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終焉の詩唄い  作者: 匿名記号


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13/15

竜住まう都レグリス

──白き渓谷の夜が明け、鉛色の雲間から朧げな太陽が都を照らす。


 氷煙が薄れ、崩れた岩の裂け目の奥に広がる光景。

 そこにあったのは、幻想に夢見るような竜の都。

 息を呑むほどの荘厳さを持つ、古代の遺跡だった。


 蒼白い陽光が差し込み、氷に閉ざされた街並みを照らす。

 石造りの回廊、傾いた塔、凍りついた噴水。

 かつての人々が営みを残したまま、時だけが止まっているようだった。


 ニクスは足を踏み入れる。

 凍てた床がかすかに軋んだ。

 足元には朽ち果てた掲示板のような物が落ちている。

 砂を払い書かれた文字を読み解くニクス。


「竜住まう都……レグ……リス……かな?

 ここがお師匠さまの地図に書かれた地か……」



──レグリス

北方の古代王国が築いたという交易都市

竜を崇めながら人々はこの地に暮らしていた

魔導技術の栄えた時代、渓谷の奥に築かれた、人の夢の都の一つ



『古代都市か……よく残っているものだな』

「氷に守られてたんでしょうね。……この寒さじゃ、何もかもがその時を止める」


 ニクスは周囲を見渡した。

 街の中央に広がる円形広場。

 中心には凍りついた巨大な水晶柱がそびえている。

 その表面には、淡く輝く魔法陣が刻まれていた。


 まるで、まだ生きているように。


『……感じるかニクス。この街まだ生きておる』

「ええ。魔力の流れが……残ってる。いや、動いてる……?」


 彼女は柱に近づき手を触れた。

 冷たさとともに、微かな脈動が伝わってくる。


──鼓動


 それはまるで、街そのものが心臓を持っているようだった。

 かすかな風が吹いた。

 雪片が舞い、空気の中に淡い光の粒が散る。


「……この街全体が動いてる……」


 ニクスの声は震えていた。

 それは恐怖ではなく、畏れ。

 そして少しの興奮だった。


 崩れた建物の壁面には文字が刻まれていた。

 古代語の断片。


“この地に──を眠らせ、後の世に託す”

“門を護る者は、永劫に目覚めることなかれ”


 その一節を読み上げた瞬間、足元がかすかに震えた。


『……今のは地鳴りか?』

「違う。……この下で……何か動いてる?」


 氷の地面の下、深く、重い何かが動く気配。

 ニクスは杖を構えた。


 風が止み、空気が凍りつく。

 街の中心、水晶柱の根元。

 そこに描かれた魔法陣がゆっくりと明滅を始めた。


 青白い光が流れ回転する。

 古代の歯車のように街全体が動き出す。


「まさか……封印装置?」


 その瞬間、轟音が響いた。

 地面が割れ、氷が弾け飛ぶ。


 そこから姿を現したのは──


 漆黒の巨体。

 全身が魔晶石で覆われた金属の巨人。

 砕けた氷をまといながら、ゆっくりと立ち上がる。


 その胸部には都市と同じ紋章が刻まれていた。


『……まさか、金属製のゴーレムとはな。魔晶石の装飾付きとは恐れ入る』


 巨人の目が開く。

 青い光がまるで心臓の鼓動のように明滅する。


 水晶柱の上の板に文字が浮かび上がる。

──《レグリス守護機兵・レムナント》


 ニクスは息を呑む。


「……あちゃー……、さっきの戦闘で目覚めちゃったかな?」


 轟くような低い咆哮が響いた。

 氷の街の空気が震え、雪片が舞い上がる。


 魔力を帯びた風が吹き荒れ、瓦礫が浮き上がる。


『ニクス、来るぞ!!』


 ニクスは杖を握り直し身構える。


 竜住まう都レグリス、その静寂が──いま、破られようとしていた。

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