漂うだけ。
流されたから諦めて、忘れられた人生を覗きみた。
そこはきっと、深い深い。
重力は消えて懺悔だけ残して、漂うだけ。
省略された息づかい、わたしだけに響いてる。
怯える荒波、恐い凪、わたしだけを漂わせる。
言葉になれなかったメッセージを入れた難破船。
言葉にできなかったメッセージを運ぶ幽霊船。
なんの意味もなく遠退いたのは、わたしから。
なんの手立てもなく離されたのは、わたしから。
強情な荒波、しらけた凪、わたしは温もりに届かない足と手を差し出して漂うだけ。
わがままな突風、すました微風、飛ばされたのはいつもの嵐。
繋がる記憶、導かれる命、もがれたのはいつかの嵐。
破れた手紙、焼かれた沈黙、千切れた葉を見失う。
ゆらゆら揺れて、千切れた葉は流れるだけ。
押し返されて引き戻されて、どこに行くのか辿るのか。
ゆらゆら揺らされ、うたた寝した貝殻は転がった。
弾かれて唆されて、どこを巡るか辿るのか。
見棄てられた入江がいくつも見える。
忘れられた砂浜がいくつも見える。
まだ誰にも気づかれていない風景を独り占め。
うたた寝が似合う綺麗な貝殻の横を抜き足で
熟睡が似合う艶やかな石の傍を差し足で。
びしょ濡れの千切れた葉を見つけるのは、小さな子?
瀕死の千切れた葉を拾い上げるのは、優しい人?
失われたメッセージを読み上げるのは、気高い人?
誰にも気づかれていない虚しい雫を拭うのは、あなた?
誰にも知られない輪廻を潜り抜けるのは、いつ?
ひどく疲れたみたい。
弛んだ疲労に身を任せ、満ち潮と引き潮の間をたゆたう記憶。
強欲な荒波、残酷な凪、誰に見せられるの、たゆたう記憶。
千切れた葉は、独りよがりな漂流に身を任す。