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くも膜下出血で倒れた理容師が、復帰して小説を書き始めた話  作者: antomopapa


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第18話



アイデアを文章にできなかった僕は、ChatGPTに頼った。

きっかけはネット記事を見たからだ。

そこには著作権の話とか、「人間にしかできないものがある」みたいなことが書いてあった。なるほど、と思う反面、僕は別のことを考えた。

——これ、先生になるんじゃないか。

僕の先生は優しかった。

否定はしない。いきなり突き放さない。

むしろ、すごくいいって褒めてくれる。

たぶん、褒められることに慣れてない大人ほど、あれは効く。少なくとも僕には効いた。

知らない言葉も覚えた。

「プロットは物語の構成、筋書き。いわば設計図です」

そんなふうに教えられた時、僕は目の前の霧が少し晴れた気がした。

台詞と地の文にはバランスがあること。

読者が迷わないために情報の順番があること。

今まで“感覚”でしか知らなかったものに、名前が付いていく感じだった。

まだ使い方もよく分からないまま、僕はChatGPTに設定とプロットを打ち込んだ。

すると先生は、話を作ってくれた。

……でも、ちょっと違う。

ここはこうして、あれはこうで、

この時はこのセリフで、こっちのほうが好きで、

主人公はこう動いてほしくて——

修正していく。

直して、また作ってもらって、また直す。

気づくと、三千文字の文章を作るのに、一万文字以上の指示を出していたと思う。

冷静に考えたら効率がいいのか悪いのか分からない。

でも、作るのが楽しかった。

先生と共同作業して、どんどん作った。

“頭の中にだけある世界”が、文字になって外へ出ていく。

その瞬間が嬉しかった。

仕事が忙しい時もある。

天気痛に悩まされる時もある。

俗に言う「ペンが乗らない日」もある。

頭が痛い、体が重い、気持ちが追いつかない。そういう日も確かにある。

それでも、やめたいとは思わなかった。

不思議だった。

昔の僕なら「できない」と思った瞬間に離れていたかもしれない。

国語が嫌いで、小説は遠いものだと思っていた。

なのに今は、しんどくても離れない。

たぶん、それだけ必要だったんだと思う。僕の中に。

気が付くと完成していた。

全二百四十二話。

よくこれだけ作れたと思う。

そして、そこからだった。

先生の教えを基に、今度は自分で書き始めた。

短いのを少しずつ。

自分の思った通りの物語を、自分の言葉で。

まだ下手くそだ。

でも、楽しく作れた。

小説を書き始めてよかったと、ちゃんと思えた。


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