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第25話 そのメイド、公爵家に行く。


 三件目の実務実習先。シルヴァリア公爵家に訪れる日が遂にやってきた。

 実習自体はもう一か月ほど“ステップガール”をやってきていたのだけれど、なぜかこのシルヴァリア公爵家だけはキーパー理事長に後回しにされていたのよね。



「まぁ、つまり。そうとう厳しいか、粗相をしたらマズい家ってことなのよね」


 メイド学校で支給されているメイド服に身を包み、地図を片手に王都にあるお屋敷へとやってきた。



「んー。これはちょっとだけ予想外だったかな?」


 目の前に広がるのは、こぢんまりとしたお屋敷だった。


 四方を鉄格子で囲まれていて、どこまで続いているかは分からない。だけど貰った地図を見る限り、そこまで大きな家ではなさそうだ。格子の隙間から覗ける中は木々が植えてあり、落ち着いた雰囲気となっている。


 お母さんから譲り受けた手帳にあった昔の王都の地図を見ても、かなり狭い方の敷地だというのが分かる。



「普通、公爵のお屋敷ってお城みたいな家なんじゃないのかしらね?」



 公爵家、つまり王と血のつながった人間なのだ。

 だから普通、それなりの土地を用意されるもんじゃないのかなぁ?



「うーん。あんまり欲がないのかしら。その公爵様も、結構お年を召した奥様だってことは聞いているけれど」


 実は他の実習先と違って、ここだけあまり情報がない。

 意地悪なのかなんなのか、ニヤニヤとした笑みを浮かべた理事長は()()()()()()と言っていた。



 屋敷の主はエミリー=シルヴァリア公爵。


 娘を現国王の妻として教育し、女で何年も当主を務める女傑だ。

 しかも極度の人間嫌いで、使用人らしい使用人が屋敷の中に居ないらしい。


 ちょっと酷くない?

 そんなところに新人のメイド学生を派遣させる?


 そのエミリー様もだけど、よく理事長も許可を出したわね。



「とは言ったものの。物怖じしていても仕方がないし」


 なにしろ、この実務実習をクリアしなければ単位が取れないのだ。単位が取れないということは、上のクラスに進級できないし、とうぜん卒業もできない。


 つまり私は職無し家無し金無しに舞い戻ってしまうのだ。それは困る。



 重厚な木製の彫刻がされた立派なドアだ。

 備え付けられていたドアノックをトントントンと鳴らしてみる。本来なら出迎えの使用人がいるものなのだけど、いないのでこうするしかないのだ。



「……返事がないわね」


 不在……ってことはないと思う。今日私が訪れることは事前に連絡が行っているはずだから。



「まさか、家の中で倒れているとかじゃないわよね!?」


 たしかキーパー理事長と同じ七十代とは聞いている。もしかしたら、家の中で何かが起きたのかもしれない。


 ドアを押してみると、カギはかかっていない。


 何かがあってからじゃ遅い。

 この際勝手に入ってしまうのは、緊急事態として許してもらおう。



 ――バシン!



「え!?」


 家の中に押し入った途端、自分の後頭部を何か固いものでバシっと叩かれた。



「や、やめて! 痛い痛い痛い痛い!!」


 気付けばドアの横に小さな白髪のおばあさんが杖を片手に立っていた。



「誰じゃ、強盗か!? この若い女のくせして、我が家に入り込むとはいい度胸じゃ!!」

「ちょ、ちょっと待って! 痛い! 痛いから杖で叩くのは止めてください!!」

「だったら何者じゃアンタは!!」

「ステップガールです! メイド学校の!! 今日来るはずだって、連絡がきていたはずでしょう!?」


 貴族である理事長が正式な書面として、この実習の依頼を書面として何日も前に出したはずである。



「……そ、そんなものは知らん」



 一瞬だけ「あっ」と思い出したおばあさんは、その右手に握られた杖を悪びれもなく引っ込めた。


第21話より第3章となっております!

よろしくお願い致します。


あと私の現環境がゴタついていておりまして、更新等のペースが乱れております。ご容赦くださると嬉しいです。


頑張って書いてはいます!

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