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冒険とかしてみる。  作者: 日向猫
序章 ばしまりのはじまり
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第2話 神はかく語りけり




「は?」



「いや、だからね間違いだったのだよ」


確かに死んだと思ったら気付けば真っ白な空間にいた。

真っ白、というか光輝いているというか、そんな空間。

そんな空間に異物のようにポツンと俺が居た。


きょろきょろしてたらソイツが現れて言ったんだ。


「すまんすまん、君が死んだのは間違いだった」と。



「は?」とは正しく俺の正直な今の気持ちそのものだ。

恐らく今の俺を傍から見ると、口をぽかんと開けて呆けているに違いない。



「本当は君のお母さんが死ぬはずだったんだ」


「なんだと?」


そいつは白い人影で、目鼻は輪郭で何と無く解る程度だったが、間違いなく笑っていた。


「ほんとは君、ずっと引き篭もりのままのはずだったのさ」


「なんだよ、それ」


それと母の死とどう関係する。


「あの火事に最初に気付くのは君ではなくて、君のお母さんのはずだった」


もし俺があの時も引き篭もりのままだったら、確かに気付かなかったかもしれない。


「そして君のお母さんは、君を救おうとして命を懸ける」


なんだよそれ、そんな引き篭もりほっといて自分を助けろよ。


「結果、君は助かり母は死ぬ…そのはずだった」


はは、なんだ結果オーライじゃん。


「しかし、君は因果を捻じ曲げ母を救ってしまったから、さぁ大変!

 捻じ曲げられた因果は、今度は君に牙を剥いた」


ぽんと手を打つ俺。


「つまりあのタイミング良過ぎるスプレー缶の破裂はその因果のせいか」


見えない笑みをニヤリと浮かべ、白い影は告げる。


「そそ、本来存在しえない物を平行世界から引き寄せてまで君に死を与えた」


「本来死ぬはずだった母が生き、死ぬはずがなかった俺が死んだ」


ほんと困ったことになったよねぇ、などと笑いながら言うのだ。


「母は、母はもう大丈夫なのか?」


ん?と首を傾げて此方を見る白い影。


「母はもう死ぬことは無いんだよな?俺が代りになったんだから」


あははとクルクル笑いながら白い影は舞う。


「死ぬ死ぬ、死んじゃうよー」


その言葉を聞いてかぁっと頭に血が上るのを感じた。


「なんだよ!それ!俺死に損かよっ!」


ふざけんな!と言う思いが罵声のように吐き出される。


「あはは、ふざけてないさ。人は死ぬ、始まりがあれば終わりがある」


でも、寿命以外では死ぬことは無いだろうねと白い影は笑った。


がくりと力が抜けた。


「そういう事は先に言えよ、怒鳴っちまったじゃないか…お前意地悪りぃよ」


白い影はクルクル舞うのを止めるとまじまじと俺の顔を覗き込んできた。


「君、面白い子だね」


「は?」


「いやいや面白い、面白いよ!普通ならもっと騒ぎ散らすもんだ」


ふざけんなっ!なんで俺が!生き返らせて!


まるで俺の周りで誰かが騒ぐように、男や女、老人や子供の泣き声や悲鳴、絶叫に罵声。

色々な声が入り乱れて聞こえた。


「それに引き換え、君は実に冷静だね」


実に興味深いと白い影はくくっと笑った。


「だって、俺が死ななかったら母が死ぬんだろう、だったらそれでいいさ」


こんな穀潰しの為に、あの母が犠牲になるなんて耐えられるか。

その思いを込めて、今だ笑い続ける白い影を睨む。


「うん、君いいね、すごくいい、気に入ったよ」


そう言うとぽんっと音がして白い影は弾けた。


「うわっ」


いきなり弾けて光の粒子になって消えた白い影。

吃驚して思わず叫んじまった。



ごごごご……


しばらく唖然としていたら、地響きのように空間が唸りばっと光が瞬いた。


「うわっ」


余りの眩しさに眼を閉じ、顔を腕で守る。

ゆっくりと眼を開き、恐る恐る腕をどける。


そこに神がいた。




後光を背負い、白い服を着た口ひげを生やしたダンディだった。


「うむ、この姿を眼にしても眼を焼かれないか」


なに言ってんの怖っ!


「くく、欲の強い人間は、その欲ゆえに不浄としてわが身を見ると眼を失う」


顎鬚を撫でながら神は笑った。


「元々お前には救済を施すつもりであったが、少々色をつけてやろうと思ってな」


その為の確認をしたのだと神はいう。

神は語る。

因果に囚われ死んだ俺だが、元々死ぬはずではなかった。

母を救済し、俺が死ぬ事で因果の乱れは収束した。

だが、母が生き、俺が死んだことで矛盾が残った。

ソレを修正せねばならないと。


「修正は簡単だ、本来死ぬはずだったものを、お前の母からお前に書き換えればいいだけだ。

 だがお前がここにいる事が問題だ。」


「なんでだよ、俺が死ぬはずだったなら別に変じゃないだろう」


因果に囚われたものは、永劫因果に囚われるか、無に帰し消滅する。

輪廻の輪に帰ることは無い。

今は神が誤認させているが、いずれここがばれるのも時間の問題だろうという。

因果とは言わば融通の利かないスケジュール表だ。

決められた事を反れるのを酷く嫌う。

だからこそ、無いはずのものがあるのが気に食わないと。


「因果に意志はないが、いわば正確すぎる時計に似ている」


時間は巻き戻らない、進むだけ。

過去は変えられない、未来を築くだけ。


死んだ人は生き返らない。

形有るべきものは、必ず壊れる。


だから俺の存在は、因果によって否定される。


「どうしろってんだよ」


力なく項垂れて言う。

だが神はそんな俺を笑い飛ばした。


「言うたであろう、お前を救済すると」


ぱっと神を見上げる。

神は実に満足げに笑い言った。


「この世界の因果がお前を否定し、この世の輪廻がお前を弾くなら

 別の世、別の世界に行けばいい」





そんな風に、神は事もなげに言い放ったのだ。





因果とか輪廻とか正直わけわからん。

説明云々は捏造、ぶっちゃけ適当に読み飛ばしても可。

とりあえずお前異世界送るOK?

OK!

でもよし!




いやほんとすんません。

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