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冒険とかしてみる。  作者: 日向猫
二章 冒険者、はじめました
19/26

第14話 買い物に行こう1





 翌日。

夜明け共に目覚め、今だ眠るおっさんを起こさない様に部屋から出る。

こっそり宿の庭を借りて、習慣のようになった運動で身体を解す。

軽い運動の後、起きてきたおっさんと合流して朝食を取った。


「ずいぶんと早いのだな」


目覚めたとき、俺の姿がないのに驚いたらしい。

音を立てないように、そっと出たから気付かなかったのだろう。


「習慣」


ポツリと言った俺に、「そうか」とおっさんは短く返した。


朝食をすませ、早速出かけることになった。

おっさんと連れ立って宿を出る。


まず目指すのは理髪店だ。



この世界の文明レベルは、いまいち理解できない。

中世風の町並みなのに、街中の通路は舗装されている。

街灯が立ち並び、夜には道を照らしていたのだ。

所謂、なんちゃって中世だろうか?

まぁ、魔法なんて言うトンデモ技術があるのだから、そんなもんだと納得

しておこう。

深く考えるだけ無駄な気がした。

理髪店は直ぐに見つかった。

こじんまりとした小さな店だ。

理髪店に入ると、品の良さそうな初老の男性が対応してくれた。

まるで貴族に対するような、丁寧な対応に居心地が悪い。

所詮、庶民ということか。

店内は明るい、席は1つしかなかったが何処かで見た昔の床屋を思い出す。

正面に大きな鏡があるだけのシンプルなものだった。

店主の対応になんとも、むず痒い感じを味わいながら席に着く。


店主である男性は、おっさんとなにやら言葉を交わした後、俺の髪を整えてくれた。

すでに長さを気にしなくなっていた俺だが、長すぎるのは宜しくない。


ある程度の長さまでバッサリ切ってもらって整えてもらう。

視界を遮る前髪も整えられ、随分すっきりした。


鏡に映る自分の顔を、改めてまじまじと見る。

うん実にイイ男だと自画自賛。

満足げに笑う鏡の中の俺、まるで一匹の獣の様に見えた。

これが俺の顔なんだよな、そんな風に思った。

もう12年の付き合いだというのに、未だに慣れない。

かつての平凡だった自分の顔と、余りに違うせいなのか。


まあいい、立ち上がり店主に礼を言うと、驚いたような顔をされた。

俺なにか変な事言ったか?

店主は、その後笑みを浮かべ、深々とお辞儀をすると


「またのお越しをお待ちしております」


などと言われてしまった。

なんともむず痒い店だ、これがこの世界の一般的な店なのだろうか?

居心地悪い俺はおっさんと共に、逃げるように店を出た。

店主の熱い視線を感じた気がしたのは、きっと俺の思い過ごしだろう。



「さて、髪はそれでいいとして、後は服と靴だな」


俺の頭をわしわしと撫でると、おっさんは俺の裸足の足を見ていった。

ふと、俺も足元に目をやり、そう言えばずっと素足だったと思い至った。

しかし、不思議な事に俺は裸足であった事を苦にしていなかった。


そこまで考えて、何らかの力が働いていたのかと思い至る。

まあ、深く考えても仕方ないと、おっさんと共に次の商店に向かった。




一般的な服や、靴などは雑貨屋に売られているいるらしい。

目的の店を見つけ、商品を購入する。


どんな服がいいのか良く解らない俺は、店員とおっさんに任せてされるがままだった。


雑貨屋の店主は若い女性だったが、俺の服選びにえらく乗り気で少し引いた。

2、3着服を購入し、靴も見てもらう。


店員には、底の厚い丈夫な革靴を進められた。

山歩きや、不安定な斜面にもいいと熱弁され、おっさんが確認し購入する運びになった。

合うサイズを購入し早速着用。

服も着替え、これで何処から見ても立派な庶民だ。

けして野生児には見えまい。


気を良くした俺は、おっさんに連れられて次の店へ。

装備を整えるための武具店を目指す。





ドキドキする、これまで自分で作った物しか使って来なかったのだ。

キチンと装備を整えてこそ、初めて本当の冒険者と言えるだろう。


俺はガキのように、わくわくしていた。








武具店ガイアース。

街に複数存在する武具店の中でも、上品質の商品を扱うと名高い店だ。

その分高級であるため、金のない者には敷居が高いが。

だが金さえ払えば、魔法の篭った武具も買える店であった。


もっとも、この時の俺はそんな事は知りもしなかったが。



おっさんに連れられて、なにやら高そうな店に入ったと思っただけだった。

だがそれも次の瞬間には、吹っ飛んで消えてしまった。


所狭しと戸棚に並べられた武器に防具。

そしてガラスのような、透明な容器に収められた武具の数々に、目を奪われていた。


「おぉ」


知らず声が漏れる。

武器は男のロマンです。

きっと今、俺の目は輝いている事だろう。


おっさんは店に入ると、防具棚の前に行き防具を選び始めた。


俺はというと、もの珍しさからきょろきょろと店内を見回していてた。


すると、ふと店の隅に赤い物体が目についた。

まるで引かれるように近づくと、それが赤い大剣だと気がついた。

長さにして170cmほど、俺の身の丈よりでかいかも知れない。

赤い幅広の剣身と、長めの柄をもつ。

正に鉄の塊と言っていい大剣だった。


こんなでかい武器、持てる奴いるんだろうか?


ふと、そう思うほどでかかった。

だが、他の商品に比べて、随分と扱いが悪い。

店の隅に追いやられ、埃を被っていた。


「坊主、それが気になるのか?」


いつの間にか、俺の背後に見知らぬ男が立っていた。

口ひげを生やし、筋肉質ながらずんぐりと体系で背が低い。

まさにドワーフと言っていい男だった。


「おりゃ、この店の店主だ。坊主、もう一度聞くぞ、その剣が気になるのか?」


なにやら睨みつけられている気もするが、俺は正直に頷くことにした。


「ああ」


「ふん」


鼻で笑って、じろじろと俺を見回すドワーフ(仮)。


「いいだろう、少し待て」


そう言って一度奥に引っ込むと、手に布を持って戻ってきた。

ドワーフ(仮)は剣を綺麗に手入れすると、俺に「ん」といって差し出して来た。

恐る恐る受け取る俺。


鑑定技能で剣を見る。


赤の大剣(魔法武器)耐久度4000/4000

必要筋力16(-1)

攻撃力4

クリティカル値-2

追加ダメージ+3

魔法ダメージ+1

軽量化(永続)

耐久度上昇(限定)

炎属性付与(永続)


すげえ、魔法の剣だ。

必要筋力が高いな。

確認の為ステータスを開く。

よく考えたら、ここ最近ステータスを見ていなかった。


器用度 10

敏捷度 14

知 力 3

筋 力 16

生命力 13

精神力 2


技能関係は変化なしか。

筋力も許容内、十分使える。

ゆっくり両手で持ち上げ、構えを取る。


「ほう」



ドワーフ(仮)は関心した様に声を漏らした。

なにやら嬉しそうにニヤニヤ笑うと、店の奥を示して見せた。


「折角だ、試してみるか坊主?」


剣に見惚れていた俺は、自然と頷ずいていた。


そんな俺の姿を、いつの間にか近くに居たおっさんが面白そうに見ていた。















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