症例メモ
──南宇治上高校の敷地を上から俯瞰すると、ちょうど扇の形に見える。故に、その年度の最初に催される祭りを『開扇祭』と呼称している。開扇祭自体は3月に催されるが、それは南宇治上高校が3月20日を始業式に制定しているからだ。
南宇治上高校正門を扇の要と見立てると、レンガ造りの塀が両脇に広がり、山の一部を切り開いて作った傾斜のある中庭が両側へゆくにつれだんだんと高くなりながら背後の山と繋がっていく。
ちょうど、丘のような山の一部をスコップでひとすくい掘り、そこに校舎を建てているような形だ。
よって、正門から両側を見ると、満開の桜の木々が少しずつ伸びあがりながら今後入学を考えている中学生を迎えるように咲き誇っている形になり、この時期の南宇治上高校は区内でも有名な桜の名所となっている。
しかし、何よりこの学校について特筆すべきは、午前と夕方に少しの間桜に日が当たるのみで、あとはほとんど山の影になってしまい、校舎への日照時間が極めて短いことである。
──── そのことが、今回のケースを最悪の事態に導いた一番の要因だろう。
──症例メモより 一部抜粋──