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冒険とかしてみる。  作者: 日向猫
一章 たのしい狼一家
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第5話 狼一家との日々





 俺が狼一家と暮らし始めてから早2年が過ぎた。

この2年で兄弟たちは大きくなり前の世界の大型犬ほどの大きさに成長していた。

これでもまだ幼狼扱いの兄弟たちだが、俺からすれば十分大きい。


そんな俺でも、この2年で幾ばくか大きくなった。


兄弟や母狼の暑苦しいくらいの愛情を受け、同年代の子供に比べて頭一つは大きい

のではなかろうか?


最初はおっかなびっくりだったが、母狼の言うとおりに

兄弟たちは事あるごとに、俺に構った。

じゃれたとも言うが、まぁ気にしない。


そんな感じで兄弟たちと行動し始め、朝夕問わず森を駆け巡り、時に川で泳ぎ、

時に野山を駆けた。


しかし、森での生活で、一番参ったのは食事だった。

生き物は食わねば生きて行けぬ。

だがしかし、この森に調理した食事などある訳なく、母が持ってくるのは狩ったばかりの新鮮な獲物。

兄弟達が、獲物を貪り喰らうスプラッタ現場を、真正面から見せられ気を失った事もある。

血生臭い生肉を食わせようとする母や兄弟たちと、無言の抵抗を続ける俺の孤独な戦いもあった。

なかなか食事をしない俺を前に、ある時、母が突然行動に出た。

いきなり生肉が燃えあがり、香ばしいいい匂いが洞窟に立ち込める。

どうやったのか、火は突如消え、後には程よく焼けた肉があった。

塩胡椒の調味料などなかったが、空腹には勝てず、俺はその肉に齧り付いた。

空腹という最高の調味料の為か、これまで食べたどんな肉より美味く感じた。

その後も、果物など、そのまま食べられるものを何処からか集めて来てくれて、食の不安は解消された。

ある程度なら、自分で調理できるようになった頃、新たな技能を獲得した。

むろん、獲得した技能は調理である。


月日はたち、兄弟たちは成長に伴い、大きく強大になっていく訳だが、俺はそうもいかなかった。

兄弟たちに付き合って野山を駆けても、直ぐに疲れ切ってしまう。

大きくなる兄弟たちとのじゃれ合いも、日に日に辛くなってくる。

毎日全力で対応し、時には能力も駆使して相対した。

兄弟たちが大きくなると、当然狩りの仕方を母から学ぶ訳だが、それは俺も例外ではなかった。

俺もまた、兄弟たちの様に獲物を追いかける。

しかし兄弟たちの手を借りて、獲物を追い詰めることは出来ても捕らえる事が出来なかった。

つぶらな瞳でぷるぷる震える動物を、捕まえる事など平凡な俺には到底出来ることではなかった。

そんな俺の姿を、母が難しい顔で見ていることに気付くこともなかった。

その後も、度々兄弟たちと狩りに連れ出されたが、一度として獲物を仕留める事はなかった。


そんな風に過ごし、気づくとステータスがこんな風になっていた。


森の大狼の養い子

5才 男


器用度 6

敏捷度 8

知 力 2

筋 力 9

生命力 8

精神力 1


一般レベル 3

 

冒険者技能

 なし

冒険者レベル 0

 

装備

 鎧  毛皮の服(皮)

     必要筋力0

     防御力2


技能Lv  才能限界Lv


戦闘技能Lv1(MAX4)

生活技能Lv1(MAX3)

  生存術Lv2(MAX3)

  調理Lv1(MAX2)

生産技能Lv1(MAX3)

特殊技能Lv2(MAX4)

  重力操作(グラビティアクセル)Lv2(MAX4)

  時間停止(カウントストップ)Lv2(MAX4)

  究極なる防害(アルティメットガード)の盾Lv1(MAX1)

魔法魔技能Lv0(MAX0)


たったの2年でこんな風に変わった。

単に兄弟たちと遊び続けた結果だろう。

これがこの世界的に高いのか低いのかは不明だ。

ちなみに、兄弟たちのステは見れなかった。

人間じゃないからか、そもそも他人のステは見れない仕様なのかは不明だが。

つまり比べる相手がいないのだ。

今の所、必要はないが。

そんなこんなで、森に篭って2年の歳月が過ぎた。

2年と気付いたのは、ステの年齢が5才に変わっていたからだ。

長いようで短い2年だった。


しかし、自分でも随分逞しくなったと思う。

体全体がしなやかな筋肉に覆われている。

まるで一匹の獣のようだ。


なんとも健康的な引き篭もり生活。

この深緑の森は実に平穏である。

母の話によれば、この深緑の森は、代々母の一族が守護して来たらしい。

そのため、この地に魔物が入り込むことも無く、森に住まう動物も気性の大人しいものが多い。


といっても弱肉強食は世の摂理。

それはこの森でも同じことであった。

自前の牙も毛皮もない俺は、この森では最弱に近い。

そのため、常に行動は母が兄弟たちとともにある。

しかし、それでは不味かろうと母が何処からか一本の剣を銜えて来た。


装飾も無い無骨で、実用一点張りの直剣だ。

古びているが状態は悪くなかった。


隅々まで見ているとパンパカパーンと効果音がして、ステータスウィンドウが開く。

すると、【あらたな技能を獲得しました】

と表示されていた。


獲得した技能は【鑑定Lv0(MAX3)】だった。

ステを閉じ、再び剣を眺めると、


古びた直剣(小破)

必要筋力5

攻撃力1 


と出た。


小破とあるから、どこか壊れているのか?

よく見ると刃が所々欠けていたのでこれのせいかと納得した。


俺はその日から、欠かす事無く剣の素振りを始めた。

時に兄弟たち相手に実践形式の戦闘まがいのじゃれ合いもした。

兄弟たちの毛皮は堅く、鉄の刃も通さないほど強靭だ。

正直卑怯だと思う。


害がないのでダメージが通る、時にボコボコになるまでじゃれあって母に叱られもした。




そんな日々を過ごしていて、ふと気付いた。


俺ここ数年、声を出して会話してない。




まるで、かつての居た世界の時のよう、と、思わずには居られなかった。









そんな風にして、この後の数年も兄弟たちと騒いで過ごした。




だが、世の中そんなに甘くない。

生きるのは戦争だ、とは誰の言葉だったか?


平穏な日々の中で、最初の試練は13の時に起こった。


ザーザーと長いこと降り続いた雨が、漸く上がり、久しぶりに太陽が顔を出した。

それはそんな日だった。

その日、何時にもまして森が騒がしかった。

平穏なこの森に、一匹の魔物が入り込んだのだ。

森に迷い込んだ魔物、一般的にゴブリンと呼ばれる小妖魔だった。

魔物としては最弱クラスだが、一般人にしてみれば十分な脅威となる。

しかもこの魔物は群れて行動する事が多いので、1匹みたら10匹はいると思えと教わるらしい。

そんな魔物が、この平穏な深緑の森に迷い込んだのだ。


本来ならすぐさま母や兄弟たちに狩られるのだが、今回はそうではなかった。


そのゴブリンの退治を、俺は母から命じられたのだ。


いわく


『お前ももう一人前だ、そろそろ自ら狩りを覚えてもいい頃だろう。

 丁度よく手頃な獲物が森に迷い込んだ、1つ狩ってきなさい』


だそうだ。




そうして俺は、この世界で始めての、本物の戦闘と言う命のやり取りに赴く事になったのだ。























正直、命のやり取りとかムリです。

帰っていいですか?、だめですか、そうですか。

だれか、マジで助けて………。


ぐすん。










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