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冒険とかしてみる。  作者: 日向猫
一章 たのしい狼一家
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第8話 新たな技能と不壊の剣






 『折れたか』


母の第一声はそれだった。

実にあっさりとした物言いだった。

フーン、あっそう、みたいな感じ。


母は前足で、てしてし折れた直剣を叩いたあと、口に銜えて後方にポイっと棄てた。


棄てた。


『てっ、えぇぇぇぇぇ!!』


母の後方に投げ捨てられた剣は、突如現れた黒い穴に飲まれて消えた。

なんだ、今のは?


『落ち着け、我が子よ』


慌てふためく俺に、母の窘めの声が降る。


『もともと有り合わせで作った物だ、脆く劣化も早かろうとは思うたが、

 案外に長く持ったものよ…』


唖然とする俺に、母はくくっと笑って返す。


『作った?』


そう聞こえた。

え?

母か?

剣を?


ふと脳裏に、鍛冶仕事に勤しむ母の姿を幻視し、有り得ないと頭をふった。


『うむ、我ら一族に伝わる技能のひとつでじゃ』


素材を組み合わせて、まったく新しいものを生み出す技能。

さしずめ道具作成アイテムクリエイトと言ったところか。


かつては世界中にいた技能保有者も、時と共に失われ、今では失伝技能の1つに数えられる。

そんな技能を母は持っていると言う。


『解るか?欲深きものにとっては喉から手がでるほど欲しい技能だろうな』


そういって目を細める母は、酷く恐ろしく感じた。


『お前にも伝授しよう、新たな剣は自分で作ってごらん』


しかし使い方を誤らぬことだと母は言う。

たしかに、下手に人前で仕様すれば、大変な事になりそうだと感じた。

念話による、情報伝達で技能をあっさり修得した。

パンパカパーンと効果音がして、ステータスウィンドウが開く。

【あらたな技能を獲得しました】と表示され、道具作成アイテムクリエイトLv0(MAX3)

の項目が増えていることを確認する。

兄弟たちを引き連れて、俺は洞窟の外へと飛び出した。

さっそく技能を試すためだ。



道具作成(アイテムクリエイト)の技能は、素材となるアイテムを組み合わせて

望んだものを作り出す万能技能だった。


元になるものさえあれば、なんでも作る事が出来る恐るべき技能だ。

この世界の技能はほんとどうなってんの?

と思わないでもないが…。


これはまず間違いなく、秘匿しなければならない技能だろう。

持っている事を他者に知られてはならないと、心に硬く誓った。


気を取り直して、アイテム作成に移る。


素材はなんでもいいと言ったが、それでも良い物を作ろうとなると

それ相応の素材がいる。


あとは技能Lvにも左右される。

希少な素材と、高い技能Lvがあれば、それこそとんでもないアイテムが作れるだろうが、

今の俺はLv0の技能しかないので、それは今後の楽しみに取っておこう。


とりあえず、折れた剣の代わりとなるものを作るため、兄弟たちと森を駆け回り素材収集。


集まったのは以下のもの。


鉄鉱石X5


丈夫な木の枝X10


兄弟の抜け毛X4


鑑定の結果、まともに使えそうな物がこれだけしかなかった。


鉄鉱石は兄弟たちが、岩肌を掘ってみたら出てきたものだ。

鉄の鉱脈でもあるのだろうか?


丈夫な木の枝は、この森の木の枝だ。

落ちているものを回収してきた。

肥沃な森は、その木々も太く逞しい、とても丈夫な枝だ。


兄弟たちの抜け毛は、言わずもがな。

鉄の剣さえ通さない毛は、素材として一級品ではなかろうか?


あとは技能を使うだけ。

意識を技能の使用に向ける。

すると目の前に、黒い球体が現れ一部円く口を開く。

どうもここに、素材となるものを入れる様だ。


ほいほいと素材を落とすと、黒い球体は高速で回転を始めた。

ここで作りたいアイテムを思い浮かべる。


なるべく強く強靭な剣を。


そう意識して、道具作成(アイテムクリエイト)の技能実行を意識する。


キュィィィィィィィィン


と高速で回転していた、黒い球体は、一瞬光って消えた。


すると目の前には、フワフワ浮いた一振りの剣が出現していた。


ゆっくりと確認するように握ると、ズシリとした重量を持って手に馴染んだ。

無骨な長剣だ。

実用一点張りで飾り気の無い柄、鋭い輝きを放つ黒い刃が実に美しい。

何処と無く、古びた直剣に似ているのは、同じ技能を使ったからか?

鑑定技能を起動、出来上がった長剣を鑑定してみる。


深狼の長剣(不壊)

必要筋力12

攻撃力3

クリティカル値+2

追加ダメージ+2


なんとも凄い物が出来てしまった。

しかも不壊付きとは、つまり壊れないということか?

兄弟たちの毛を入れたからか?

必要筋力は古びた直剣より高いが、俺には問題なく扱える。

重すぎず軽すぎず、よく手に馴染む一品だった。


その後調子に乗った俺は、身に着ける物も道具作成(アイテムクリエイト)で作成したのだった。




自分が作ったものが、一般的にアーティファクトと呼ばれるものになるなど考え付きもしなかった。

ただアイテム作りが楽しくて、時間も忘れて物造りに励んだのだった。





幸い、この一連の作業は誰にも見られる事はなかった。

森の動物たちと、退屈そうに大あくびをして寝そべる兄弟たちを除いて。









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