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美しき世界

 喰らっても喰らっても満たされたない。

 喰らえば喰らうほど腹が減っていく。

 一度味わってしまえばもう戻れない。

 何を食べても満足できず、舌はあの濃厚な血の味を求め、腹がグルグルと凶暴な唸り声をあげる。

 足りない。

 まだ、足りない。

 もっと喰らいたい。もっと殺したい。もっと汚したい…………。無垢なものを。清きものを。神聖なものを。幼きものを。気高きものを。崇拝すべきものを……。

 ……あの尊き存在、”柳隆一”を喰らいたいのだ。

 あぁ、彼はきっと俺のメッセージに気が付いてくれる。

 アナタの事が好きだと。

 ずっとアナタを見ていたのだと。

 そして……。

 アナタのハラワタを喰らいたいのだと。


 

 少女のハラワタは新鮮で、美味かった。

 男のハラワタは芳醇な香りがして味わい深かった。

 あぁ、彼のハラワタはどんな味がするだろう?

 無垢な彼を、清き彼を、神聖な彼を、幼き彼を、気高き彼を、崇拝すべき尊き存在である彼を……。

 早く……汚したい。



 今日もくたびれたスーツを着て雑多な街を歩く。

 せわしなく歩き回る人々。自分の近くに人食いがいるなんて微塵も考えてはいないのだろう。

 疲れた顔で移動するサラリーマン。ケタケタとやかましい笑い声をあげる女子高生。路上でギターをかき鳴らす若者。

 空を見上げる。

 澄んだ青空が広がっている。ギラギラと輝く太陽。生ぬるい風が通り抜ける。少し元気のなくなってきた蝉の鳴き声がかすかに聞こえてきた。

 あぁ、なんて世界は美しい。

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