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一人百物語 2

石垣の中

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/08/08


横田さんが某観光地に遊びに行った時の事。

その観光地には城と巨石で造られた石垣があり、横田さんは行手に見える城を眺めながら、ビルの様にそびえ立つ石垣のあちこちも見物しながら歩いていた。

ところどころに立てられている、石垣の大岩はどこからどう運んだとか、この箇所の欠けた部分は数百年前の合戦の時についた傷だとかいう説明書きを眺めていてふと気づくと

石垣の一部が縦横1メートル弱ほどの、窓か覗き穴の様にポカリと小さく口を開けているところがあり、中に何故か中年男性が立っているところがあった。

男性はかなり生地が傷んだボロボロの、灰色の作業着の様な服装で、石垣の中の狭い空間に、肩から上の部分を出してただぼんやりと横田さんの方を眺めて立っていた。

あの人、何をしてるんだろう?と思い

「こんにちは。……お掃除ですか?」

と横田さんが近づいて話しかけると

「はぁ」

とその男性はぼんやりとした表情のまま返事をした。

「ここ、何かの部屋なんですか?石垣の中ですよね?」

横田さんは男性が入っている石垣の中を見回して更に質問した。

暗くてよくわからなかったが、男性が立っているあたりはどうやらがらんどうになっている様で、湿った土と黴くさいにおいがしたという。石垣の中を珍しそうに見回す横田さんに男性は

「……ええ」

と何か困った様な顔をしてうなずいた。

男性の様子に、横田さんは何か悪い事したかな、邪魔したかな、と思いながらもう一度男性がいる狭い空間を眺めて、男性に向き直ると。

男性の姿は消えていた。

いや、石垣に空いていた空間自体が無くなっていた。

目の前にあるのは、石垣の石ばかりだった。

「??」

横田さんはわけがわからず、目の前の石垣と周りを見回したが、石垣の巨石はどれもぴっちり整然と積まれており、一瞬のうちに開閉などできる様なものではなかった。


「お侍さんとかじゃなくてね。掃除のおじさんみたいな人だったよ」

と横田さんは言っていた。




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