9.真田(マダ)アキラと吉良(キラ) 綾人(アヤト) (登場人物挿絵あり)
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1人当たり2、3分程度の自己紹介だがこれまでに陸を含んで11名が終わった。
約1時間程が経過した。
残り4名はいずれも陸にとっては知らないメンバーばかり。
こんなにも知らない人間に代わるものなのか?という疑問が湧いて来る。
それにさっきの「ミクニココア」の言葉が気にかかる。
ここにいる俺と橘 妃音以外のメンバーにとっては皆、顔見知りなのは間違いない。
「ミコト」や「ミクニ」の事を知らない俺に対して月斗が怪訝そうな表情を浮かべたのもそのせいだ。
次に前に立ったのは制服こそ応徳学園の学生服を着てはいるがおよそ高校生とは思えない男だった。
ガタイがデカく筋肉質なのだろう、胸板の厚さで制服のボタンが今にも弾けそうだった。
身長も190センチはゆうにあるだろう。
見た目通り野太い声で
「真田 アキラ。17歳」
と言うがウソつけ!
下手をすれば堂島先生よりも年上に見えるわ!
と陸は声に出しそうになった。
続いてさっきの男とは違い小柄な男。
敢えて男子…と呼ばないのはまたもや顔が高校生ぽくない。
坊主頭に近いその頭髪と白目がやたら目立つ。
黒目が極端に小さい為、目つきが悪い印象だった。
「吉良 綾人。17歳」
見た目の雰囲気と名前が合ってないな!と陸は思った。
吉良は自己紹介を終えると橘 妃音の方に一瞬視線を向けて元に位置に戻った。
「毒島 和也16歳。応徳学園1年です。よろしくお願いします」
そう言って先程の吉良同様、橘 妃音の方へ視線を向ける。
サラサラの髪の毛とニコッと笑った表情が幼さを残していてどちらかと言うと彼の方が吉良 綾人という名に相応しそうだった。
名前取り替えてあげて!と陸は思った。
最後に残ったのが桐崎 竜二と名乗る。
長身で真田 アキラと背丈は同じくらい。
やや桐崎の方が低いくらいか…
この男も制服が顔と合っていない。
「!!!」
陸は自己紹介を終えて横を向いた桐崎に視線が固まった。
桐崎も他のメンバー同様、橘 妃音の顔を確認した後、陸の目の前を横切って元の場所へと戻り地面に腰掛けた。
名前は今、初めて聞いたが桐崎は間違いなく高校生なんかじゃない……前を通り過ぎた時に見た特徴的なワシ鼻に陸は見覚えがあった。
「全員終わったな。」
顧問の堂島はそう言うと前回同様、育ち盛りの生徒たちのために道中お腹が空くだろうと用意させたパンと飲み物、それとおにぎりなどを3人のマネージャーに配らせた。
マネージャーの3人がそれぞれパンと飲み物などを手に持って腹を空かせたメンバーに配っていく。
バサッ!!!
三国が両手いっぱいに抱えた差し入れを陸の目の前で地面にいくつか落としてしまう。
「すみません!」
ミクニはそう言って地面に落ちた差し入れを拾いあげ、手伝おうと手を伸ばした陸に小声で
「後で2人だけで話そう…陸にいちゃん…」
と耳打ちした。