両親のダイヤモンド婚式に
うちのダンナ詩集です。死別の辛い方はお避けください。
湯上りのしっとりした髪を指で梳いてみる
思ったよりしなやかで、まだいい女なのかもと
妄想したくなる
今日は両親のダイヤモンド婚式
隣は田んぼ、向かいは中学
あの田舎家でふたりはそっと祝うらしい
薬をのみ、病院にも行き、血圧を測り
それでもふたりは一緒なんだと
うらやむ気持ちが渦巻く
ボクたちはたった18年
君が愛した長髪を弄りながら
色の抜けた髪を眺めながら
遺影に向けて顔を顰めてみる
君が笑ってくれそうだから
「長さじゃないだろ」と聞こえそうだから
「じゃあこの髪切ってもいい?」
「いや、それとこれとは話が違う」
「…………笑」
英語だったはずの君の言葉が
ボクの中では日本語でファイルされていて
声色は思い出せるのに英語にできない
君の単語ひとつずつ、全部聞き取れていたわけじゃないんだ
それに最期の3か月は
大好きな声はもう潰れていた
こんな落とし穴があるなんてね
薄れゆく、薄れゆく、薄れゆく
滑りゆく、すべりゆく
抜け落ちる生