表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/17

中央校舎:噴水広場

 雛衣たちの使っている台車は、左右両方に持ち手のついている、いわゆる折りたたみかご式の業務用のやつである。

 検索すればどのような使い方をするかすぐにわかるが、これは押して運ぼうとすると視界の前方がかごで遮られ見通しが悪くなるので、決して押して使ってはいけない。引き出しをひくような姿勢で荷台の掴みノブを持ち必ずバック歩きで輸送することになっている。

 

 雛衣は玄関前で積荷をかご台車に積んで、バリアフリーの中央校舎1階の靴箱をそのまま通過した。靴箱そばには畳んだ長机が沢山あり、入館受付用の消毒液などを詰めたダンボールが無造作に置かれている。



 すごく長い靴箱の間を抜けると、そこは、屋内吹き抜けの室内噴水広場となっている。


 噴水広場全体に、活気のある生徒の声が反響する。爽やかな水のせせらぎと室内花見の為の席作りをするああだこうだ言う学生たちの声が凛とさわやかに響いている。


 この中央校舎は特別教室がある校舎で、学級棟であるA棟B棟の間にあり、学生たちにとってメインの活動校舎なのだ。


 この校舎に入った人が1番驚くのは、校舎内にエスカレーターあることだろうか。噴水広場を挟んで左右に一対ずつエスカレーターがついている。

 で、そのエスカレーターを色んな学年の生徒がありの行列のように並んで上がったり降りたりしているのが見える。パッと見るとリゾートホテルのロビーみたいでオシャレだし、この校舎のこの広場の雰囲気が好きで入学してくる子も多いと聞く。


雛衣は大きなかご台車を引きながら遠巻きに噴水広場をながめる。と、ヘルメットをした工務店の人達が、噴水のそばででなにかしているのが目に入った。


「お、水上ステージ作ってる!」


 噴水自体はエスカレーターのある廊下の辺りから4段ほど降りた場所にある。噴水のへりはベンチのように座れるし、三段階の噴水部分はそれぞれ水を止められるので、1段目に足場を張って特設ステージにもできる。

 透明なアクリル樹脂のステージを作り、水面のキラキラした天然のライトアップをうけながらバンド演奏したりすると普段の8割増かっこよく(可愛く)見えるので、今年も水上ステージは熾烈な出番争いだったらしい。


 ちょうどいま、半円のドーナツ上のアクリル板を噴水に乗せて、ステージ調整を行っている真っ最中のようだ。


「今年も余興楽しみだなぁー!後でみんなで見に行こっと!」


 『開扇祭』での水上ステージでは、各部活の新歓が催される。雛衣は部活無所属だが、別に今から入ったって遅くはないので、新入生募集の面白そうな(かつお金のかからない)室内部や同好会を見つけたいなと思っている次第だ。


「よーし急ご!」


 雛衣はルンルン浮き足立ちつつ、校舎の突き当たりにあるエレベーターホールを目指す。

 エレベーターホールと言っても、無骨なエレベーターが両端にあるだけで、あとはここを真っ直ぐいくと体育館があるのみの、体育館へ行く渡り廊下みたいなものである。

 

 エレベーターホールに来ると、すぐそばの分厚い防火扉の向こうで運動部が新歓の前に何かやっているらしいきゅっきゅ鳴る靴音が聞こえてくる。そこにバレー部らしい膝当て付きの女の子が走ってやってきて、雛衣(と雛衣の引いている巨大な台車)をみてびっくりしたように立ち止まる。

 雛衣はその子を先に行かせてやってから、廊下を横切りエレベーターのボタンを押した。

 噴水広場からギターの音らしき音が聞こえてきて、屋内吹き抜け全体に反響して響いた。お祭り前の雰囲気が、本当に大好きだ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ