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14.赤い大地、南風。


――――――――――――――――――――――――

           1

 

「車内にいる彼を埋葬してあげようと思って。」

バス運転手の三原(みはら)はそう言って地面を掘る為のスコップを取りにバスの荷物入れに向かう。

手伝います。と言って堂島(どうじま)(りく)心愛(ココア)も後について行った。


荷物入れは車体の側面にありレバーを引くと上へドアがせり上がる仕組みになっている。


ドアがゆっくりと上がりスコップを取り出そうとすると三原は大量の段ボールが荷物入れに大量に入っているのに気付いた。


「何だ?」


そう言って布テープで閉じられた段ボールの中身を確認する。

「コレは!」

堂島(どうじま)もそれに気付く。

「こんな物が用意されてるなんて……」

段ボールには水と食料が大量に詰められていた。

他のも入れると相当な数になりそうだ。

「一体いつこんな物が……」

顧問の堂島と運転手の三原がそんな会話をしていた。


「誰かが予めこうなる事を知ってた様な?…それにしてもこのタイミングでの食料と水はありがたい。」

そう言うと (りく)桐崎(きりさき)の方へ目をやり心愛(ココア)に目で合図をした。


三国(ミクニ) 心愛(ココア)(りく)の思考を読み取り無言でうなずく。


桐崎(きりさき) 竜二(りゅうじ)


自称高校2年。


しかしどう見ても顧問の堂島(どうじま)よりも年上にしか見えなかった。


彼の横顔に(りく)は見覚えがあった。

特徴的なわし鼻。


自己紹介を終え目の前を通り過ぎる際に見た横顔が印象的だった。


ミクニの魔法(アニマ)がリセットされれば次に桐崎(きりさき)の心を読む様に指示をした。


この自称高校生の正体を掴むにはまだ時間が必要な様だ。


その前にバスの車内に残されたままの第二の犠牲者である毒島(ぶすじま)を弔ってやる必要がある。


毒島(ぶすじま)の毒がどういう(たぐい)のものかわからないまま迂闊(うかつ)に身体に触れる事は避けたい。


万が一、触れる事で死に至ることも想定しなければという堂島(どうじま)の意見に従った。


とはいえそのままというわけにもいかず(りく)はある提案を堂島(どうじま)にする。


「先生!俺の魔法(アニマ)毒島(ぶすじま)の遺体を埋葬してやる事は可能だと思います。」


どうやって?という堂島(どうじま)の質問に(りく)が答える。


「なるほど!そんな事が⁈だがそうすると他のメンバーにも魔法(アニマ)の事が知られてしまうと言う事か……」


「エエ…魔法(アニマ)に関しては、全員には…前回、俺と一緒に旅をしたメンバーであれば能力の属性は把握出来てますが…例えば千里(ちさと)の千里眼や京華(きょうか)睡眠回復(アロマ)という能力は今後の旅にも役に立ちます。」


「フム…」


「あと先生の魔法(アニマ)月斗(げっと)魔法(アニマ)があれば…」


2人が会話する中、視線を感じる。

視線の先には桐崎(きりさき)がいた。


桐崎はすぐに何事も無かった様に目線を逸らした。


(りく)のトレードマークだったリーゼントは金髪に混じり黒髪が目立ちはじめている。

キチンと整えられていた髪は完全に耳を覆うほど伸びていた。


視線の先に桐崎(きりさき)の姿を捉え「特に奴には魔法(アニマ)の事を知らせたく無い…」

そう言うと(りく)は険しい表情を見せた。

――――――――――――――――――――――――

            2

スマホの時計はPM20:35分を示していた。


ハンドボール部1年、毒島(ぶすじま) 和也(かずなり)の事件が起きてから2時間以上が経過した。


食事をとるのも忘れ皆、疲れが溜まっていたところに水と食料が見つかったのは幸いだった。


メンバー全員が車外に出て一か所に集まる。

マネージャーの女子2人は心神耗弱状態(しんしんこうじゃくじょうたい)の為、三国(ミクニ) 心愛(ココア)月斗(げっと)、そして(りく)が率先して段ボールから取り出した水と食料をそれぞれに配った。


外はまっ暗で星の無い夜空の元、バスの室内灯の明かりだけが明るく辺りを照らしている。


空腹が満たされずっと泣き通しだった天道(てんどう) 京華(きょうか)も幾分落ち着きを取り戻した様だった。

 

副顧問の誘導で月斗(げっと)たちメンバーがバスのドアから目につかない場所へと移動をする。

丁度、大きな樹木の根っこ。といってもその高さは2mは雄に超えていた。

そこからはバスの中の様子も見えない。


他のメンバーの姿が見えなくなるのを確かめると、(りく)はその場から離れる様に告げ地面に片手をついて何かを叫んだ。


ドオオン!と勢いよく音を立て一瞬で地面に人が充分横になれるほどの穴が開いた。


「穴はこれくらいでいいでしょう。あとは…」

と更に(りく)は地面に今度は両手をついて何かを呟いた。

すると地面が盛り上がり土の(かたまり)が一瞬で人のカタチへと変化し2メートルくらいの大きさになった。


「おお!これが?」

土人形(ゴーレム)です。コイツで毒島(ぶすじま)を車内から連れだしましょう。」

そういって(りく)堂島(どうじま)、そして(りく)の創り出した土人形(ゴーレム)が車内へと入る。


2人は毒島(ぶすじま)のいるはずの座席へと辿り着き異変に気付き立ち止まった。


「!!!!」


「コレは?どういう事だ?」


そこにはいるはずの毒島(ぶすじま)の姿は無くバスの中は(もぬけ)(から)だった。


――――――――――――――――――――――――

            3

 間違いなく毒島(ぶすじま)は毒に侵されて絶命していた。


(りく)⁈この世界では死んだ人間が歩いたりするのか?」

「………わかりません…もしかしたらそういった魔法(アニマ)があるのかも知れませんが…俺が知る限りそんな魔法(アニマ)を使う奴は居ませんでした!(かじ)ならこの世界の魔法(アニマ)について何か知ってるかも知れない!後で聞いてみましょう!」

(りく)はそういうと座席の付近を調べた。


「先生!歩いた…としてもバスの車外に一体どうやって出るんでしょう?」

「???」

「基本、この扉って三原さんによって閉じられてましたよね?」

「ああ」

「それに扉から車外に出たら誰かの目につくはず……」

(りく)が指摘するように毒島(ぶすじま)が歩いてバスの車外に出る事は考え(にく)い。

だが誰かに連れ出されたとしても一体誰が何の為に?

自身も毒に侵される危険に晒される可能性もある。

「先生!千里(ちさと)には後で魔法(アニマ)の事を伝えようと思います。」

「??」

千里(ちさと)魔法(アニマ)なら近くの事は勿論、遠くの様子を感知する能力があります。」

千里(ちさと)…千里眼か?」

堂島(どうじま)の質問を遮る様に(りく)が叫ぶ。

「先生!外の様子が変です!」

(りく)はそういうと土人形(ゴーレム)と共に車外に出た。

扉から外へ出ると土人形(ゴーレム)は役目を解きただの土に戻す。


扉から車外に出た(りく)の後を追って堂島(どうじま)が続く。

バスの入り口と反対方向にいる他のメンバーの方へ急いだ。


一箇所に集まり休憩しているはずのメンバー達の元へ向かう。


わずかにさすバスの車内灯の灯りに映し出された影はその場に座り込むというよりも倒れこんでる様に見える。


嫌な予感がして(りく)は急いでメンバーの様子を確認する。


辺りに甘いお香の様な香りがたち込めているのに気付いた瞬間!


「先生!どうやら眠って……い…」

(りく)はそう堂島(どうじま)…に告げる間もなくその場で意識を失いたおれこんだ。


後から駆けつけた堂島(どうじま)も同様、勢い余って(りく)に覆いかぶさる様に意識を失いその場に倒れこむ。


あたりは物音一つ聞こえない。


静かに時間が流れた。


――――――――――――――――――――――――

            4

 (りく)が目を覚ましたのはそれから約2時間後だった。


スマホの画面で時間を確認する。


PM22:48分を示していた。


幾分、体がスッキリしている。


(りく)はこの突然の睡魔が天道(てんどう) 京華(きょうか)魔法(アニマ)の効果であるとすぐに見当がついた。


京華(きょうか)魔法(アニマ)の存在を認識し意識的にか無意識にかは不明だが能力が発動したのだろう。


京華(きょうか)の華の香を感じさせる癒し系の魔法(アニマ)は今後の旅に役に立つ。


(りく)にはこの京華(きょうか)魔法(アニマ)に若干の耐性があったのか他のメンバーよりも早く眠りから覚めた様だ。


周りのメンバーはまだ目覚めていない様子で怖いほどに静かだった。


眠ってる間にすでに短い夜が終わり太陽が登っていた。


微かに甘いお香の香りが辺りに残っている。


まだ京華(きょうか)魔法(アニマ)の効果が続いてるのだろう。


風が吹く。


その風に混じって(はな)(かおり)と鉄の混ざった様な匂いがする。


何だ?


太陽に照らされて周りの様子がハッキリと見渡せる様になり(りく)はその鉄の様な匂いの正体が何か理解した。


血だ。


血の匂い。


鉄分を多く含んだ匂いの正体は血の匂いだった。


陽に照らされた地面が赤く染まっている。


そして血の染み込んだ地面に横たわる人の姿が目に入る。


誰だ?


そこにいるのは?


血の染み込んだ地面にうつ伏せに身を沈めているのは?


誰だ?


着ている服装から女生徒だとわかる。


まさかミクニ?


いやミクニにしては髪の毛が長い。


後ろに一つ括りに纏められた長い髪の毛から(りく)は血の染み込んだ地面に倒れこんでいる人物が誰なのか気付いた。


応徳学園(おうとくがくえん)2年、ハンドボール部マネージャー。


(みなみ) 千里(ちさと)だ。


また風が吹く。


(みなみ) 千里(ちさと)のいる場所から(りく)のいる場所へ吹きぬけた風にのって血の匂いが鼻を刺激する。


地面が。大地が赤く染まっていた。


Re:crossWORLD 「灰色の月と赤い魔女」を読んでくださってありがとうございます。

本編は、異界探訪ユミルギガースの後日譚という位置づけでありながら全編通してゆるい感じで話が進行する「異界探訪」とは全く異なった雰囲気で物語が進んでいきます。本編と同時に「異界探訪」の方も一緒に読んでいただいてると今回の展開にはさらに驚かれたと思います。まだ読んでいただいて無い方は是非、「異界探訪ユミルギガース」「ほとんど水」「そして父になる」だけでもお読み下さい。

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