蝶か小鳥か
あっと思った次の瞬間、彼の顔が目の前にあった。
背中には壁、両脇には彼の腕があって、この状態ってまるで檻みたいだなとのん気にも思ってしまった。
逃げようと思えばきっと逃げられる。これは鉄で出来た檻じゃない。
でも……逃げられない……。
この視線に捕らわれて、動けない。私はこの檻から逃げることが出来ない。
「逃げたい?」
彼が私の耳許に唇を寄せて囁く。その瞬間背筋がゾクッとする。
逃げる? そんなの、不可能。この視線が、この声が、あなたを形成している総てが私を縛っている。違う。私は最初から逃げるつもりなんてないんだ。
「逃げたいなら逃げればいい。……出来るものなら、ね」
「……逃げないよ……」
出てきた言葉は掠れていて、それ以上は言えなくて私はそっと瞳を閉じた。
彼がフッと笑う気配がする。
囚われたのは、私?
捕らえたのは、彼?
きっと、どちらかなんて関係ない……。
チャレンジ一回目。