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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

好きな女の子が将軍に獲られそうだったから将軍殺っちゃった☆(能力バトル物試作)

 精神の最奥より溢れる力の奔流。

 清流にあらず、濁流にあらず、凡庸たる俺の唯一の刃。

 容易く折れ、容易く曲がる、脆弱の極致。

 受けよ我が刃金――■■



 閃くは光。通常の神経では回避することの叶わぬ刃金。灼熱。激痛。

 『侍』たる俺に痛覚遮断は不可能。致命的な隙。刀による追撃。後退。回避。失敗。

 右大腿部貫通創。胸部刀創。戦闘続行可能。刃金による追撃――なし。敵刃金による連撃は不可能と推定。

「――諦めなさい。貴方では私には勝てない」

 構えを崩さず、彼女――将軍家直轄隠密第2部隊隊長『ダークネス・クーゲルシュライバー』――が言い放つ。甲種第一等級の刃金『閃光』を持つ彼女の言は、決して侮りからくるものではない。乙種第五等級の刃金しか持たない俺と彼女では、振るえる心力の絶対量に差がありすぎる。極論、此方の見えない場所から狙撃を続けるだけで彼女は俺を完封できる。

 しかし、その手段を彼女が取ることはない。――俺に死なれては困るからだ。

 とはいえ、余裕があるわけでもない。胸からの出血は容赦なく俺の心力を削り取っていくし、大腿部の貫通創のせいで逃走すら叶わないだろう。このまま動かなければ、いずれ俺は詰むのだ。

 時間は彼女に味方する。どうせ逃げられないのだから此方を直ぐに倒す必要もない。それどころか、威力の調整の効きづらい彼女の刃金で俺を殺してしまう危険性を考えれば、待つことこそが最善手であると言えよう。

彼女はその美しい金髪を振り乱し、双眸に涙を溜めながら悲鳴を上げるように叫ぶ。

「せめて私に相談してくれれば良かった

 んです。貴方が勝手に動かなければ

 こんなことにはならなかった。何故

 うごいてしまったんですか――!」

 閃光。回避。

 『侍⇔忍者』高等技術『隠れ詠み』による無拍子での刃金の具現化。存在を知らなければ間違いなく片足を消し飛ばされていただろう。――彼女はそれができるし、やる。そういう人間だ。

 『隠れ詠み』――会話の中に起動鍵を混ぜ、敵手に悟らせることなく刃金による攻撃を行う、という一見有用そうな技術だが、大きな欠点がある。一つは、『会話の内容そのものは本心からのものでなければならない』ということ。もう一つは、可能なのは瞬時に刃金を具現化すること『だけ』であるということだ。

 刃金を使わなくても不意打ちはできるし、通常はその方が容易である。刃金を具現化できるだけで、結局振るうのは自分であるのだから。そのような理由から、『隠れ詠み』を実践で目にすることはほとんどないし、知っているものもごく少数だろう。しかし、彼女――侍⇔忍者の頂点にして『闇夜に奔る閃光』の異名を持つダークネス・クーゲルシュライバーの甲種第一等級刃金『閃光』を用いるのであれば話は別だ。何故なら『閃光』は予め指定した方向に『具現化』することで相手を焼き尽くす、本人すら握ることの出来ない非物質型の刃金であるからだ。

 真に驚くべきは寧ろもう一つの欠点――『会話の内容そのものは本心からのものでなければならない』――をクリアしたことであろう。この欠点のせいで、通常『隠れ詠み』は敵対的な発言とともにしか用いることが出来ない。それを覆したということは。つまり。

 出自の分からぬ忌子とされながらも幼くして刃金を発現させ、選択の余地もなく徴兵され軍の暗部に配属され、使い捨ての鉄砲玉も同然の扱いを受け続けながらも平然と生き残り、それどころか周囲の圧力を全て捻じ伏せて隊長職を勝ち取った『侍⇔忍者』の頂点にして『闇夜に奔る閃光』の異名を持つ将軍家直轄隠密第2部隊隊長ダークネス・クーゲルシュライバーは。

 本心から。

 自分に相談してくれれば良かった。そうすればもっと穏便に済ますことが出来た。と。涙ながらに叫んでいた――そういうことになる。

 そしてそれと同時に、自らの心象の具現たる刃金『閃光』をしっかりと狙いをつけて具現化し、俺の片足を正確に吹き飛ばそうとした――そういうことになる。

 狂っている。狂っている。狂っている――だから殺す。


 ――精神の最奥より溢れる力の奔流。


 必殺の一撃を回避され、敵手に生じる一瞬の思考の停滞。

 そのタイミングを逃さず足裏からなけなしの心力を噴出。肉薄。


 ――清流にあらず、濁流にあらず、凡庸たる俺の唯一の刃。


 我に返った敵手に俺の手から叩き落とされる量産刀。

 拾い直す隙は絶無。無手に心力、貫手にて左胸に刺打。


 ――容易く折れ、容易く曲がる、脆弱の極致。


 敵手左胸に心力集中を認識――予想的中。

 貫手を解き、そのまま胸を鷲掴み――


「っぁ――」

「……受けよ我が刃金――『数打』」


 ――一瞬の動揺を突き、『もう片方の手』を敵手の口に突っ込み、刃金の具現化を始めた。

 無論、俺程度の等級の刃金では、彼女程高位の『侍』を傷つけることは出来ない。全身の心力を活性化することでたとえ口内であろうと鈍であれば弾き返すことが出来る。

 だが――問題ない。

 所詮『弾き返す』だけだ。具現化した刃金が砕かれ、消えてなくなるわけではない。『手を噛み千切られる前に相手の口腔を刃金で満たせば』窒息は免れないのだ。如何な心力といえど精神活動の源となる酸素さえ絶てば効果は発揮されない。

 乙種第五等級刃金『数打』――『十徳ナイフの具現化』のみしか行えない、一見何の使い道もない刃金の、他の刃金との違いは。

 『具現化された刃金を破壊されても反動を受けず』――『複数同時に具現化することが可能で』――『具現化可能数の制限がない』ことである。

 手への激痛に耐えつつ刃金の具現化を続けているうちに、やがて彼女の全身から力は抜けていた。

 将軍家直轄隠密第2部隊下働きにして、ダークネス・クーゲルシュライバーの幼馴染であった俺こと山田太郎は、こうして、最愛の女性を窒息死させたのであった。

 


刃金……超能力。普通は同時具現化数は1。

甲種……非実体型

乙種……実体型

侍……刃金使える人。主に軍人を指す

侍⇔忍者……刃金使える忍者、くらいのニュアンス。


即興、執筆時間:三時間くらい

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