お友達とお茶会【81〜82話の間】
今日はお忍び王都して以来、初めてみんなで会う事になった!
楽しみだなー、楽しみだなぁー!
でも今回はお忍びじゃなくて、ちゃんとしたお茶会。
場所はうちの屋敷でやる事になった。
ちゃんと招待状も作って送ったよ!
お菓子は全部僕のお手製で、紅茶もお菓子に合うやつを試食したリリーに選んで貰った。
…このままだと、リリー太っちゃいそうな気がする…
あんまり試食させないようにしようかな。
「ユージェリス様、オルテス公爵子息様がお見えになりました」
「ありがとう、レリック!」
ルーファス来た!
「ユージェ、お招きありがとう」
「いらっしゃい、ルーファス!待ってたよ!」
「特に手土産はいらないと招待状にはあったが、本当に良かったのか?」
「うん、大丈夫!」
なんたっていっぱい作ったからね!
そうしてルーファスの次にレオとナタリーが来てくれて、最後だったのはニコラだった。
しかも何故かロイド様も一緒に。
「いらっしゃい、ニコラ。ロイド様もこんにちは?」
「お邪魔しております、ユージェリス様。実は娘がお呼ばれしたと聞き、まぁなんと言いますか、粗相しないようにと思いまして…あぁ、私は送り届けるまでですので。この後は登城予定です」
「父さん、失礼じゃない?!あたし変な事しないし!」
「ニコラ、ここは侯爵家なんだぞ?そんな大声を出すもんじゃない」
「ぐっ…」
成る程、心配だったのね。
まぁニコラが何かしてもフォロー出来るから大丈夫なのになぁ。
僕はアイテムボックスからクッキーが入った小袋を2つ取り出してロイド様に差し出した。
「今日もお仕事お疲れ様です。良ければお1つどうぞ。もう1つは父様に渡してもらっても?」
「あぁ、これはこれは、大変恐縮です。しかしながらユージェリス様のお菓子は格別ですからね…僭越ながらいただいていきます、ありがとうございます。キチンと師長にもお渡し致します」
目をキラキラさせながら小袋を受け取るロイド様。
どうやらこの前のクッキーがハマっちゃったみたいだね。
「ユージェ、あたしのは?」
「これから出すから、好きなだけ食べなよ。余ったら持って帰ってもいいよ」
「やったぁ!」
「ニコラ!こら!」
うーん、ロイド様も大変だねぇ。
そうしてペコペコ頭を下げてから、ロイド様は仕事へと向かっていった。
「さて、みんな揃った事だし、お茶会を始めようか!レリック、ドリー、リリー、運んでー!」
僕の声に屋敷の方から3人がティーカートを押しながら登場する。
いちごのホールケーキに、チーズタルトに、クッキーに、みかんのゼリーに、小さなフルーツパフェに、ピックの刺さった小さな丸ドーナツ。
甘い物で飽きた時用に、カナッペなんかも用意した。
大きな円卓の真ん中に置かれていく料理を見て、4人が感嘆の声を上げた。
「凄い、可愛いです…!」
「何これ、見た事ないものもあるぅ!」
「これはなんだ?すっごい美味そうだな…!」
「うひゃー!美味しそーう!!」
「ふふん、僕の自信作だよ!頑張って作ったから、遠慮しないでいっぱい食べてね!」
「え?!ユージェ君が作られたんですか?!」
「うん、ルーファスとレオに約束してたからね」
「うわー、この前のお城のご飯よりもなんか豪華に見える!あたし、その白いやつ食べたい!」
「俺はこの器のがいいな」
「僕はねぇ、いちごがいいなぁー」
「ナタリーは?何にする?」
「え?あ、えっと…では、ゼリーをいただけますか…?」
「はい、どーぞ」
「ありがとうございます」
ちょうど僕の目の前にあったから、ナタリーにゼリーを渡してあげた。
他の3人はレリック達が盛り付けて渡してくれたみたい。
「さて、僕の前では1つだけご飯を食べる時のルールがあります」
「「「「ルール?」」」」
「それは、食べる時に『いただきます』、食べ終わったら『ご馳走様』を言う事!これは愛し子共通だからね!」
「領域の言葉…ってやつ?」
「そう、だからみんなで、お手手はぱっちん、ご一緒にぃー?」
「「「「いただきます!」」」」
なんか幼稚園とか保育園みたいな挨拶になっちゃったな。
特に気にしていないようで、4人はすぐさま料理に手を付けた。
そして目を見開いてから、固まる。
「…美味しい…」
「うわ、何これ、柔らか…」
「あま、うま…」
「え、今まで食べてたものなんだったの…?」
そう呟いてから、怒涛の勢いでお菓子やカナッペがなくなっていった。
あのお淑やかそうなナタリーでさえ、綺麗な所作だけどスピードが凄かった。
ちょっと呆気に取られちゃって、僕自身がショートケーキ1切れしか食べれなかったわ。
ほぼ会話もなしに殆ど食べ終わって、最後には紅茶を飲みながらクッキーを摘んでいる状態だった。
「…クッキー、さっくさくぅ…」
「あぁ、お腹が苦しいのに、止まりません…」
「やめられないとまらない…」
「手が勝手に動くな…」
「えーと、お気に召していただけた?」
「「「「勿論」」」」
「そりゃ良かった」
「ユージェ、凄いね?こんなの作れちゃうとか…スキルレベル凄そう」
「愛し子様ってレベル10以上という噂だが、本当なんだろうな…」
「知りたい気持ちもあるけど、流石に聞けないなぁ…」
「あぁ、明日からドレス入るかしら…」
「お土産も用意してるけど、やめとく?」
「欲しいですぅー!」
ナタリーが顔を覆って叫ぶ。
どれだけ気に入っちゃったの、お菓子。
でもまだ7歳なのに、体型とか気にしちゃうんだねぇ。
小さくてもレディ、流石です。
「ユージェ、ユージェ、お土産なぁに?!」
「焼き菓子詰め合わせ。マドレーヌに、クッキーに、フィナンシェに…まぁそういうのが入ったバスケット用意してるよ」
「絶対1人で食べる!!」
「ロイド様にもあげればいいのに…」
「俺も1人で食べよう」
「ジェイク様にもあげればいいのに…」
「勿論僕も1人で食べるよぉ」
「私は…1枚だけ料理長に渡してみようかしら…」
「料理長に?」
「…レベルの差を知っていただくために」
「何それ怖い」
「冗談ですわ。でも最近スランプ気味だそうで、伸び悩んでるみたいなんですの。だから何かきっかけになればいいかと」
「あー、成る程、そういう事か。ナタリー優しいねぇ」
「で、でも美味しすぎますから、気付いたら1人で食べてしまうかもしれないです!」
「あはは、まぁそれでもいいんじゃない?」
「でもまぁ、万が一分けてあげるなら、人は選んだ方が良さそうだな」
ルーファスがクッキーを摘みながらポツリと呟く。
ん?どういう意味?
「俺が父上に分けるのは問題ないだろう。後はニコラが第3師団長に渡す事も。なんならさっきもユージェ本人から貰ってたしな。ただ、それ以外は気をつけないと」
「あー、愛し子様と親しいんだよって嘘付く感じかぁ、あり得るー」
「…え?そんなに?」
「そうですね、これは領域の料理ですし、おいそれと人に渡していいものではありませんね…」
「そっかぁ、じゃあ領地の友達とみんなで食べるのはやめようかなぁ」
「え?あげる気あったのぉ?」
「あ、あったよ!独り占めなんて…多分、しない…もん」
「説得力ないな、さっきも1人で食べるって言ってたし」
「ルーファス!」
「じゃあニコラ、うちの料理長に作って貰おうか?それならいいでしょ?」
「え?!いいの?!」
「お友達と食べたいんでしょ?」
「わーい!ありがと、ユージェ!」
「いいのか?アイゼンファルド家の料理長と言えば、高位レベル者だろう?」
「ユージェリス様、少しよろしいでしょうか?」
僕達の会話に、突然控えていたドリーが声を発した。
こういう場にセイルって出てこないんだよね、苦手だって言って。
だから見た目も優しそうなドリーが手伝ってくれたんだけども。
「どうしたの?ドリー」
「セイルさんには及びませんが、実は僕も昨日ユージェリス様のクッキーを味見した後に焼いたんです。よろしければそちらをお持ち帰り下さい」
「え?い、いいんですか?」
「はい。是非今度感想を聞かせていただければと思いますので」
「やったぁ!ありがとうございます!お兄さん、優しくて素敵ぃ!」
そうそう、ドリーは優しいんだよ!
リリー、ちゃんと聞いてた?
「ドリーさん…」
「は、はい!なんでしょうかリリーさん!」
「私の分は…?」
「勿論あります!」
真っ赤なドリーと、そんなドリーの言葉にパァッと明るく笑うリリー。
…うーん、リリーにとっては、
僕のお菓子 > ドリーのお菓子 > ドリー
…って感じかな…
頑張れ、ドリー!