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黄昏時に君を連れて  作者: 百々目鬼
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プロローグ

 初恋…。アタシの初恋は皆が言う甘酸っぱいものではなかった。

 幼い頃からアタシは人と違った。人には見えないモノ(妖怪)が見えた。友達も居なかったアタシは妖怪と友達だった。だけど妖怪を目視出来ない子供達からは異質な目で見られていた。そのせいでアタシには友達は一人も居なかった。

 そして、アタシは母にどうしてこんな能力があるのかと母に泣きついた。母は優しく頭を撫でながら「貴方を理解してくれる人が必ず現れる。貴方は特別な能力を頂いたの。人の役に立つ方法で使いなさい。」と言った。

 それ以降、アタシは自らの視える能力を人の為に使った。危険な事が起きそうな時などは率先して人助けをした。だが、視えない側からするとアタシの行動は異常なモノでやっぱり友達は出来なかった。そんなある日、アタシは運命の出会いをした。

 彼もアタシと同様の能力を持ち、アタシと違い彼は幽霊もを寄せ付けてしまう能力らしく数々の災難に巻き込まれていた。

 異質なモノが見える者同士で仲良くなるのにはそう時間は掛からなかった。そしてアタシは彼に「()()幽霊を寄せ付けないからずっと一緒に居てあげる。」と約束をした。

 自分の恋心に気付いて居ながらも思いを伝える事は絶対に出来ない。だから、せめても彼を守るという名目だとしても傍に居たかった。

 彼とそんな約束をしてから数年後、同じ高校に進学し変わらぬ毎日を過ごしていたそんなある日、校舎裏へ向かう彼を見つけ後を追ったそこに居たのはクラスの人気者の男子生徒だった。

「俺、白菊の事が好きなんだよ。付き合って欲しい。」その言葉がアタシの耳に届いた時、身体中の血の気が一気に引いた。もし、彼が告白をOKしたら…?アタシ達の関係はどうなる?

 アタシ達の関係は友達の前に『守る者』『守られる者』というのが前提にあった。でも、彼に恋人が出来てしまったらそんな関係も無くなってしまうんじゃないか。そんな恐怖が私の身体を包んでいった。

 汗ばむ手をギュッと握りしめ彼の返事を待った。そして彼は少し間を開けて口を開いた。

 

『ごめんね。私の恋愛対象は女の子なんだ。君の想いには答えられない。』


 心の中で何かが消える音がした。そりゃそうだ……()()アタシが彼の恋人になれるわけが無い。振られたのはアタシじゃないのに何故か失恋をした気分になった。


「失恋ってこんなにも胸を締め付けられるんだ…。知らなかったなぁ」


 小さく呟いてアタシはその場を後にした。それ以降、彼と共に居る事が辛くて避けるようになった。そして、運良く父の転勤もありアタシは完全に彼の前から消えた。



 だが、運命というものは数奇なもので…。


「まさか……数年経って同じ家に住んで、同じ所で働く事になるだなんて…。神様も残酷な事するわね…。」

「なにを言ってるんですか?残酷なのでは無く、運命と言ってください。」

「何が運命よ…。無理矢理アタシを引き込んだくせに…。」

「無理矢理とは人聞きの悪い…。私はずっと薫君を探していたんですよ?

 にしても()()()姿()になっているとは夢にも思ってなかったですけどね…。探すのに苦労したものです。」

「…………だって…アンタが女の子が好きって。」

「ん?何か言いましたか?」

「いいえ…。何も言ってないわよ。頭だけじゃなくて耳もおかしくなったんじゃないの?」

「ふふっ、私の耳がおかしくなっても薫君が私の耳になってくれるから大丈夫ですよ。

 ………おや、お客様が来たようですね…。仕事を始めましょうか。」


「「ようこそ、楠木探偵事務所へ。」」

 

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