13.毒島(ぶすじま) 和也(かずなり) 16歳
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「魔法の事は皆んなには黙っていましょう。」
陸はそう言うと一つの仮定を語った。
「もし、魔法の事を知られるとヤバイ能力を持つ奴がいる…」
「???」
「毒島って……絶対、毒属性ですよね?他にも前回のメンバーと随分違うのでどういう奴らかわかりません。」
「毒…か…。」
「本人にその気が無くても毒ってのはマズイと思います。力を本人が上手くコントロール出来なければ人を傷つける可能性も高い。それに…桐崎…コイツは高校生なんかじゃない。」
「だろう…な。」
陸の言葉に堂島が答えた。
「桐崎、真田の2人に関しては新学期になって転入して来た。しかも学園長じきじきにこの合宿への参加を依頼された。あと副顧問の彼女についても素性が分からん…。」
「先生も…知らないんですか?」
「ああ…合宿参加メンバーが大幅に変更になったのはつい最近の事だ…。こうなる事がわかってたかの様に…。」
「オレも桐崎の横顔を見たとき見覚えがあるって思ったんです。」
「何?」
「アイツは多分…」
「マズイわ…」
陸の言葉を遮る様に不意に三国 心愛が言葉を発する。
「どうした?」
「魔法の事を彼らが知ってるかも知れないって事よ…」
「どういう事だ?」
「私の書いてる小説よ…アニメ化もされてる……。そこには今日から起こる事が記されてるんだもの…」
「つまり、魔法について書かれてるって事!」
「魔法に関する発動条件が書いてあるって事か?」
「え…エエ…。」
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2
三国 心愛の悪い予感が的中した。
バスの中から悲鳴が聞こえ異変に気付いた堂島達3人が駆けつける。
声の主は1年の天道 京華だった。
バスの出入口から血相を変えて降りてきた京華がバスの奥を指差す。
奥を確認するとそこには顔色が深い緑色へと変色した毒島が悶え苦しんでいた。
堂島がその場で何も出来ずに立ち尽くす生徒たちを押し除け毒島の元へと向かう。
「全員!バスから出るんだ!早く!陸!車内の窓を開けろ!」そう言って生徒達をバスから避難させ陸に指示をだす。
指示に従い窓を開けていると堂島が不用意に毒島に手を伸ばすのに気付く。
「先生!触っちゃダメだ!」陸の声も聞かず堂島が毒島の身体に触れた途端、ピリリとした痛みを感じ咄嗟に手を離した。
「痛ーーーーッ!」
「大丈夫ですか?先生!」
「ああ!俺は大した事ない……毒か?何か!何か方法は無いか⁈」
陸が駆け寄り毒島に声をかける。
「制御しろ!毒島!コレはお前の能力だ!制御しろ!」
陸が懸命に声をかけるも、毒島は白目を剥いたまま体を震わせ反応が無い。
「マズイ!制御しろ!」
反応が無いまま何度も何度も呼びかける。
陸が咄嗟に思いついたように
「先生!毒島に声をかけ続けてて下さい!」と伝えバスの外へと駆け出す。
「天道!天道京華!」
1年のマネージャー天道 京華を呼び止め
「魔法を!お前の魔法を使え!」
「魔法って何ですの?」
聞いたことの無い言葉に戸惑う。
「この世界で使える能力だ!」
「そんなの?どうやったら?」
「いいか?お前の能力は周りの人間を眠らせ治癒する能力なんだ!それを使って毒島を救ってくれ!」
「そんな事!急に言われても出来ませんわ!」
「いいから来てくれ!」そう言って強引に陸は京華の手を引きバスの車内へと乗り込む。
中では懸命に堂島が毒島に声を掛けていた。
その直後、毒島は1度大きく目を見開き激しく痙攣を引き起こした後、ピクリとも動かなくなった。
「イヤァーーーーーーッ!」
京華の悲鳴が車内に響き渡る。
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3
「救えなかった……」
堂島は目の前の動かなくなった1人の傍らで呟いた。
「…………」
気が動転している京華を心愛が車外へと連れだす。
「目の前で2人も死んだんだ…無理も無い…」
「………」
「どうした?」
「おかしい……。」
「???」
「毒島は何故毒で死んだんでしょう?」
「それは毒島が毒属性で自分の能力を抑えきれずにいたからじゃ無いのか?」
「そこなんです!先生?自然界に自分の毒で死んでしまう生き物って居ますか?」
「⁈………生物の事は余り詳しくは無いが……毒ヘビやフグなんかは体内で毒を作っているが、その毒で死ぬ事は無いという。だが毒ヘビが別の毒ヘビに噛まれた場合は死ぬ事もあるだろう……なるほど…自分の毒で死ぬとは考え難い…な…」
「やはり……月斗なんかは…前の世界での月斗は炎の能力を持っていて、自分の炎を手のひらに平気で乗っけてました。……つまり炎に耐性があって自分の炎で自分が火傷を負うような事は無かった…いくら能力が暴走したとしても自分の能力で命を落とす…なんて事……」
「………」
「それに…毒島は何故、魔法の事を?もし何らかの形で知ってたとすれば余計に自分の毒で死ぬ様な事は無いはず……」
「………わからない事だらけだな。」
陸は目の前で……たとえ毒島と面識が無かったとはいえ仮にも仲間に死人が出たにも関わらずやけに冷静で居られる自分に違和感を感じていた。
「とにかく一旦、外に出ましょう。」
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4
バスの車外では、泣き崩れる天道 京華を南 千里が抱きしめ気を落ち着かせていた。
「先生!中で毒島に一体何があったんです?」
月斗が堂島に説明を求める。
「先生!魔法の事は話さない方が……」
陸の言葉に頷き堂島が生徒たちに中で起こった事について説明をした。
だが魔法の事を伏せていた為、なかなか要点を得ない説明となってしまう。
生徒たちに動揺が広がる中、異様な程の冷静さを保っている人物が数名いたのに陸は気付く。
桐崎、真田、大和……そして副顧問の女性。
桐崎と真田の高校生らしからぬ風貌から来る冷静さには納得がいった。
大和に関しては人としての感情が伝わって来ない……どこか?そう人形の様な印象を受ける。
中でも若い女性である副顧問に至っては実に冷静に毒島の状況確認まで1人でやってのけた。
バスの車内に単独入り込んだ彼女は遺体を調べたという。
彼女の話では毒島の身体の数カ所に刃物で切られた様な外傷が見受けられたという。
そこに毒が体内に回り死に至った。
という見解を示した。
この事は生徒たちを動揺させない為にも堂島にのみ告げられたのだがその事実を堂島から伝えられた陸は一つの疑念を抱く。
刃物か何かで切られた様な痕?
陸は三国 心愛に声を掛ける。
「三国?お前の魔法はいつ俺からロックが外れるんだ?」
三国 心愛の魔法と呼ばれる能力は任意の相手の心を読む「読心術」。
ただ能力には制限があり、決めた1人の心のみ読み取る事が可能だ。
今は本庄 陸がその対象となっていた。
一定時間内…心愛は1日…といっていたが……自らがその能力を解除して別の人間の心を読む事が出来ない。
「まだあと3時間程かしら。」
「そうか…3時間か……なら次に心を読んでもらいたい人物がいる。」
と告げた。
「自称高校生のオジサンの心を読むのには気が引けるけど……わかったわ。協力してあげる。」
そう言うと心愛は陸の前を立ち去った。
あと3時間…何も起こらなければいいが…。




