第6話 戦える
ダンジョンから帰ってくると、俺は真っ先に彼に別れを告げて、円剣盾流の訓練を行った。
基本的には肉体の強化。
そして、現在おぼえている技の洗練。
簡単に言ってしまえばド根性。
とにかく頑張れば強くなるだろう。多少はね。
──……という甘い考えから来る、なかば自暴自棄になったオオアリクイのような特訓。
腕立伏せは身体が動かなくなるまで。
腹筋背筋も同様に。
脚も重点的に鍛えるようにした。
こういう簡単なトレーニングを怠るとあとでいたい目を見るようになる。
パーティから追放されてしまったりなど。
そもそも論として強くなれば強くなっただけ得をするのに、俺は何故強くなる努力を怠ったのだろう。
きっと〈獅子の綴じ爪〉に甘えたのだと思う。
やはり、俺はマヌケだった。きっと皆さんもお察しの事と思うが、俺は正真正銘のバカタレである。
やはり、パーティ追放の件は4:6で俺のほうが悪かったということになるのだろうか。
ただそうなると納得は出来ない。
俺は頭から酒をかけられ、未成年飲酒を強要された。
パワハラだってされた。俺が心に傷を負っていれば、あいつらは今頃法定でお絵かきされているだろう。
やっぱり、6:4であいつらのほうが悪い。
誰が何と言おうと、俺の中の真実はこうだから。
「体力がなくなった」
ヨボヨボになりながら銭湯に向かう。
身体を洗い、湯船に浸かる。傷が痛む。
生傷の絶えない仕事……仕事と言って良いのか。
なにはともあれ、強くなればなるほどこの痛みもなくなっていくのかもしれないと思うとこの傷も……気持ちがいいと思いますよ!?
「外がとても寒い」
身体が冷える。足早に宿に向かう。
宿についたら寝て、朝はパンをひとつ食べる。
「筋肉痛」
ギルドの前に行く。
ミード・ガンデくんがいるので合流。
そうしてふたりでダンジョンに向かう。
ダンジョンに到着したら魔物を討伐してマジックバッグに素材を詰め込んでいく。
自分でも積極的に戦いに参加。現在9階。
やはり獣人のフィジカルには勝てないが、それなりに戦えるような気がする。
〈獅子の綴じ爪〉にいた頃は参加しようとすればするほど跳ね除けられていた。
もしや連携が出来ていないのではないかと自分が戦闘に参加する場合の立ち位置の相談をしたが、「何いってんだこいつ」というような感じに聞いてもらえなかった。
俺は戦えたのだ。
人は弱いので倒せて当たり前だが、魔物と戦えるというのは発見である。これは良いことだ。
これはいい発見だ。
この階層でもある程度戦えるのであれば、希望は見える。
チマチマと上の階層で弱い魔物を討伐していた過去は胸の奥にしまっちゃって頑張らなければならない。