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くも膜下出血で倒れた理容師が、復帰して小説を書き始めた話  作者: antomopapa


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第19話 これから



予約のすき間ができた。

店の中にはラジオの音だけが響いている。

しゃべり声も、ドライヤーの風もない。

いつもなら当たり前に混ざっている生活音が消えると、店は急に広く感じる。

髪の毛を掃いて、手を洗う。

指先に残る細い毛の感触が消えるまで、いつもより丁寧に。

それから僕は、職場のPCを開いた。

画面が立ち上がって、眩しい投稿画面が出る。

白い余白があって、カーソルが点滅している。

あの点滅は、急かしているようでもあり、待ってくれているようでもある。

これが、僕にはまだ少し恥ずかしい。

四十八歳で、仕事の合間に小説って。自分で言っても、どこか照れくさい。

でもそれ以上に、楽しい。基本ポジティブなのでw

昔の僕は小説が嫌いだった。

読むと後頭部がガンガンして、避けてた。

それが今は、読んで、書いてる。

人生って分からない。

四年前に死にかけた。

生き延びたのに、やりたいことをやらないのは変だと思った。

だから僕は書く。

大げさな夢じゃない。

今日の一行を増やしていくだけだ。

店の予約表には、休憩の枠も入ってる。

前みたいには回せない。

それでも、一人切ったら一時間休むところから始まって、

四人切ったら三十分休憩まで、体がついてくるようになった。

続ければ成長できる。

そう実感している。

だから毎日、前を向ける。

家に帰ると、家族の会話がある。

娘が笑って、妻が笑って、僕も笑う。

娘を抱っこしたときの、あの照れる笑顔。

やっぱり宝物だと思った。

二人が笑ってるのを見ると、帰ってきたんだと安心できる。

それが、これからの糧になる。

僕は完璧には戻ってない。

左半身はうまく動かないし、頭痛もある。

でもそれでも、僕は今ここにいる。

カーソルが点滅している。

僕は一行目に指を置く。

書く。

生きる。

どっちも、同じだ。

そしてきっとこの先も、僕は予約のすき間に、少しずつ増やしていく。

笑いながら。





最後までお読みいただき、ありがとうございました。

これからもいろいろ書いていきたいと思います

これはリアルな話だけど、他のはアホな話ばかりです。

少しでも病気で悩まれてる方の心に残れば嬉しいです。

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