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くも膜下出血で倒れた理容師が、復帰して小説を書き始めた話  作者: antomopapa


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第12話



一人切る。

終わると足が棒みたいになる。

頭痛も強くなって、すぐには戻らない。

だから僕は決めた。

休憩を、最初から予定に入れる。

休憩って、本当は「空いたらするもの」だった。

予約が途切れたら座る。手が空いたら水を飲む。そんなふうに、仕事の隙間に滑り込ませるものだった。

でも今は違う。

空くのを待っていたら、先に僕が壊れる。

一人やったら一時間。

最初はそれが悔しかった。

昔の自分なら、もっと回せた。もっと動けた。もっと平気だった。

そう思うから。

でも、回せないのが現実だった。

なら、現実のほうを先に組み替えるしかない。

予約表に、休憩の枠を入れる。

それだけで、少し気持ちが楽になった。

「休んでもいい」じゃなくて、「休むのが仕事の一部」になる。

それは自分に許可を出すことでもあった。

休むのはサボりじゃない。

仕事を続けるための作業だ。

頭痛が引くのを待って、足の感覚が戻るのを待って、

それからまた立つ。

前みたいなスピードじゃない。

でも、前に進んでる。

僕は今の体で、今のやり方を覚えていく。

店を続けるために。

そして、家族の笑顔を守るために。


店には父もいる。

だから、はじめは九割、父が切っていた。

僕は頭を使うのがまだ楽な、顔剃り、シャンプー、セットを担当した。

切るのは頭痛の種になる。だから一割だけ。

とにかく、その一割を繰り返した。少しでも長く働けるように。少しでも、戻れるように。

父はそれを、何も言わなかった。

七十代中盤。体もきつかったと思う。

それでも父は、昔ながらの職人みたいに背中を見せていた。

言葉で励ますんじゃなくて、黙って働く姿で伝えてくる。

——もっとがんばれ。

——まだできるぞって。

その背中があるから、僕は休憩を予定に入れられた。

休むことを“戦略”にできた。

一人一時間でも、店は回る。回せる形にできる。

父が黙って支えてくれたから、僕は自分のやり方を作り直せた。


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