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冒険とかしてみる。  作者: 日向猫
二章 冒険者、はじめました
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第15話 買い物に行こう2




 店の奥に回ると、そこは開けた広い部屋になっていて、

部屋の隅には、弓様の的らしき藁束や、木製の人型が置かれていた。


人型の人形を見たとき、剣と言うものが命を奪う凶器なのだと改めて思い知る。

沸き立つ心が、一気に萎んだ気がした。


「ほれ坊主、存分に振るえ」


ドワーフ(仮)が俺に勧めてくる。

今更やっぱ止めるとは言えず、仕方なく部屋の中央で構えをとる。

もっとも剣など習った事はないから、構えも我流だが。


ドワーフ(仮)とおっさんは部屋の隅で見物態勢。

構えた赤い大剣は、驚くほど手に馴染んだ。


これまで使っていた剣は、片手でも使える剣なので、基本的に軽い。

その割りに必要筋力は高かったが。

まあ、それは置いておいて、軽い故に扱い辛い節があった。

だがこの大剣は、いい感じの重量と言えた。


自分の身長と同じか、それ以上の大きさの剣。

剣と言うより、もはや鉄の塊のようだが。

赤い剣身は、それ自体が輝いているかのように鈍く光っている。

さきほど店先で見たときより、輝きが違う気がした。


ブォォン!と大降りをひとつ。


大気を切り裂くように、周囲の風を払って轟音を立てる。

二度、三度と振るう。


いいな、これ。



重さは殆ど苦にならない。

鑑定結果など二の次に、いい剣だと感じた。

それが命を奪う物だとしても、そう思わずにはいられなかった。

手に力を込め、大上段から叩き落す。


「っ!」


床に叩きつける前に寸止めするも、その瞬間!


バァァァァァァァァァンと刀身から炎が放たれ、爆炎が石畳の床を黒く焦がした。



うそん。


恐る恐る、ドワーフ(仮)を見る。


するとドワーフ(仮)は目をまん丸に見開いていて、続いて豪快に笑った。


「がはははは!いいぞ坊主!まさかそいつを使いこなせるとはなぁ!」


とてとてと短い足で近づいてきて、俺が持つ赤い大剣を見る。


「こいつはな、元々ある冒険者の為に拵えたものだ、もっとも肝心の相手が

 受け取る前に死んじまったがな」


そう言うドワーフ(仮)の目は、寂しそうな色をしていた。


「坊主、お前こいつを買う気はないか?安くしとくぞ?」


にやりと笑って俺を見る。

金を持たない俺は、ちらりとおっさんを伺う。


「いいのか?魔法の品だろうに」


おっさんはドワーフ(仮)に声をかけながら、俺の持つ剣を見る。


「かまわん、元々材料は持ち込みだった。それに武器は使われてなんぼだろう」


並みの力じゃ持てもしねぇし、店先に転がしておくより、使える奴に使われる方が武器も喜ぶ。

そう言いながら、ドワーフ(仮)は笑って歩き出す。

店先に戻りながら、おっさんとドワーフ(仮)は交渉を始め、俺はそれに黙って見ていた。


結局、大剣は背負い紐込みで、金貨10枚という大金で購入、

それでも魔法の品の値段としては破格の安さで買い取る事になった。


ついでに防具も見繕ってもらう。

今後の体の成長も考えて、少し大きめの胸当てを購入。

胸当てを購入する際、ドワーフ(仮)が、俺の持っていた服。

深狼の服に気がつき、上手く胸当てと組み合わせて加工してくれる事となった。

思い入れもある服だけに、棄てるのは憚られる。

防具として再利用されるなら、服も本望だろう。

そう思って、扱いを任せる事にした。

しかし、不壊のアイテムをどう加工するのだろうか?

謎は尽きない。


ついでに篭手と、脛当ても一緒に購入した。

これらは魔法の品ではなかったが、おっさん曰くいい品らしいので、それなりの値段だ。

ついでとばかりに、投げナイフも数本買い与えられた。

旅の道中、魔物相手に牽制でやった石投げが、えらくお気に召したらしい。

よくわからないが、くれるという物なら、貰って置こうと頷いた。

そんな感じで買い物した訳だが、剣の値段抜きで大体、金貨1枚ほどだった。

剣がいかに高かったか、よく解かると言うものだろう。


そんな感じで、一通りの試着を済ませた俺は、防具の細かい直しをお願いし

その日は店を後にした。




後日、直された防具を受け取り、いよいよ冒険者として本格的に活動を開始する事になる。











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