表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉の詩唄い  作者: 匿名記号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/15

助けた少女が二人

「おーい! お待たせ! ごめんね……まさか丸一日かかるとは……」


 木立の向こうから、息を切らしながらニクスとエリィが駆けてきた。


「この子? 昨日、私と間違えて助けた女の子って……小さな子じゃない」


 テントの影から現れた少女は、十歳くらいの年頃だった。


「ぁ……ずっと帰ってこないから、見捨てられたのかなって……」

「あゎゎ、ごめんごめん! エリィも見つかったし、とりあえず村まで行こうか!」


 ニクスは慣れた手つきで簡易テントを畳み、荷物を背負う。

 旅の手際はすっかり板についていて、ローブの裾が風に揺れた。

 そして、三人の歩みが森の道を進み出す。


「ねえ、この子……どういう経緯で助けたの?」

「えっとね、エリィを探してる時に、道端で座り込んでたの。

 住んでた村は……野盗に襲われたって。今どうなってるかもわからないみたい」

「そうだったのね……こんにちは、お嬢さん。私はエリィ・トーリナー。

 私もこの人──ニクスに助けてもらったの。あなたのお名前は?」

「…………エミ、です……」


 名を告げた少女は、ニクスの外套の影に小さく身を隠した。


「あれ、嫌われちゃったかな?

 もうすぐ私の村だから、そこまで辛抱してね。

 最近はどこも物騒で、王都の兵士さんもなかなか来られないけど……

 エミちゃんの村、どうなったかはうちの人たちにも確認してもらうから。ね?」

「……うん、ありがとう、エリィお姉ちゃん」

「わっ、ちょ、ちょっとエミ、そんなに引っ張らないで~! 荷物重いの~!」

「ふふっ、いつも飛んでんでしょ?飛んだらいいのに」

「ダメダメ、みんな歩いてるのに一人だけ飛ぶなんて!

 みんなで飛べたらいいんですけどねぇ。魔法って案外不便なんですよー。……あっ!

 見えてきたかも、エリィの村! お腹減ったー!」



──ホプル村

 穀物と酪農で栄える、丘の上の小さな村。

 昼の風が柔らかく、遠くから牛の鈴の音が聞こえる。



「エリィ!」

「パパ! ママ!! ごめんなさい……ほんとに近くの山菜採りのつもりだったの!」

「いいんだよ、エリィが無事なら」


 抱きしめ合う家族。その光景を見て、ニクスは安堵の息をつきながら木陰に荷物を下ろした。


「ふー、重かった……」

「魔女さま! なんとお礼を言っていいか……、魔女さまも帰らないので村の若い衆で捜索隊を作るところでした」

「あわわ、ほんとにすみません! 軽い気持ちで受けたのに数日帰らなくて……

 自信満々で出てった手前、戻りづらくて……へへっ」


──ぐぅ。

 ニクスのお腹が鳴る。

 エリィの母がくすりと笑った。


「初めて来た時もお腹鳴ってたわね。さ、ご飯にしましょう」

「やったー!」


 ぴょんぴょんと跳ねる魔女を見て、母は微笑みながら家へ入っていく。


 その時、エミが少し離れたところで俯いていた。

 それに気づいたエリィの父が、やさしく声をかける。


「おや、この子は? 顔色がよくないようだけど」

「あ、そうだった。この子、近くの村の子で……

 昨日、エリィと間違えて声をかけたら、違ってて。

 村は……野盗に襲われたそうなんです」

「……なんだって?!」


 父の表情が引き締まる。


「君、どこの村の子かな? 名前はわかるかい?」

「えと……川の向こうで……クラフ……」

「クラフ村か……。ずいぶん遠くから来たね。

 すぐには行けないけど、近隣の村と相談して、早めに様子を見に行こう。

 まさか子どもが渡れるほど川が干上がっていたとは……川の様子だけでもすぐに確認に行かないと」


 ニクスは出された食事をもぐもぐと頬張りながら、村の構造に興味津々で尋ねた。


「こんなに美味しいご飯が出るのに、野盗とか大丈夫なんですか?」

「この村はね、地形に守られてるんだ。

 入り口以外は崖ばかりで、登るのも難しい。

 魔物の襲撃も一方向からだけだから、他の人手を農作に回せるのさ」

「なるほど~。私の村とは全然違うなぁ……。

 そんな安全な場所があるなんて、ちょっと羨ましいです」

「ふふっ。

 この村は王都や街の“魔物避け”みたいな位置にあるからね。

 周辺に食料を分けたりして、お人好しの村なんて呼ばれることもあるのよ。

 でもね……助け合うことって、大事だと思うの」


 エリィは誇らしげに笑った。


「うん、そうだね。助け合えるのは……素敵なことだと思う

 ……あれ? エミ? いない……!」


 ニクスがあたりを見回す。

 村の外には出ていないはず。

 エリィと家族、皆で探し始める。


──二、三十分後程辺りを探し回る。


「いた! あそこ!」


 村の裏手、崖の縁。

 白い鳥たちが、ぱっと舞い上がる。


「エミ! どうしてこんなところに? 危ないよ!」

「あ……村で見た鳥がいたから、追いかけてたら……こんな場所に来ちゃってた。ごめんなさい」

「もう……よかった……。さ、帰ろ。お風呂、一緒に入ろう?

 髪、ボサボサだよ。……それとニクスもね。ずっと入ってないでしょ。ちょっと臭うよ」

「なっ!? あ、嵐のあと水浴びもできずに……その後エリィ探して……!

 よ、嫁入り前の女子にその言葉は酷いよぉ!」

「ふふっ、嫁入り前なら私もエミもですよ~?さ、早く帰ろ」


 夕暮れの風が、三人の笑い声を運ぶ。

 エリィが口ずさむ子守歌に、エミが小さく声を重ねた。


「……私も、その唄知ってる。お母さまが寝る前に、よく唄ってくれたの」


 並んで歩く小さな影が、夕陽に長く伸びていく。



──あの帰り道

 三人で唄った夕暮れは、私の宝物のひとつ


 数日後に私は村を出た

 そして、後悔する


 あと一日、滞在すればよかったと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ