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姉が王太子の婚約者の座を公爵令嬢から奪い取りました。結局王太子の寵愛がなくなったとき、その罪で一族連座で処刑されることになったのですが、私はまだ12、跡取りの弟はまだ5歳なのですが…。

作者: 莉那

「おねえちゃま、僕もうだめ走れない…」


「早く早く、追いつかれたら殺されるわ!」


 私はまだ5歳の弟の手を握り草原を走っていました。

 私は子爵家の次女のミレニア、王太子が差し向けた衛兵に追われています…なぜかというと。


『子爵令嬢の身分で王太子の婚約者であるカザリンを陥れ、自らが婚約者になろうとした罪許しがたい、この罪によりルードガルド・リッツモンドを処刑。一族連座で親兄弟すべてを処刑する!』


 王太子のこの一言により、私たちの家族は処刑されることになったのです。

 姉が王太子の寵愛を得たと聞いて喜んだ父でしたが…私はこうなることをある程度予測していました。

 逃げる準備はしていたのですが…。


 馬車で逃げたのがあだとなり、衛兵に馬で追いつかれ…。

 母は早く逃げてと短剣で衛兵に向かっていき…私たちを逃がしてくれたのです。


 私は弟の手を握りしめ走りました。

 走って走って…でも後ろからあっちだという衛兵の声が聞こえてきたのです。


「…見つけたぞ!」


「…おい殺す前に楽しんでも…」


「まだガキだぞ」


 私は弟を抱きしめ庇いました。おい切り捨てるぞ首だけ持っていけば証拠になると兵が言うのです。

 

「おねえちゃま、逃げて!」


 弟が私の腕から飛び出し、両手を広げ私を庇ったのです。


「うへえ、ガキを切っちまった」


「…殺せって命令だから仕方ない」


「アレク、アレク、アレク、いやああああ!」


「こっちのガキも殺さないとな」


「ああ」


 私はアレクが庇ってくれた命だから逃げ切らないとと兵たちを睨み、どうしたら逃げられるか考えます。

 まだ私は生きている!



「…フレア・ボム!」


 私の後ろから詠唱が聞こえ、兵たちの向かって火魔法が飛んでいきました。


「…おい、お前!」


「こんな小さい女の子を殺そうとしているなんてなあ」


 私より少し上といったくらいの黒髪の男の子でした。

 そして痛ましげにアレクのほうを見てまだガキじゃないかこんなちびを殺すなんて…と目を伏せました。


「…俺たちは王の!」


「アイシクル・ウィンド!」


 剣を見せびらかし口上を述べようとする兵たちをせせら笑いながら少年は見て、また魔法を唱え、今度は氷の風を展開したのです。


「おい、ちびこっちだ」


「私はミレニアです!」


「俺はルッカ」


 私は慌てて走りルッカの後ろに隠れました。5人ほどいた兵士はもうあと2人です。


「…殺されたくなければひきなよ」


「おい、お前!」


「魔法使い相手じゃ分が悪い引くぞ!」


 バカだけではなかったようです。私を襲おうとした兵士を止めた人が仲間を引き留めて逃げていきました。


「…大丈夫か?」


「…私は大丈夫、でも弟が…」


「もうこと切れてるな」


 私はアレクの体を抱きしめ泣き叫びました。だって弟だけはこの小さな弟だけは守ってあげたかったのです。

 私は泣いていても始まらないと…ルッカにお礼を言って、事情を手短に話しました。



「…は? それくらいのことで5歳のちびと12歳の女の子を殺そうとするのか? ベルモンドの王家も落ちたもんだな」


「…不敬罪にあたるので…」


「…あーもう、許せないな。お前、このチビ、いや勇者アレクに命を助けられたんだ。だからさお前は生きないとな、あと勇者にふさわしい墓を建ててやろう」


 ふわりとアレクの体を抱き上げついてこいよとルッカが歩き出します。


「…魔法使いなのあなた?」


「俺は竜人族のルッカ」


「…竜人族の里がそういえば…」


「この先にあるんだ。ベルモンドの王家とは昔盟約を結んだから…住まわせてもらっていたんだが最近は交流がなくてそんなことになってたなんて」


 ルッカが呪文を唱えると、岩の間に道みたいなものが現れました。

 その中を進んでいくと、小さな村が見えてきたのです。


「…俺は一応長の息子だ。気にせず滞在してくれ。ここにいれば追っ手にみつかることもない」


「どうしてよくしてくれるの?」


「姉の命を守って散った勇者アレクに報いるためだ。竜人族は勇者を貴ぶんだ」


 私はルッカの好意で里に滞在することになり、アレクのお墓も立ててもらいました。

 皆私の話を聞いた人は涙して、弟は勇者だとたたえてくれました。


「なあミレニア」


「ルッカ、ありがとう、みんなよくしてくれてるわ」


 長の息子であるルッカの口添えのおかげもあって、私は家事を手伝いながら魔法の基礎も習えることになったのです。

 ルッカ曰く、ベルモンドの王家も落ちたもんだってみんな言ってるぞとのこと。


「なあアレクの仇をとりたくはないか?」


「取りたいですけど…私の力では」


「親父がさ、お前は魔法の素質がある。鍛えれば偉大な魔法使いになる可能性があると聞いたんだ。時間はかかるかもしれないが…」


「ええ…何年たったとしても忘れられませんわ、仇は取りたいです」


「力を貸してやるよ」


「ありがとう」


 私はマルチウィザードの素質があったらしく、すべての魔法を扱える素養があり魔法使いの多いこの里で魔法を修行し…。




「…おーい、ミレニア」


「ルッカ、一つ目猪なら倒したわよ!」


「おおひとりでかすごいな!」


 あれから4年たち、私は16になっていました。ルッカは一つ上の17。

 実はお姉さまが殺されたのも16でした。


 私は竜人族の里にもなじんでいました。でも殺された小さな弟のことは忘れたことありません。


「城に竜人族の若者が何人も呼ばれることになって、人を出せって戦に出ろって…」


「え?」


「隣国と戦になるらしい。新しい王妃の浪費がすごくて…」


「ああ」


 王妃の浪費のせいで財政難になり、戦でなんとかしようということになったとは…。


「そろそろ見限る時がきたって言っているなみんな」


「そう…」


「俺が話し合いにくことになったんだが…お前も…」


「ええ行くわ」


 復讐の時がやってきました。皆は違う集落に移ろうと準備を始めています。

 私はルッカとともに城に乗り込むことにしたのです。


「たった二人? しかも一人は女?」


「凄腕の魔法使いです彼女は」


 衛兵の質問にルッカが答えます。私たちは王と王妃に謁見がかなうことになりました。


「…たった二人とは竜人族は私たちを馬鹿にしているのか?」


「いえ陛下、彼女は凄腕の魔法使いです。私は長の息子であり…」


「最低でも100人は出せといったはずだが」


 私はふふっと笑いました。すると何がおかしい! と王が怒鳴りつけたのです。


「…相変わらず傲慢な方ですね」


 私はこの部屋に結界をはりました。邪魔者に消えてもらうためです。


 私の呪文とともにルッカが動き衛兵たちを切り捨てました。

 きゃああと悲鳴をあげる王妃と逃げ惑う王。


「私はあなたたちに4年前姉、父と母、まだ5歳の弟を殺された子爵令嬢のミレニア・リッツモンド! その敵をとりにきたのです!」


 私は名乗りをあげて、そして王妃に向かって弟の仇! と魔法を放ちました。

 一撃で殺してなんか挙げません。苦しんであの小さな弟は死んだのですわ。


 ルッカが王を拘束しました。私は王妃を火の魔法で少しずつ焼いていきます。


「…ひ、ひいいいいいい!」


「あの子はもっと苦しんだのですわ。でも痛いともいわずに…」


 ご自慢の顔、髪、少しずつ少しずつ焼いて焼いて…じりじりという音とそして嫌な臭いがします。

 それを見て王が恐怖にひきつった顔でこちらを見ています。


「こいつはどうするミレニア?」


「…そうですわね。弟と同じ剣で殺して差し上げてください…」


「わかった」


 私は剣で少しずつ少しずつ王の体をそいでいくルッカを見ます。

 浅く切りつけると痛みが少しずつ増していくそうです。


「ねえ許してねえ!」


「…姉にも罪はあったでしょう。でも…」


 私は復讐は復讐を呼ぶ、たぶん王国から私たちは追われるとルッカに言うとわかっていると彼は薄く笑いました。


 命乞いをする相手を少しずつ傷つけるやり方はあまり好きではありません。

 でも…これくらいしか思いつかなかったのです。



「さあ旅に出よう」


「はい」

 

 城から人々を退避させ火を放ちました。

 私はルッカに寄り添い、復讐が終わりました。でも私たちも追われるでしょうねと薄く笑うと、勇者アレクが殺されたことがお前が一番傷ついたんだよな? と聞いてくるルッカ。


「そうね、あの子だけが生きがいだった…小さな私の弟…」


「アレクの分までお前は生きないとだめだ」


「ええ」


 私は彼とともに生きていきます。私はルッカの手を握りしめたのでありました。

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり族滅させなければこうなるのてす
[一言] あっさりではありますが、面白かったです。 このお話を軸に肉付けをして連載作品を一本作ろうと思えば作れそうですね。
[気になる点] 王妃の殺され方が王より酷く思えましたが、王妃の方が主人公に恨みを買うような事をしていたのでしょうか?
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