただ、1つだけ。
「――嘘じゃ、ないの?」
この出来事が、現実だってことは分かっていた。
この出来事はまるでマンガに出てくるような、現実味のない出来事だった。
マンガだったら良かったのに。
笑い飛ばすことができたのに。
ヒーローが、助けてくれるのに。
しかしあれから二年たってもヒーローなんか現れず、しかもまだ有毒ガスは無くならず、人はガスマスクの生活を余儀なくされた。
息苦しかったガスマスクも、もう慣れた。
慣れなきゃ、いけなかった。
そして今日もガスマスク生活を送っている俺、町田
彼方、17歳。
今日も叶わない夢を見続けています。