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第43話 そのメイド、金貨の正体を知る。

今年もよろしくお願いいたします。

 

 ふたたび謁見の間へと帰ってきた私たちは、ゼロムス国王陛下とアモン殿下たちと一緒に私の金貨について話していた。



「ふぅむ。これは最近、わが国で出回っている偽金貨と同じものに違いないな」

「まさかアカーシャが幼い頃にコレを手にしていたとは……」


 ゼロムス陛下は指でつまんだ小さな金貨を舐めるように見ながら、顎に手を当て呟く。その隣でアモンさんが感心するように声を上げた。


 一方のジークはと言うと、難しい顔をしたまま何かを考え込んでいる。



「この国で(にせ)金を作るのは重罪なんだ。それをグリフィス侯爵家の令嬢が手にしていたとなると……これは大問題になりそうだ」

「そうなの、ジーク? でもあの頃は彼女もまだ若かったし、知らなかった可能性も……」


 私を騙し、サクラお母さんが処刑されるキッカケをつくった忌々しい存在。名はたしか、オリヴィアとか言ったっけ。

 今は聖女の再来と持てはやされているらしいけれど、実際は悪魔みたいな女だ。


 そんな彼女を庇うつもりはないけれど、まだ十歳そこそこの年齢で贋金を作っていたとは思えない。そう思ってジークの顔を見上げたのだけれども……彼は険しい表情のまま、首を横に振った。



「この贋金は共鳴金属っていう特殊な素材で作られていてね。魔法を吸収する効果があるんだ。ちょっと見ててね……父上、お借りしますね」


 ジークは陛下から金貨を受け取ると、空いている左手で小さな氷の塊を生み出した。そしてその氷を右手に持った金貨にゆっくり近づけていく。



「……氷が金貨に吸い込まれた!?」

「こんなふうに、魔法を吸収して無効化させてしまうんだ。まぁ、さすがに大きな魔法となると無理だけどね」


 ジークの説明を聞きながら食い入るように見つめながら、私は首を傾げた。


 たしかに今まで私は金貨に向けて魔法を使ったことは無かった。そもそも私の魔法はメモ魔法だから、効果に気付かなかったのは仕方がないんだけれど。


「(あれ? でもどうしてサクラお母さんはあのとき、金貨が偽物だってすぐに気が付いたんだろう? 魔法なんて使えないはずなのに……)」



「平民出身のアカーシャは知らないかもしれないが、貴族家は金の真贋に対して非常に敏感でな。贋金を所持していたり使ったりしたと社交界でバレたら大恥をかくんだ」

「アモン兄上の言う通り。魔法は貴族の特権であり、誇りでもある。だからこそ偽物に気付けないということは、自らロクに魔法も使えない間抜けだと自己紹介をしているようなものなんだ」


 なるほど。ちょこっと魔法を当てただけで偽物かどうかが分かるのに、それすら見抜けずに使っていたら確かにバカ丸出しよね。


 うんうんと納得していると、今度は陛下が口を開いた。



「それにグリフィス侯爵家というのも問題なのだ。あの家は鉱山をいくつか所有していてな。造幣を任せておったのだ。この国でもっとも金に詳しい家が、偽物に気付かぬはずがない」


 えっ、あの女の家ってそんな大物貴族だったの!?


 たしかに私が住んでいた町も、鉱夫らしき人たちが出入りしていたような……。



「で、でも……自分のところでお金を作れるのなら、わざわざ偽のお金なんて作る必要もないんじゃ……」

「いいところに目をつけたね。アカーシャの言う通りなんだ。この国の貨幣を造っている貴族がそんなことをするはずがない。誰もがそう思っていた」


 お金の価値がなくなった時、造幣を生業(なりわい)としているグリフィス家も打撃を受けてしまう。ならばなぜ……?


 その疑問には陛下が答えてくれた。



「そこで出てくるのが、この国なのだ」


 陛下の視線の先には、地図の上に広げられた大きな世界地図があった。


 そこにはいくつもの大陸や島国が描かれていて、その中にはもちろん我が国も含まれている。陛下はそのうちのひとつの場所を指差した。


 それは私たちがいるアレクサンドロス王国のすぐ西にある、広大な砂漠地帯が広がる地域だ。地図には小さな文字で『グラン共和国』と書いてある。


 私の隣で地図を見ていたアモンさんは、忌々しげな表情を浮かべながら口を開く。



「グラン共和国は昔から、俺たちの国を手に入れようと、あの手この手を使って暗躍してきたんだ。実際、これまで何人もの工作員を送り込んできた」

「だから当初の僕たちは、偽金貨の件もこのグラン共和国の工作員の仕業だと思っていたんだ。そしてこの件について調べていたのが――」

「俺たちの母上だったんだ」



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