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はいくまホラー劇場

さがしもの


 さがしものはなんですか?


 それはきっとあなたが協力してくれればすぐみつかりますよ。


 ……ほら、ね?


 

 部活の帰りだった。

 通学路でもある寂れた商店街のアーケードを歩いていた時、彼女に出会った。

 遠目で見えた彼女は人通りの疎らな通路の真ん中でしゃがみこみ、両膝をついて両手を世話しなく動かしている様子から何かを探しているように見える。

 そんな彼女の横を何人かの人が通りすぎるが、誰も彼女を手伝うどころか声をかける様子もなかった。

 彼女の着ている制服が私と同じだったというのも親近感を持った要因の一つではあろう。

 私は少し小走りに彼女へと近づき声をかけた。


 「あの、探し物ですか? お手伝いしましょうか?」


 声を掛けられたことに驚いたのか、彼女は一瞬ビクッと肩を震わせた。

 俯いている彼女の黒く美しい挑発で顔が隠れて表情は見えないが、安堵の雰囲気は伝わってきた。


 「あ、あの。私、落としちゃって。アレがないと全然見えなくて。困っていたんです」

 「ありゃ、コンタクトレンズ?」

 

 今と違って当時のコンタクトレンズには使い捨てタイプなどはなく、そしてとても高価であった。

 よく漫画などの題材にもなって、友人が落としたコンタクトレンズを探そうとして踏んで割ってしまうなんてテンプレが多かった。


 「それじゃ気を付けて探さないとね。漫画見たいに手伝うって瞬間に踏んじゃったなんてオチがないように気を付けなきゃね!」


 そんな風におどけながら私もしゃがみこんだ。

 丁度彼女と真正面に向き合うような。

 

 「うふふ。結構柔らかいので、潰さないように気を付けてくださいね?」


 すこし愉快そうに笑いながら彼女は顔を上げた。

 お互いがしゃがみこんだでいたために流れた長髪で隠れていた彼女の顔を初めてみた。

 そして目線が目線があった。


 













 彼女には()()()()()()()



 そこにはただ、暗く虚ろな闇が二つ、深く深く、何処までも空いているだけだった。



 私の記憶はそこで途絶えている。



公式イベントである「冬の童話2021」のお題が「さがしもの」でした。

これを見た瞬間思い浮かんだのが本作です。

書いてみて見直して……。



うん、童話じゃねーなこれ。



ということでイベントが終了するまでお蔵入りしてましたとさ。


定番ネタですよねー!(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、なるほど、これは立派な王道ホラーですね! 童話を書くのは結構大変なので、もうこのように堂々と、イベント期間外に昇華するというのがベストですね。夏はホラー企画ありますし、時期も完璧だった…
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